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ミツメ interview part.2
音と言葉に隠された情感、
その後ろにひっそりと隠れる人
by SOICHIRO TANAKA October 21, 2013
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ミツメ interview part.2<br />
音と言葉に隠された情感、<br />
その後ろにひっそりと隠れる人

ミツメ・インタヴューの完結編をお届けしよう。前回のpart1がサウンド編だったとすれば、今回のpart2はリリック&アティチュード編。彼らミツメがどんなリリックをどんな風に鳴らし、何故、そんなサウンドやリリック、手法を選び取ったのか。

さて、後編です。彼らミツメは、今年2013年7月に4曲入りのシングル「うつろ」をリリース。現時点ではこのシングルが彼らの最新作だ。表題曲“うつろ”は、ノーザン・ソウル風のキュートなギター・リフに、裏拍から始まる以外はほぼユニゾンのベース・ライン、そこにもう一本のワウを効かせた50年代ポップス風のこれまた呑気そうなギター・リフを加えることで、さりげないダンス・フィールを感じさせる、bpm120弱の陽気なビーチ・ポップ。ヴァースの繰り返しの後、いきなりコードは平行調に移動し、だが、敢えて同じメロディを繰り返す――この展開に思わずはっとさせられる。また、4分18秒の尺の中でヴォーカル・メロディが出てくるのは前半半分のみ。コード進行自体は50~60年代のリズム&ブルーズを彷彿させる、とてもオーソドックスな作りながら、ところどころ粋な仕掛けが施されている。後半に入ってくるドゥ・ワップ風コーラスも楽しい。

リリックの内容は、“うつろ”というタイトルが示す通り、決して消えることのない空しさ、ちょっとした虚無感がモチーフ。だが、前述のように、サウンドはあくまで陽気に呑気にユーモラス。いまだ10代の頃の七尾旅人の名コピーを借りれば、「虚無~ん」って感じ。結果として、「うつろ」という言葉の向こう側にある抑えた情感が、むしろしっかりと、だが、静かに際立つ仕上がりになっている。しかも、関山雄太のディレクションによるヴィデオ・クリップでは、そうした感情的な揺らぎをさらに曖昧にするためにか、ご丁寧にも、メンバー4人のユーモラスな学芸会ダンスまで収められているという手の込みよう。どこか飄々として見えるこのバンドが、実のところ、自らの表現の感情的な着地点に対して、とても慎重かつ、自覚的、しかも、ちょっとしたユーモアを忘れていないのがよくわかる。とても親しみやすく、だが、さりげなく手の込んだ、少しばかり風変わりなポップ。ある意味、ミツメのミツメたる所以を凝縮したトラックだと言えるだろう。

●じゃあ、「うつろ」を4曲入りのシングルとして出そうっていうアイディアはどういう部分だったんでしょう?

川辺「まずシングルを出したいって気持ちはあって。で、『出すなら次は12インチ・レコードで』って」

須田「回転数45で。で、『どういうのがいいか?』みたいな」

大竹「でも、A面予定じゃなかったんだよね、“うつろ”は」

川辺「本当はB面にしようっていう。でも、それまでアンサンブルの中で楽器というか、何かひとつの要素が抜けたら成り立たない曲って、自分達的には今までできてなかったと思ってたんです。でも、そういうのを『mitsume』とは違うやり方で、『eye』を通過したからできた組み立て方? をやることが出来て、『じゃあ、やろうか』っていう感じで、そのままシングルになったっていう」

●なるほど。

川辺「“うつろ”って、僕、初めて鍵盤で曲作ってって、後からギターのアレンジを乗っけたんですけど、なんかそのギターで作った時とは違った感じでバンドの演奏も乗っかってきて。『ああ、これ、これまではできなかったことだな』と思ったりとかして、一人で感動したんですけど」

●なるほどなるほど。でもって、『eye』でいろんな実験にトライした後だから、ちょっと引き戻して、キチッとした構成でやっても、もう以前みたいにはならないっていう。

川辺「ああ、それはありました」

●ミツメの音楽の特徴として、先ほど話してもらった「極端な抑揚は避けよう」というアティチュード、態度とは別に、「エモーショナルになり過ぎるのは避けよう。感傷的なフィーリングを歌ってたとしても、シリアスになるのは避けよう」っていう気分があるような気がします。それって、どのくらい意識的なんでしょうか?

