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  • マイティ・ソー:バトルロイヤル(2017) directed by Taika Waititi by MARI HAGIHARA November 13, 2017 1
  • ハント・フォー・ザ・ワイルダーピープル(2016) directed by Taika Waititi by MARI HAGIHARA November 13, 2017 2
  • マインドハンター(2017) executive produced by David Fincher by MARI HAGIHARA November 13, 2017 3
  • またの名をグレイス(2017) directed by Mary Harron by MARI HAGIHARA November 13, 2017 4
  • 人生はシネマティック!(2016) directed by Lone Scherfig by MARI HAGIHARA November 13, 2017 5
  • タイカ・ワイティティに夢中です。監督としてのファンキーな作風、人/俳優としてのポップな存在感。本作が初週1.2億ドルを記録した際には「マオリ・ムービーを観てくれたみんな、ありがとう!」と感謝した彼。そう、これはマオリ系ニュージーランド人の監督がマオリの俳優とオーストラリア人スターを使った、南半球映画。それがメインストリームでヒットしただけで胸熱なのに、内容もマーベル大作を乗っ取った堂々のワイティティ映画となっているのです。ただマーベルがすごいのは、特に『ガーディアンズ~』(2014)以降のクリエイティヴな自信感。インディ監督の起用も、本作のギャグがかなりの部分即興というのも(SWシリーズがまさにその点で監督を降板させたのと対照的)、勢いと自信を感じさせる。とはいえ『ソー』シリーズ第三作はギャグのみにあらず。北欧神話の語りはむしろ前二作より正統的で、父と息子の関係は『ガーディアンズ~』より深い。黙示録=ラグナロクの使い方にもひねりがあり、そこで新たに「ヒーローのあり方」を提示しているのです。その意味で、作品に出てこない単語が邦題に入っているのが唯一残念。ソーとロキは最高に可愛いです。

  • 日本では『シェアハウス・ウィズ・バンパイア』(2014)しか劇場公開されていない、ワイティティ監督の2016年作品が『ハント・フォー・ザ・ワイルダーピープル』。里親をたらい回しされていた問題児リッキー(ジュリアン・デニソン)がやってきたのは、夫婦が暮らす田舎の農場。なんとか落ち着くかと思ったら、あることが起きてリッキーは夫のヘック(サム・ニール)とともにニュージーランドの原野を逃亡することに。いわゆるバディ・ムービー、追跡劇でいて、見たことのないプロットとギャグが満載。ワイティティの映画はシビアな人生を生き抜くことへの笑いが絶妙なのです。この独特の「ユルさ」は白人の母とマオリの父を持ち、田舎と都会で育ち、スタンダップ・コメディアンを経て俳優・監督となった彼の背景からも生まれている気がします。そこにブラック・カルチャーとの相似を見ることも可能ですが、おおらかなナチュラリズムと共鳴しているのがニュージーランド的。本人は神父役で出演。一番強烈なキャラ、マオリの女優レイチェル・ハウスは『マイティ・ソー バトルロイヤル』にも女戦士として出演しています。

  • Nerdwriterのヴィデオ・エッセイ「フィンチャーは観客の感覚をハイジャックする」がネットで話題です(https://www.youtube.com/watch?v=GfqD5WqChUY)。曰く、デヴィッド・フィンチャーのカメラワークは登場人物の微細な動きにも完璧に同調しているので、観る人が没入する。確かに彼の映像はスタイリッシュというだけでなく、吸引力が違う。フィンチャーが製作総指揮を務め、4話を監督したシリーズ『マインドハンター』がビンジ・ウォッチ度が高いのも、この「見せる映像」の強度ゆえでしょう。物語は70年代、二人のFBI捜査官が多数の殺人犯と面接し、プロファイル捜査を確立するまでの実話。つまりフォーカスは犯人ではなく、その人物像を研究し、彼らに「シリアル・キラー」という名前を付け、いまやポップ・カルチャーの一部となった事象に着目した人々。その原点が描かれます。主人公ホールデンを演じるのはジョナサン・グロフ。彼のイノセントな持ち味が清涼剤になっていて、ホールデンの恋人など女性キャラの知性と直感が鍵になっているところもいい。ただ女性の立場から見ると凶悪犯のミソジニーがいかに幼少期に形成され、暴力として噴出するかがわかって、震えてしまうところも。他人事ではないのです。

  • 『侍女の物語』に続く、マーガレット・アトウッド小説のドラマ化。この流れは#MeTooのようなフェミニズムの現状とも共鳴しています。ただドラマ版『侍女の物語』が明らかにそれに沿ってストーリー変更されていたのに比べ、サラ・ポーリー脚本/製作、メアリー・ハロン監督の本シリーズはアトウッド原作が持つ「抑圧された怒り」だけでなく、「女性が語る」ことの危うさにも踏み込んでいる。舞台は19世紀カナダ。若く美しいグレイスは使用人の男とともに屋敷の主人と女中頭を殺した罪に問われ、監獄に入れられています。赦免のためアメリカから呼ばれた精神科医はグレイスと対話するうち、女性たちの不幸な境遇、ひとり生きることの苦労を知り、彼女に惹かれていく。初期精神分析や当時の心霊術もサブプロットに入れながら、事件の真相とグレイスの複雑な内面だけでなく、犯罪者がセレブリティとなり物語として消費されるところまで重層的に描くところは、さすがサラ・ポーリー。最終話には実に彼女らしい凄みがあります。主演のサラ・ガドン、神父役のデヴィッド・クローネンバーグまで、カナディアン・コネクションが存分に活かされているのも嬉しい。

  • クリストファー・ノーランのおかげで世界的に認識されるようになったダンケルク撤退の逸話。この映画は第二次世界大戦下、ダンケルクが英国でプロパガンダとして利用された側面を描いています。とはいえそれはあくまで題材で、骨子となるのは戦時下で自立していく女性のストーリー。ジェマ・アータートン演じるカトリンは、男性が徴収されてしまったロンドンで戦意高揚映画の脚本家に抜擢され、その現場を通じて働くことに目覚め、自由を求めるようになります。そこにダンケルクの劇中劇、撮影現場のディテール、政府の思惑など社会背景が加わり、人々が夢と現実の間で生きることが軽やかに語られていく。そのバランスを確かな手腕で配するのは、ドグマ95にも加わっていたロネ・シェルフィグ監督。ギャビー・チャッペの脚本も洒落ていて、途中、「人はなぜ映画を観るのか」を語るセリフに泣かされるのですが、そこには映画製作のプロフェッショナルの気概がこもっています。なかなかいいタイミングで日本公開される、2016年作品。

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