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  • レディ・バード(2017) directed by Greta Gerwig by MARI HAGIHARA May 18, 2018 1
  • ファントム・スレッド(2017) directed by Paul Thomas Anderson by MARI HAGIHARA May 18, 2018 2
  • ビューティフル・デイ(2017) directed by Lynne Ramsay by MARI HAGIHARA May 18, 2018 3
  • 30年後の同窓会(2017) directed by Richard Linklater by MARI HAGIHARA May 18, 2018 4
  • 犬ヶ島(2018) directed by Wes Anderson by MARI HAGIHARA May 18, 2018 5
  • 『20センチュリー・ウーマン』(2016)など俳優としても活躍するグレタ・ガーウィグが脚本を書き、初監督した本作。タイトル・ロールのシアーシャ・ローナンは『ブルックリン』(2015)に続き、彼女の年齢でしか演じられない若い女性の自立をみずみずしく演じています。『ブルックリン』ではアメリカに渡るアイルランド移民。『レディ・バード』では東海岸の大学に憧れるサクラメントの高校生。あの年頃のハチャメチャな楽しさと、気持ちも身体も持て余してしまう揺れ幅がリアルに描かれ、自分のことのように思えてしまう。性別関係なく、「こういうことあったなー」と思い出がよぎるんじゃないでしょうか。中心となるのは彼女と母親の関係。愛とムカつきがマックスで同居するその複雑さを類型化せず、コミカルに描くという難業をさらっとやってのけています。他にも親友との行き違い、初めての恋、セックス、といったパーソナルで親密な瞬間が積み重ねられる。そうした瞬間が自分を作ってきたんだ、そんな感慨にふけってしまいました。普通の青春映画とは違うアンチクライマックスなラストもいい。メランコリック、かつ温かいサントラを作曲したのはジョン・ブライオン。

  • ポール・トーマス・アンダーソン監督の長編第8作は、初めてイギリスが舞台。スウィンギング・ロンドン以前の50年代クチュール界です。ダニエル・デイ・ルイスが演じるのは亡母に取り憑かれ、強迫的なこだわりで上流階級のドレスを作る人気クチュリエ。格式と洗練を誇りながら、まさに時代に取り残されようとする存在です。そんな彼が何人目かのミューズ/愛人とするのが移民のウェイトレス。これは変わらないものと変わろうとするもの、出自が違う男女の支配をかけた闘い/ラヴ・ストーリーなのです。『ザ・マスター』(2012)でのホアキン・フェニックスとP・S・ホフマンを思い起こさせながら、表面はあくまで優美で繊細。ファッション以上に食べ物というモチーフが重要な役割を果たしているのは、やはり表面下に熱い渇望、「ハンガー」があるからでしょう。クリームの種類にもこだわる贅沢なイングリッシュ・ブレックファストの場面は、育ちが違う女性の振る舞いが嫌悪される場ともなる。とはいえ決して重くなりすぎない軽やかさ、新鮮な映像、話の奇妙な展開もこの監督らしい。ジョニー・グリーウッドとのタッグは、これでもう5作目になります。

  • これもジョニー・グリーンウッドが音楽を手がけた、ホアキン・フェニックス主演、リン・ラムジー監督作。音楽はこっちの方が実験的で面白いかも。監督によってはなかなかスイッチを入れにくい俳優であるホアキンも、ここでは凄みと重さ、そこに混ざる不穏なユーモアなど、100%の演技と存在感を引き出されています。誘拐された子どもを取り戻す裏稼業の男が、政治家の依頼を受けたことで巻き込まれる危険。そのプロットや事件の真相よりも、リン・ラムジーが見つめるのはこの男の傷ついた内面です。海兵隊時代、FBI捜査官時代の記憶のフラッシュバックが強烈で、見ているだけでトラウマになりそう。死や暴力による抑鬱状態をこんなにソリッドに描き出す作品もそうないんじゃないでしょうか。いわく、21世紀の『タクシー・ドライバー』。ただ映像もストーリーももっと美しく謎めいています。寡作とはいえほぼ完璧なフィルモグラフィを築いているリン・ラムジーは、もっと評価されていいはず。

  • 前作『エヴリバディ・ウォンツ・サム‼︎』(2016)でリチャード・リンクレーターのアホな若者群像劇は最後かもしれない、と思うとちょっと寂しい。でも、彼はもう堂々の巨匠なのです。新作『30年後の同窓会』は原作/共同脚本がダリル・ポニックサン。ハル・アシュビー監督作『さらば、冬のカモメ』(1973)の原作者であり、このストーリーはその非公式な続編でもある。70年代アメリカン・ニューシネマの匂いがするのも当然でしょう。ベトナム戦争をともに戦った三人の男たち(スティーヴ・カレル、ブライアン・クランストン、ローレンス・フィッシュバーン)。彼らはそのうちの一人、ドクの息子の遺体を引き取りにいきます。イラク戦争で死んだ息子と、三人のベトナム戦争の記憶は、「無駄な戦争」という思いで繋がっている。彼らのロード・トリップは過去を振り返り、人生を語る激渋パートもあれば、昔話ではしゃぐ中年男が若者に見えてくるパートもあり、そこはリンクレーターらしい会話劇。でもやっぱり、今回のアンサンブル・ピースの基調は燻し銀の風格なのです。今後さらに円熟しそうな監督ですが、時々はまた若いキャストの魅力を引き出してほしい。

  • 90年代インディ出身監督として、P・T・アンダーソンやリンクレーター以上の人気を誇るのがウェス・アンダーソン。その箱庭的でスタイリッシュな感性は日本でも独自の位置を占めてきましたが、今回は舞台が日本! 犬が主人公のストップモーション・アニメ! ということで、日本向けの予告編ではややぼかしてありますが、本作はキュートなだけじゃない。犬たちは権力者による虚偽、プロパガンダによってゴミの島に捨てられるのです。その構造が日本古来受け継がれていることも暗示される。海外では日本風俗のカリカチュアから「ツーリスト映画」と揶揄されたりもしていますが、いやいや、美的なもの以上の深い理解を感じます。登場する犬たちも可愛いというより、シンプルで本能的で残酷なケンカもする動物、でも「信じるもの」には忠実な存在。彼らと12歳の少年アタリの冒険は、「メガ崎市」の人々の心を動かしていきます。それにしても、キャラクターから犬ヶ島の細部のすべてにやどる精巧なものづくり、そのこだわりは圧巻。和太鼓の鼓動がドライヴとなって、まるでサイレント・ムーヴィにあてた音楽のように物語の起伏を生んでいます。

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