大竹「“うつろ”に関しては、わりと自覚的にやったような気がします。デモを聞いたときはキーボードの弾き語りで、すごくポップで、歌詞も言いたいことが伝わってくる感じだったんですね。ただ、その意味が演奏にも乗っていくのだとつまらないし」

川辺「確かに歌詞に対して、だいぶ間抜けなアレンジではある」

●確かに。

大竹「だから、何となくイメージしてたのは、東南アジアのどこかの場末のバーで、このポップな曲を歌詞の意味を何も知らずにカヴァーして、楽しそうに演奏している人達っていう(笑)。そういうイメージがちょっとあって(笑)」

ナカヤーン「暗い曲だと、出来るだけ明るい歌詞をつけて、明るい曲だと気だるい感じにして、とか。そういうのは話してたりして」

川辺「そういう方がバランスが取れていいのかもね」

大竹「その方が自然だとは思いますね。例えば、こう思ってても、どこかで『いや、違うよな』って思ってるのが普通だと思うんで」

川辺「確かに(笑)」

ミツメ / うつろ

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●じゃあ、こういう考え方って4人の中にあると思いますか? すごくエモーショナルな気分で歌っている曲をエモーショナルに演奏するのは恥ずかしい、もしくは、間違っている、聴いていられない――そういうところは、4人の中にあると思います?

須田「そうですね、はい」

ナカヤーン「ちょっとダサい」

大竹「聴くのはいいんだけど、やるのだと恥ずかしい(笑)」

須田「実際、演奏する時に、いつでもそういう気持ちなんてありえないわけだから(笑)」

川辺「僕の歌詞とかって、『だから、何?』っていう感じがやっぱ多いと思うんですね。なんか『気持ちを伝えたい!』みたいなのは少ないのかもしれない。歌詞を聴き終わって、『だから、何?』みたいな。でも、『ま、いっか』みたいな」

●(笑)でも、川辺くんの中では、取るに足らないことかもけども、決して不必要なことではない、意味のあることを歌っているっていう感じはあるでしょ?

川辺「あります。勿論。ただの言葉遊びだけだとは思ってない」

●じゃあ、もし例えば、5歳くらいの子供が、「ミツメって、何を歌ってるんですか?」って訊いてきたとします。俺みたいな擦れた大人じゃなくてね。そしたら、取りあえず何と答えます?

川辺「うーん……。寂しさ?(笑)」

全員「(笑)」

川辺「いや、なんか『大人にしかわからない、なんか寂しいなみたいな感じ』って答えます(笑)。『大人って寂しいんだよ。寂しいなって思うことがあるんだよね』みたいな」

●ミツメの場合、何か猛烈にドラマティックなことがあって、そこに対する傷やトラウマから生まれたというよりは、とても些細で、日常的なことなんだけども、ずっと半年、一年わだかまりが残っているようなこととか、そんなに大きなことじゃないかもしれないけど、心の中にスポッと穴が開いちゃったような感覚みたいなものを常に追いかけてるんじゃないか? っていう印象はあります。

川辺「ああ、それはあるかもしれないです。今、振り返って思うのは、『eye』が出た時も震災があったじゃないですか? でも、大きな意味での、震災があったからどうだ、みたいな感じはしないって風に思ってたんだけど、『やっぱりちょっと気分が滅入っていたのかな』って感じるところはあるし。だから、自分が思っていることは素直に書いているんだと思うんですよ。でも結果、それが人を『ウオー!!』って突き動かすものじゃないっていうか(笑)。それを求めてもあんまりいないというか」

●じゃあ、ミツメの音楽というのは、聴いてる人達から、どういうリアクションを期待しているんだと思いますか?

川辺「車で流してるよとか言われると嬉しんですけどね。『一人でいる時に、何か適当にかける』みたいな感じで聴いて、『そう言えば、なんか歌詞寂しい感じだね』みたいな(笑)。それくらいの、近い感じじゃなくていい、というか。『取りあえず車の中に入れとくか』、みたいな感じだったら、嬉しいな、とは思ってますけど」

●距離感は欲しいんだ?

