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英国ギター・バンド復活の烽火
これを見逃す馬鹿は馬鹿だ!
part.1
by YOSHIHARU KOBAYASHI October 10, 2013
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英国ギター・バンド復活の烽火<br />
これを見逃す馬鹿は馬鹿だ!<br />
part.1

パーマ・ヴァイオレッツとサヴェージズだけじゃない! 昨年まではその壊滅的な状況を指して「氷河期」と呼ばれていたのが嘘のように、今年は良質な新人ギター・バンドがイギリスから次々と登場し始めている。これは本当に新しい気運の萌芽なのだろうか? その真偽をあなた自身の耳で確かめてもらうべく、今すぐ聴くべき素晴らしい新世代バンド達を紹介していこう。まずは手始めに7組!

まだ日本にはほとんど伝わってきていないが、昨年後半あたりからイギリスのギター・バンド勢が明らかに復調の兆しを見せている。氷河期とまで言われていた近年の壊滅的な状況が嘘のように、次々と有望な新人が頭角を現してきているのだ。最近はNMEが毎年のように「今年こそはギター・バンド大復活!」と大風呂敷を広げ、結局のところ何も起こらずに終わったという事態が続いていたので、こう言われても疑心暗鬼な人も少なくないだろう。だが、今年はチルウェイヴ以降のメランコリーには足を絡め取られていないバンドが飛躍的に増えたという点で、全体的なモードが一気に変わったと実感させられるし、何より数の面でここ数年を圧倒するほど素晴らしいバンドが出てきている。単純に良質なバンドの多さで言えば、フレンドリー・ファイアーズやフォールズなどが出てきた豊作の2008年にも匹敵するほどだと言っていい。

もちろん、ディスクロージャーの記録的な大ヒットが象徴するように、今のイギリスはダンス・ミュージック全盛の時代だ。今年出てきた新人バンド達が、ディスクロージャーやアルーナジョージやデューク・デュモントのように、今すぐチャートを席巻するとは言い難い。だが確実に、ここには新しい気運の萌芽がある。ならば、その胸躍る瞬間を見逃す手はないだろう。まずは手始めに7組、これだけでも現在のイギリスにおけるギター・バンドの勢いは実感できるはずだ。

Childhood

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今一番デビュー・アルバムが楽しみな英国ギター・バンドと言えば、テンプルスと、このチャイルドフッドだ。パーマ・ヴァイオレッツも太鼓判を押す彼らが得意とするのは、エヴァーグリーンな60年代的ギター・ポップ。ストーン・ローゼズの1stからマッドチェスターの多幸感とグルーヴを捨て去り、メロディアスな側面を強調したような初シングル“ブルー・ヴェルヴェット”も名曲だが、続く“ソレム・スカイズ”は少しばかりシューゲイザー的なギターとアンセミックなメロディが冴え渡る、まさに必殺の一曲だと言っていい。レニ顔負けとまではいかないけど、少しばかりノーザン・ソウルを思わせるドラムもいい感じ。

Loom

兄弟で揃いも揃ってセンス抜群なんて反則でしょう。ルームのフロントマンであるタリック・バドワンは、なんとホラーズのファリスの実弟。普通ならそんな血筋は荷が重過ぎるが、既発曲を聴く限り、彼らの実力は初期ホラーズに決して見劣りしない。恐るべしバドワン兄弟。その音楽性はマッドハニー直系の騒々しいグランジといったところで、アグレッシヴで直情的なサウンドが何とも痛快だ。カヴァー曲も数多く発表しているが、バッド・ブレインズやジーザス・リザードなどに加え、ゾンビーズまでピックアップしている幅の広さには、確かなセンスと伸びしろを感じる。

Palma Violets

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2013年初頭の時点では、断トツで今年最も期待されている新人バンドだったパーマ・ヴァイオレッツ。今ではアルバムとライヴの完成度の高さで一気に評価を伸ばしたサヴェージズに逆転された印象があるが、おそらく彼らの本領が発揮されるのはこれからだろう。というのも、結成一年足らずで発表された1st『180』は、その粗野でロマンティックな輝きが確かなポテンシャルを感じさせたものの、現時点では原石の状態に留まっているとも思えたからだ。彼らと同じようにNMEがハイプしたヴァクシーンズが2ndで飛躍を遂げたように、パーマ・ヴァイオレッツも今後伸びていく可能性がある。早くも次に期待。

Splashh

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まるでダイナソーJr.がプライマル・スクリームの1stをカヴァーしたようなサウンド。あるいは、ペインズ・オブ・ビーイング・ピュア・アット・ハートからオタク臭さを抜き取ったような感じと言うべきか。ロンドン発20代前半の彼らが鳴らすのは、飛びきりノイジーで甘酸っぱいオルタナ・ギター・ポップだ。1st『コンフォート』は粗削りなところが目立つが、少なくともシングルの“オール・アイ・ウォナ・ドゥ”と“ニード・イット”は名曲と断言していい。オルタナ風味だが卑屈っぽさや鬱屈としたところが微塵もなく、伸び伸びと青春を謳歌しているような爽快さが何より魅力的。

Charlie Boyer & The Voyeurs

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エレクトリシティ・イン・アワ・ホームスのフロントマンが始めた新バンド。既に各所で評されているように、テレヴィジョンのような70年代NYパンクをイギリス流に再解釈した感じと言える。鋭く突き刺さる歌声とギターはトム・ヴァーレインを思わせるところがありながらも、全体的なサウンドはグラム・ロックやブリットポップに近い。アーティなスノッブさを漂わせる一方で、英国的な親しみやすいポップネスも持ち合わせているという塩梅が絶妙だ。ちなみに、前身バンド時代からホラーズとは交流があり、トイやルームといった周辺バンドとも仲がいい模様。〈ヘヴンリー〉のレーベルメイトにはテンプルスもいる。

Peace

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今年注目の新人バンドを俯瞰してみると、いよいよ本格的に80年代リヴァイヴァルから90年代リヴァイヴァルに突入したのだと確信させられる。そして、ここ日本でもお馴染みのピースは、まさにそんな流れのいいとこ取り。彼らの1st『イン・ラヴ』には、マッドチェスターのビートから、USオルタナのノイジーさ、そしてブリットポップのメロディまで全てがある。それにしても、本人達は知らなかったとうそぶくが、プライマル・スクリームがマッドチェスター期に送り出した名曲、“ハイヤー・ザン・ザ・サン”と同名曲を何の躊躇もなくアルバム冒頭に持ってこられる屈託のなさを目の当たりにすると、本当に時代は巡ったのだなと実感させられる。

Wolf Alice

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もともとはエリー・ロウセルとジョフ・オッディの二人でインディ・フォークをやっていたというウルフ・アリスだが、リズム隊加入を契機に音楽性を一新。紅一点のエリーがエキセントリックな歌声を聴かせ、グランジ譲りの激しい緩急のついたギターが唸りを上げる様は、どこかブリーダーズのよう。2枚のシングル“フラッフィ”と“ブロス”は、ともにホワイト・ライズ随一のインディ男子、ジャックが主宰する〈チェス・クラブ〉からのリリース。マムフォード&サンズの初期EPをはじめ、最近ではスイム・ディープもリリースするなど慧眼を発揮してきたジャック、さすがお目が高いです。

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