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  • マニアック(2018) directed by Cary Fukunaga by MARI HAGIHARA October 12, 2018 1
  • バリー(2018) created by Alec Berg, Bill Hader by MARI HAGIHARA October 12, 2018 2
  • フォーエバー~人生の意味~(2018) created by Alan Yang, Matt Hubbard by MARI HAGIHARA October 12, 2018 3
  • クインシー(2018) directed by Alan Hicks, Rashida Jones by MARI HAGIHARA October 12, 2018 4
  • Love, サイモン 17歳の告白(2018)
    directed by Greg Berlanti by MARI HAGIHARA October 12, 2018 5
  • メンタル・ヘルスに触れる作品が音楽や映画でも多いいま、このドラマを観ると「抑うつの時代なんだな」と実感します。次のボンド・ムービーの監督に決定したキャリー・フクナガによる『マニアック』、主演はエマ・ストーンとジョナ・ヒル。『スーパーバッド』(07)の二人は当然コメディの間合いはバッチリ、でも役柄はヘヴィで複雑です。舞台はレトロフューチャーなタッチの並行世界。その世界におけるNYに暮らす彼らは「マインドを解決する」試薬の臨床試験に参加し、心の深層にある物語に次々没入。そこで二人が「役割」を演じるシチュエーションは80s犯罪ドラマだったり、クラシックな密室劇だったり、『指輪物語』風ファンタジーだったり。それが笑いを誘いつつ、過去に受けたダメージ、トラウマとの対決となる。なので、話の構造として思い出されるのは、『エターナル・サンシャイン』(04)。あの映画で人の記憶を操作する側がポンコツだったように、本作でも臨床試験をする日本企業がヤバい。職員もコンピュータも病んでいるのです。その一人、クールな科学者役のソノヤ・ミズノがエマ・ストーンを喰う勢いですが、終盤を持っていくのはやはりエマ。抑うつを乗り越えるメッセージも彼女が体現します。

  • 今年のエミー賞で注目されたコメディがビル・ヘダー製作・主演の『バリー』。一話30分、全8話のミニ・シリーズながら、これもある意味メンタル・ヘルスがモチーフです。アフガニスタン帰還兵で雇われヒットマンとなった男、バリーがLAで演技に目覚め、足を洗うためにさらに人を殺す羽目になり、しかも「演じること」によって自分のなかの空虚や罪悪感と向かい合う。そんなとんでもない設定に、ハリウッドのドタバタや犯罪のプロットが絡み、どんどん説得力を持っていくのがすごい。LAのギャングも俳優ワナビーも、結局は薄っぺらく残酷な世界の住人。で、その両方に足を突っ込むバリーは闇を抱えた「笑わない」男なのです。そのシュールなこと! 最近のアメリカのコメディアンやコメディの鋭い切り口、充実ぶりには目を見張ります。間の取り方が独特で、あまり見たことがないようなショットが見られる第5話、第6話の監督は『アトランタ』のヒロ・ムライ。

  • Amazonオリジナルのコメディ、『フォーエバー』の舞台はあるカップルが訪れる死後の世界。平穏で安定した生活を送っていた二人は、変化を求めた瞬間にうっかり「生」から「死」へ移動してしまいます。とはいえ、そこでも家や所持品がちょっとアップグレードするだけで、潰すしかない時間が延々と続くのは変わらない。このサバービアな寓話には、人によって違うものが見えてくるでしょう。生きている実感や目的がなければ、生も死も変わらないのか。「永遠の愛」と「退屈」は同義なのか。もしくは幸福の曖昧なイメージを、天国というキリスト教的死生観につなげることもできるかもしれません。その両義的なニュアンスをうまく演じるのが、ポール・トーマス・アンダーソン夫人でもあるマヤ・ルドルフと、フレッド・アーミセン。後半は郊外のアフターライフにも大きな波紋と変化が生まれるのですが、むしろ同じルーティンのなかで話が展開すれば、もっと野心的な作品になった気がします。クリエイターの一人に『マスター・オブ・ゼロ』のアラン・ヤン。

  • 俳優としても活躍するラシダ・ジョーンズが共同監督した、クインシー・ジョーンズの伝記ドキュメンタリー。彼の仕事の一部しか知らなかった身としては、人生を数回分生きてきたような実績の総量と、彼の変わらないエナジーに圧倒されます。レイ・チャールズ、マイケル・ジャクソン、ウィル・スミス、オペラ・ウィンフリー。ジャズ、ポップ、映画、テレビとフィールドを変えながら、新たな挑戦に取り組んではヒットを放ち、スターを見出し、精力的に作品を生んでいく。そんな彼にとってはジャンルという概念がそもそも違うんだろうな、と。ケンドリック・ラマーとの対談で「ヒップホップはどこから生まれたと思う? アフリカだよ」と諭すシーンにも、その裏打ちを感じました。ただそんなワーカホリックぶりが結婚生活を壊してきた経緯や、何度か重篤を迎えた最近の映像、精神を病んだ母親についての告白も含みながらも、より私的な部分、ダーク・サイドを深く掘り下げて人物像に迫るには至らなかったかも。娘であるラシダにしか見せない表情も捉えつつ、対象への親愛によって、フォーカスが定まりきらなかった印象です。とはいえ初心者にはうってつけの一本。

  • やっと日本で配信が始まった本作は、海外でヒットしたティーン・ムービー。ゲイの高校生、サイモン(ニック・ロビンソン)がカムアウトに悩むだけでなく、謎の同級生とメールをやり取りするうち恋に落ち、彼の正体を探る姿をメインストリームのラブコメとして描いています。サイモンは最初、「なんでゲイだけカムアウトしなきゃいけない? 全員したっていいだろ?」と不満を持ち、そのあと高校生たちがそれぞれ「ママ、私……ヘテロなの!」と告白する仮想シーンが続きます。これが傑作。手段は笑いでも、LGBTティーンの気持ちを代弁しようとする志は真摯です。秘密を持つことで仲間や家族、自分も傷つけてしまうサイモンの葛藤にもメッセージがある。こういう映画こそ本当は劇場公開してほしかった。サイモンの友人にキャサリン・ラングフォードほか、『13の理由』のキャストが出演。ポップ・カルチャーの引用は時代という横軸より、歴史的な縦軸をメインに編んであるので、どんな世代でも楽しめるネタが飛び出てきます。LBGTアイコンとしてホイットニー・ヒューストンの曲が収録されたサントラ盤のプロデュースはジャック・アントノフ。

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