川辺「ちょっとした距離感は、僕は欲しいです」

●音楽の中に入り込まれると、ちょっとヤだってことだね?

川辺「まさに(笑)」

●ミツメのオフィシャルのツイッターあるじゃないですか? あれの語尾がいつも「○○○ようです」「○○○とのことです」っていう、まるで他人事のような言い回しになってる。これっていうのも、今話してもらったようなことと、ちょっと関係するんでしょうか?

川辺「どうなんだろうね。なんかこう、『来てくれー!』っていう感じはあんまりない」

須田「だから、『そういうのはどうなんだろうな?』っていう疑問が少し自分達の中であったっていう」

川辺「出来るだけ押しつけじゃない方向に持っていこうっていう気持ちはあるので。まあ、それって、バンド活動している時点で矛盾なんだけど(笑)」

大竹「でも、結構ツイッターは、後付けとしてみると、音楽と関係しているんじゃないかと。『歌詞を読んで、自分のことのように感じて、それで癒された』とかいうのよりは、さっき言ったみたいな、言葉の意味も知らずにカヴァーするようなポップ・ソング的な存在でいたいって気持ちもどっかにあるのかもしれないけど」

須田「自分達でも、来てくれ! とか、聴いてくれ! っていう音楽を聴いてたわけじゃなく、自分達がいいなって思う音楽を見つけてくる楽しさとか、そういう楽しみ方をしてたから」

●じゃあ、今話してもらったような、自分達と近いと思えるアティテュードを持ったアーティストっていますか?

ナカヤーン「坂本慎太郎さんのインタヴューとか読んでると、あの人、僧侶みたいなこと言っていて、かっこいいなと思います」

川辺「なんか、自分達が積極的に知ろうとしないバンドって、情報が入ってこないじゃないですか? 『それくらいの感じがいいな』って思っていると言えば言えなくもないっていうか。名前くらいしか知らないくらいのバンドで、音楽だけしか知らないだったりとか」

大竹「自分達がそういう距離感で聴いてたからこそ、そうなっているのかもしれないですね。古いレコードに対する距離感みたいな。特別すごいお気に入りのバンドっていうよりは、『あれいいんだけど、名前思い出せねえな』みたいな(笑)。そういう存在かな」

●すごく乱暴に言うと、今、売れてる音楽の大半は、キャラクター売りですよね、バンドも。音楽はそれぞれのキャラクターを補完してあげるもので、むしろ二の次。演者がどういう人なのか、それを説明するためのもので、それに共感するか、共感しないか。気がつくと、そんな風に反転しちゃってる部分もなくはない。そういうような状況に対して、「いや、そういうの、俺たちは関係ないや」っていう意識も関わってるんじゃないかっていう気もする。

川辺「やっぱりキャラ売りはしたくないな、とは思いますね。4人の内、誰かがすごいタレント性があるような感じよりかは、全員が音楽からは一歩引いて、後ろに下がる感じというか。常にそうでいたいとは思います」

●じゃあ、すごく大きな質問になっちゃうんですけど。4人が少しづつ作り上げてきた音楽の方向性――例えば、声を張り上げない、抑揚をできるだけ抑えながら、でも変化で聴かせていくとかっていうスタイルや考え方というのは、結果的にどういうアティチュードやライフスタイルを代表してると思いますか?

川辺「多分、『やりたくないことはやらない』くらいな感じだと思いますね(笑)。活動の今のスタンスもそうなんですけど。何かやむをえない事情を自分達の好きなことに持ち込まないようにする。それをやっているバンドだと思うので、ポジティヴな意味で。だから、そうですね、『自然にやろう』みたいな感じ?(笑)」

大竹「性格もあるのかもしれない。白黒はっきり、こう思っているっていうふうに決められないっていう」

川辺「ああ、それもある。でも、『それも全部、素直に出せたらいいな』みたいな。『なんか乗り気じゃないな』みたいな感じもそのままやってく方が、楽なんじゃないかなっていう」

須田「感情を爆発させるのが発散な人もいるけど、それを好かない人もすごくたくさんいると思うので。実際、僕らもそうなので、そういうのが影響しているところはあると思います」

川辺「決めきらないで幅がある状態で楽しくできるのがいいし。音楽自体も楽しく、活動自体もそういうので。だから、ライフスタイルって言ったら、そういうことなのかもしれないですね、それは。決めきらないし、やむをえない事情はなるべく作らない」

●でも、誰もが何かしら、やむをえない状況に巻き込まれがちじゃないですか。例えば、札束で顔をはたかれたりすれば、はっきりと「ノー」って言えるけど、愛情を持って近づいてこられたりすると、なかなか「ノー」って言えないところがある。すごい難しい。ミツメって、そこも含めて、上手く距離を取ろうとしているよね?

