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  • ハスラーズ(2019) directed by Lorene Scafaria by TSUYOSHI KIZU February 10, 2020 1
  • ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋(2019) directed by Jonathan Levine by TSUYOSHI KIZU February 10, 2020 2
  • セックス・エデュケーション(2019-) created by Laurie Nunn by TSUYOSHI KIZU February 10, 2020 3
  • his(2020) directed by Rikiya Imaizumi by TSUYOSHI KIZU February 10, 2020 4
  • リチャード・ジュエル(2019) directed by Clint Eastwood by TSUYOSHI KIZU February 10, 2020 5
  • ジェニファー・ロペスをノミネートから落としたダサいアカデミー賞のことは忘れよう。いま、萩原さんと木津が激推しするのが、この痛快で切ないシスターフッド・ムーヴィです。リーマンショック直後のニューヨークを舞台として、ストリッパーの女性たちがウォール街の「金持ちクソ野郎ども」をターゲットにして、金を巻き上げた実際の事件の映画化。アメリカ現代史における重大なターニング・ポイントである2008年――金融危機――はこれまでも映画で何度も語られてきたわけだけど、それはたいてい「男目線」だった。が、本作はそれをある種の「現場」にいたワルい女たちの側から提示したクライム・ムーヴィである。トランス女性や多様な人種的バックグラウンドなど様々なマイノリティを包摂する女性同士の連帯と、理念だけでなく経済としても支え合うこと……2010年代型のフェミニズムやダイヴァーシティがしっかり入っているのも最新型だ。同じモチーフ(リーマンショック)を『マネー・ショート』で扱ったアダム・マッケイはあくまでプロデューサーとして裏方に回り、監督・脚本を担当したのは『エンド・オブ・ザ・ワールド』で注目を集めた女性クリエイターのローリーン・スカファリア、主要キャストもすべて女性。カッコいい姉さんとしてのジェニファー・ロペスが華麗にポールダンスをし、煌びやかさとそれゆえの虚無感が乱反射するエンターテインメント。 これでもかと繰り返されるスローモーションと、キラキラしたポップ・ソングたち(リゾとカーディ・Bも出てきます!)。それは過ぎ去った輝きを懐かしむようで……やがて、ラストのビターな余韻に繋がっていく。

  • で、いまハリウッドの女性アイコンとなっているのがシャーリーズ・セロン。女性の産後うつの問題を扱った『タリーと私の秘密の時間』、本作、右派系メディアFOXニュース内部で起きたセクハラ告発を描いた『スキャンダル』、ブラック企業の待遇への復讐をクライム・エンターテインメントに仕立てた『グリンゴ 最強の悪運男』と、プロデュースと出演を兼ねた作品が続きます。『ロング・ショット』はなかでも超抜けがいいロマコメで、セス・ローゲン大好きな僕のようなひとは(厚かましくも)シャーリーズになりきって「こんな男いたらいいよね~」とか言いながら観られるだろうし、文化系男子もカッコよくてかわいいシャーリーズに惚れるはず。ありがちな男女逆転ではなくて、こういうカップルもいまの時代アリだよね? とサラッと提示しているところがいい。もうひとつ言っておきたいのは、「もしもトランプがいない世界だったら」というパラレル・ワールドになっているということ(ボブ・オデンカークが民主党の冴えない大統領役をやっているので、ヒラリーもいないことになっているが)。そこでは、能力のある女性政治家が環境問題のために奔走し、かわいくて骨のある男がそれを支えているかもしれない……。この多幸感はそういう意味では大統領選を前にしたユルい逃避とも言えるけれど、ひとつの「理想」をポップに具現化したってことでお願いします。

  • これもいまっぽさがたっぷりの、英国発のかわいい学園ドラマ。エイサ・バターフィールド演じる奥手の高校生男子オーティスが、不良少女メイヴの力を借りつつ、セックス・セラピストの母ジーン(『X-ファイル』のスカリー役のジリアン・アンダーソン)から得た知識を使って学校内で同級生たちの性の悩みに答える……というのがシーズン1の軸となるプロット。シーズン2はさらに多くのキャラクターの群像劇へと幅を広げ、アセクシュアルやパンセクシュアルといったセクシュアリティ、アフターピルのような避妊の具体的な策、性暴力被害と対峙するためのシスターフッド……といった、「性」にまつわるより多様なイシューがピックアップされる。ただ、『13の理由』のようなエグみはなく、あくまでキュートな恋愛劇にしているのがうまい。いまどきの高校生のリアルな性の悩みを描いているが、片想いやすれ違いに悩むティーンたちの姿はヤング・アダルトものとしてのフックも抜群。オーティスの親友でゲイのエリックと、厳格な父親への反発でくすぶる不良アダムとの恋の行方にはみんな固唾を呑んで見守ったはず……! 文字通りの「性教育」が、こんなポップな形で提示されるのは心強いばかり。

  • 『サッドティー』で注目され、昨年の『愛がなんだ』でヒット作家へと名を連ねた今泉力哉。恋愛映画の気鋭と知られる彼だが、本作では脚本をアサダアツシに委ね、あるゲイ・カップルの姿をみずみずしく映し出す。本作が稀有なのは、カップルが育む「愛」の問題に終始せず、日本社会でゲイが直面している現実をつぶさに見つめようとしていることだ。狭い社会でゲイであることを隠すことの困難やアウティングの危機といったことが、リアリティのあるエピソードの積み重ねでもって示される。とりわけ、子どもの親権を争うためにコート・プレイへとなだれこむ後半において、元妻を単純な悪役とせず、シングル・マザーが担う仕事と育児の両立の難しさをきちんと掬い取っていることにも、現代における新しい家族のあり方を真面目に探そうという気概が感じられる。立場の異なるマイノリティ同士の対立を乗り越えようとしているのである。その芯の通った脚本を、今泉の持つどこか人間臭い――人間の愚かさも良心も受け止めているような――視線で映画にしている。「普遍的な愛の物語」ではなく、やはりこれは現代日本におけるひとつのゲイ映画の形なのだと僕は言いたい。

  • すでに海外メディアを中心として、女性記者が「身体を武器にして」スクープを取りに行った描写の問題は指摘されているし、イーストウッドのリバタリアンとしての立場――「西部劇」を担ってきた者と言い換えてもいいかもしれない――から、「自分の身は自分で守らねばならない」という主張が滲むようで、まったく違和感がないと言えば嘘になる。しかし、そうした異なる政治的/思想的立場を越境しながら、あるいは越境させながら、つねに映画の力とともに観る者に思考と倫理への問いかけを促してきたのもイーストウッド映画だった。アトランタ・オリンピック開催中の1996年、爆破物をはじめに発見した警備員リチャード・ジュエルがメディアによって容疑者と祭り上げられた実際の事件の映画化。それは近年イーストウッドが繰り返し描いている「(アメリカの)ヒーローは偏在している」というテーマの反復であり、それがアメリカ的な理想の男ではない、母親と暮らす貧しい独身男だったという点では突端だと言える。サム・ロックウェルやキャシー・ベイツの名演に支えられたポール・ウォルター・ハウザーの戸惑いを滲ませた顔から浮かんでくるのは、「それでも自分はどう生きたいか」という問いである。何か恐ろしい事態に直面したときに、自分が正しいと思える選択ができるのか、その責任の重さについて、アメリカ映画の巨匠はいまなお投げかけてくる。

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