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  • スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム(2019) directed by Jon Watts by MARI HAGIHARA July 12, 2019 1
  • ザ・シェフ・ショー ~だから料理は楽しい!~(2019) directed by Jon Watts by MARI HAGIHARA July 12, 2019 2
  • 存在のない子供たち(2018) directed by Nadine Labaki by MARI HAGIHARA July 12, 2019 3
  • 北の果ての小さな村で(2018) directed by Samuel Collardey by MARI HAGIHARA July 12, 2019 4
  • 工作 黒金星と呼ばれた男(2018) directed by Yun Jong-Pin by MARI HAGIHARA July 12, 2019 5
  • 『アベンジャーズ/エンドゲーム』でMCUが一区切りついたあとのコミック・リリーフ的なものか、と思っていたら、メタ・スーパーヒーロー・ムーヴィ的なヤバい映画でした。息つく暇もなく、驚きがいっぱい。しかもそれがこれまでになく思春期的なピーター・パーカーを主人公にした、王道の青春映画になっている。加えて、この時代を生きるティーンが避けては通れない事態をモチーフにした社会的エッジもあるのです。いや、ティーンだけじゃなく、フェイクなものに感情と行動を左右されっぱなしの大人たちへのメッセージでもある。そんなに盛りだくさんなのに詰め込まれてる感じがなく、シンプルに楽しくてキュート。トム・ホランドやゼンデイヤといったニュー・ジェネレーションの魅力も全開です。この流れから、ジョン・ワッツ監督が新たなMCUカルチャーを作る予感まであるかも。なかでも、豪快なCGIアクションを引っ張ってきたシリーズにしかできない「ある仕掛け」にはびっくりするはず。コミックオタクから、スーパーヒーロー映画ファン、ティーン・コメディ好き、MCUをずっと見てきた人にも、そうでない人にも。必見です。

  • MCU好きなら、ジョン・ファブロー監督による映画『ザ・シェフ』(2016)と、Netflixシリーズの『ザ・シェフ・ショー』はもうチェック済みでしょう。ファブローの食への情熱が生んだとも言えるこの二作はMCUのキャストやスタッフが登場するだけでなく、彼らの気風がちょっとのぞけるような気になる。特にこのシリーズには、「自分にとって美味しいもの」にこだわる人たちが登場し、有名レストランやグルメ・シーンとは違うところで起きている、「USインディ・フード・シーン」とでも呼びたいものも見えてくる。そういう人たちを積極的にフックアップするところが、MCUの人選に通じるのです。ファブローの相方は、韓国風タコスのフードトラックでブームを起こしたロイ・チョイ。そう、『ザ・シェフ』はレストランのオーナーや批評家にブチ切れてフードトラックに転向するシェフの話だっただけに、「ファブローがスタジオ大作に嫌気がさしたのか」と危惧したものでしたが、違いました。むしろいまではMCUの重鎮となり、こんな食番組を作りつつ、監督としてはもうすぐディズニーから『ライオン・キング』実写版が公開。バイタリティに感嘆します。

  • 貧しい人々と移民が暮らす中東のスラムでは何が起きているのか。それを12歳のゼインの視線から描くのは、レバノン出身の女性監督、ナディーン・ラバキー。出生記録もない子どもたちが働き、売買され、それでもストリートで生きようとする姿は衝撃的で、でもそこには確かな生命力もあるのです。ゼインだけでなく赤ん坊に至るまでその力を体いっぱいに表現しているのは、演出のすごさとしか言いようがない。幼い妹が結婚させられ、怒りのあまり家を出たゼインは、エチオピア移民のラヒルと暮らすようになります。ところがラヒルは不法就労で捕まってしまう。ここからのゼインの苦境は本当に過酷で、同時にもっとも逞しい姿を見せる。出演者はほぼ全員、役と同じような境遇にある人々。普段は不可視な人々が演技するだけでなく、それぞれに存在を主張していて圧巻。アラブ社会のいまを内側から語るドラマには、例えばブラジルの『シティ・オブ・ゴッド』(2002)とはまた違う、子どもたちを見守るような視線があります。

  • サミュエル・コラルデ監督による、これもドキュメンタリー風に撮ったフィクション。出てくるのはグリーンランドの村と、そこに教師としてやってきたデンマーク人の青年アンダース。壮大な風景を背景に、実際の人々がその交流を演じます。デンマークはグリーンランドの旧宗主国で、先住民族に同化政策を強いた過去もある。その歴史、そしてアンダースの西欧的な常識が村の人々とぶつかり、さまざまな齟齬が生まれます。自然の厳しさにも音をあげ、「自分探し」に来た青年は何もうまくいかないことに焦れ、孤立してしまう。けれど生徒アサーを通じて、彼はだんだん態度を変えていきます。やや楽観的ではあるものの、二つの視点が共存し、アンダースとアサーの両方が自立していくさまに説得力がある。それもドキュメンタリーとドラマを融合させる監督独自のプロセスから生まれてくるのでしょう。犬ぞりのディテールなど狩猟民族の暮らしや自由な精神も見どころ。村の老人がアンダースにかける言葉、「デンマーク人は難しく考えるんだな、結局何がしたいんだ?」は、社会の規範に縛られる人間に向け、異文化に触れることでそれを破る合図なのかも。

  • 朝鮮半島事情が動きそうないま、韓国から次々骨太な政治ドラマが出てきています。『タクシー運転手』や『1987、ある闘いの真実』(2017)では80年代の民主化運動が描かれ、本作では90年代に北に潜入した実在の工作員の姿が、韓国の政治の激動とともに描かれます。スパイ・サスペンスとしてもスピーディでドラマチック、かつ韓国映画らしい迫力があって引き込まれる。と同時に、冷戦の裏で南北政権が通じていた、というストーリーが衝撃をもたらします。男たちの駆け引き、スリリングな緊迫感、そこに絆が生まれていく熱さは韓国映画の十八番。『裏切りのサーカス』(2011)など渋いスパイものとはまた違う、土着的な面白さもある。黒金星が金日正に会うシーンや、北朝鮮の日常シーンも真に迫っている。ラストシーンの後には、これは過去の事件じゃない、現状と地続きなんだ、という実感が残ります。

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