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  • ベイビー・ドライバー(2017) directed by Edgar Wright by TSUYOSHI KIZU August 03, 2017 1
  • 俺たちポップスター(2016) directed by Akiva Schaffer, Jorma Taccone by TSUYOSHI KIZU August 03, 2017 2
  • ハイジ アルプスの物語(2015) directed by Alain Gsponer by TSUYOSHI KIZU August 03, 2017 3
  • ハートストーン(2016) directed by Guðmundur Arnar Guðmundsson by TSUYOSHI KIZU August 03, 2017 4
  • ゾンビ(1978) directed by George A. Romero by TSUYOSHI KIZU August 03, 2017 5
  • アウトサイダーの男が女と出会って、車が走る……。ある意味で、この映画の骨格はそれだけだ。つまり、このご時世に「男と女、車があれば映画は撮れる」という古めかしいロマンティシズムを貫いているということ。『ベイビー・ドライバー』が真の意味でタランティーノ以降を継承する痛快な一本となっているのは、この2017年に政治的・社会的な「正しさ」をまったく度外視した地点で、映画としての「正しさ」に殉じているからだ。正義も悪もない。敵も味方もない。男と女、そして爆走する車があるだけ……(「男」がベイビーという「男の子」になっているのが現代的か)。ひとつ加えるとしたら、そのエンジンがポップ・ミュージックになっているのはどうしたって楽しくて、たとえば主人公のベイビーが恋をするデボラに出会うシーンでは、ベックの“デボラ”のヴァースの歌詞がそのままストーリーになっている。さらにそのあとの会話は音楽好きにはたまらないもので……まあ、それは観てのお楽しみということで。観終わったら、昔iPodに作ったお気に入りのプレイリストを引っ張り出してみよう。

  • 下ネタ満載のバカバカしいラップをするコメディ・トリオとして『サタデー・ナイト・ライヴ』で大人気を博したザ・ロンリー・アイランドが、監督・脚本・出演・製作を務めたおふざけ偽音楽ドキュメンタリー。エイコンをフィーチャーした“アイ・ジャスト・ハッド・セックス”がYouTubeで2億回以上再生されたとかで話題になりましたよね。本作ではザ・ロンリー・アイランドではなく、架空のヒップホップ・ユニットの成功と挫折、友情と別離がクソくだらないネタ連発で繰り広げられる。アダム・レヴィーンがホログラフとなってステージで共演したりシールが散々な目に遭ったり音楽業界ネタはそれなりに笑えるけど、業界観が微妙に古いし、風刺が特別鋭いというわけでもないので、ケンドリック・ラマーが評価されている現在のアメリカにはさすがにくだらなすぎて響かないのでは……とも思う。ただ、このバカバカしさが担保されているのがアメリカのエンターテインメント産業の懐の深さと言えなくもない。冒頭のクエストラヴを筆頭にして大物ミュージシャンが大勢カメオ出演するのも、完全に無駄遣いである意味すごい。

  • スイスの作家ヨハンナ・シュピリによる児童文学の傑作「ハイジ」といえば、日本では当然高畑勲と宮崎駿によるアニメ・シリーズ『アルプスの少女 ハイジ』だが、本作は本国スイスで製作された実写映画化だ。2時間で話をまとめなければならないのでどうしても駆け足感は否めないものの、とても行き届いた映像化には違いない。ドレスを脱ぎ捨てて山を駆けまわるハイジ、まだあどけないペーター、青いドレス姿の寂しげなクララはもちろん、猫アレルギーのロッテンマイヤーさん(美人)、セバスチャンのもみあげなど、原作ファンもアニメ・ファンもじゅうぶん楽しめるだろう。あるいは、「ハイジ」は愛を捨てて山にこもった男=アルムおんじがある純粋なものに触れて慈しみを取り戻すことについての物語だと思っている僕のような人間にとっても、おんじをドイツの大名優ブルーノ・ガンツが演じているという時点で信頼できる。壊れた家族の再生の物語であり、厳しい自然とともに生きることについての物語であり、誰かを思いやることについての物語。あらためて、名作だ。

  • 自然の厳格さと美しさで言えば、アイスランドも負けてはいない。シンガーソングライターのアウスゲイルはアイスランドの僻村で育ったそうだが、こんなところだったのかな、と思ってしまうような田舎が本作の舞台だ。その、この世から取り残されたかのような村で、少年少女たちの性の目覚めや10代の痛み、家族との軋轢、そして少年が少年に寄せる淡い想いが描かれる。アイスランド版『ムーンライト』……とするのはさすがに乱暴だが、少年同士のある純粋な絆を瑞々しく描いたという点では共通している。小さなコミュニティで秘密を抱えることの苦しみという同性愛固有の問題を見据えつつも、俯瞰的に周りの少女たちや大人たちの姿も映されることが本作のポイントで、アイスランドの圧倒的な風景もありどこか神話的な佇まいを持った一本だ。監督のグズムンドゥル・アルナル・グズムンドソンはまだ30代なかば。処女作らしい透明感がありつつも、成熟した演出は今後が楽しみな作家のひとりだ。

  • ゾンビ映画の父、ジョージ・A・ロメロが亡くなった。ゾンビ映画といういちジャンルのファンにとっての幸福は、これほどまでの美学と作家性を備えた人物がいたことに他ならない。ロメロ以前にもゾンビ映画は存在したが、単純に演出としてのレベルの高さや、様々な考察を可能にする哲学性を同ジャンルにもたらしたのは彼だ。ロメロの映画がたんなる驚かしに終始せず、それどころか思索的ですらあるのは、ゾンビたちとともに人間の姿が鋭く描かれているからだ。追いつめられ欲望や利己心を剥き出しにする人間たち……恐ろしいのはゾンビなのか、それとも人間なのか? ゾンビ映画の金字塔『ゾンビ』は、70年代が終わりに向かい、ヒッピー・カルチャーやカウンター・カルチャーが瓦解していく時代の人間たちの滑稽さがよく描かれている。それは資本主義にまみれていく生者たちへの死者からの忠告のようで……いま観ても痛烈だ。ロメロはまた、21世紀になってもつねに新しいスタイルを取り込みながらゾンビ映画ファン、そして映画好きを楽しませてくれた。R.I.P.

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