川辺「わりかし『ノー』って言ってますね」

●(笑)。


お疲れさまです。前編、後編併せて2万字近いクソ長い原稿におつき合いいただき、どうもありがとうございました。では、最後に“うつろ”や“cider cider”と並ぶ、彼らミツメの現時点での代表曲と言える“煙突”の映像を貼っておきたい。もし無理やり彼らのベストワークを1曲選ぶとすれば、おそらくこの曲。「オイルにまみれて泥だらけ/君が整備したマシンで/街をゆく/夜明けに追いつく」――おそらく2ndアルバム『eye』のアートワークはこの曲が描き出している風景をヴィジュアライズしたもの。「陸橋に差し掛かった時/ミラーに映ったのは/髪の長かった頃の君だったような」――bpm90の淡々としたビートに乗せて、普段はすっかり忘れてしまっていた喪失感と寂寥感がふっと浮かび上がる瞬間を見事に切り取った名品だ(YouTubeを漁っている時に、今は亡き相米慎二85年の傑作『台風クラブ』の映像をミツメの“Disco”を合わせた映像を見つけたことがあるが、淡々とした長回しの中でやおら思いもよらない沸点が浮かび上がる相米作品と、ミツメの音楽はどこか似ているかもしれない)。そして、このトラックがもっとも圧倒的な瞬間を見せるのは、陽の光を浴びた砂流がさらさらときらめくようなシューゲイズ・ノイズに乗せて、1stヴァースをまんま繰り返す、2分47秒から1分以上にわたる長い長いヴォーカル・ブレイク。そして、そこに次第にベース、ビート、そして、ファズ・ギターが重なっていくこの曲後半の美しさと切なさは、どうにも筆舌に尽くしがたいものがある。

ミツメ / 煙突

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また、併せて、以下の“煙突”のアコースティック・テイクを聴いてもらうことで、彼らがサウンドによって何を表現しようとしているかが改めて浮き彫りになるかもしれない。勿論、逆に、この曲の「歌」としての力を再確認することにもなるだろう。それにしても、ミツメは夏がよく似合う。

ミツメ / 煙突(TOKYO ACOUSTIC SESSION)

まだ家族が寝静まっている夜明け前に目覚めてしまって、すっかり眠れなくなってしまった早朝にだけ、少し抑えた音量で鳴らすことにしているレコードが、誰にも1枚か、2枚はあるに違いない。筆者にとってはミツメの『eye』もそんな1枚になった。気がつけば、彼らの音楽はヴァン・モリソンの『アストラル・ウィークス』やマイルス・ディヴィスの『イン・ア・サイレント・ウェイ』、アル・グリーンの『アイム・スティル・イン・ラヴ・ウィズ・ユー』といった何十年来のお気に入りのレコードと同じ場所に収まっている。

今、ミツメは熱心なファンと、彼らの存在をまったく知らない人々との間で、もっとも温度差があるバンドの筆頭かもしれない。今年夏のフジ・ロックで彼らを発見したファンも含め、彼らの音楽に触れた人々にとってはもはやワン・アンド・オンリーな存在なのにも関わらず。ミツメの音楽が持つポップ・ポテンシャルは計り知れないのだけれど、今のところ、そんなポジションに甘んじている。いや、甘んじている、というのは少し違うな。今のところ、彼らミツメは、余計なノイズに干渉されない、しかるべき適切な場所にひっそりと身を隠している。そして、しかるべきあなたに発見されることをのんびりと待っている。そんな風にこれから先も彼らミツメの音楽は、繰り返し繰り返し静かに発見され続けることになるだろう。


「ミツメ interview part.1
未来は淡々と、だが、確実にやってくる」
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