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  • The System Only Dreams in Total Darkness The National by AKIHIRO AOYAMA May 19, 2017 1
  • Bad Liar Selena Gomez by AKIHIRO AOYAMA May 19, 2017 2
  • Immigrant Boogie Ghostpoet by AKIHIRO AOYAMA May 19, 2017 3
  • Bring It Back Lil Yachty by AKIHIRO AOYAMA May 19, 2017 4
  • Witness Benjamin Booker by AKIHIRO AOYAMA May 19, 2017 5
  • 2017年は、北米インディ・シーンにとって掛け値なしのビッグ・イヤーとなりそうだ。何しろ、2月早々にアルバムを上梓したダーティ・プロジェクターズを皮切りに、フリート・フォクシーズ、グリズリー・ベア、LCDサウンドシステム、MGMTと、2000年代後半以降のUSインディを牽引してきたトップ・ランナーたちがこぞって来たるべき新作を用意しているのだから。ここにまだ確定情報のないヴァンパイア・ウィークエンドやウォー・オン・ドラッグス、あるいはカナダにまで裾野を広げてブロークン・ソーシャル・シーンにアーケイド・ファイアといった面々を加えれば、その豪華さには思わず眩暈がするほど。これはただの偶然、というわけではなく、やはり昨今のアメリカの社会情勢と無関係ではないのだろう。そして、その中でも格別に素晴らしい新曲を引っ提げて、ニュー・アルバムのリリースを発表したのがザ・ナショナルだ。暗雲が立ち込める世相を映し出す、ダークでアトモスフェリックなトラック。何かに救いを求めるようなマット・バーニンガーの絶唱。2分過ぎには、以前まではほぼ登場しなかったギター・ソロが、闇を切り裂くような鋭さで鳴り響く。アメリカの良心はまだ死に絶えてはいない。

  • ここ数年の間、不甲斐ない男たちに取って代わるように、ポップ・ミュージック界をグイグイと牽引してきたフィメール・ポップ・スターたち。だが、近年はその勢いにも若干の陰りが見られた。変わりゆくシーンの動向と自身のアーティスト性のバランスを取って、活動を継続していくのもなかなかに大変なのだろう。最近公開された新曲をとっても、マイリー・サイラスの新曲“マリブ”は近年の奇行が嘘のように爽やかなアコースティック・ポップだけど、ウェルメイドに落ち着いた感は否めないし、ケイティ・ペリーの新曲“ボナペティ”は今もっともも勢いのあるミーゴスをフィーチャーして気合は十分でも、歌詞とヴィデオが悪趣味過ぎてゲンナリ。ただ、セレーナ・ゴメスのこの新曲は従来のイメージを崩さず、トレンドにただおもねることもなく、新しいアーティスト像を示した理想的な一曲と言っていいんじゃないか。トーキング・ヘッズ“サイコ・キラー”のベース・ラインをサンプリングした超ミニマルなサウンドと、初期のリリー・アレンを思わせる歌唱スタイルで、彼女の清廉なイメージがさらに新鮮かつ魅力的に。製作総指揮としてたずさわったドラマ『13の理由』も好評だし、今もっとも乗りに乗っている女性スターはセレーナ・ゴメスってことで間違いないでしょう。

  • イギリスには、勢いづくグライムのシーンとはまた違った文脈で、ラップ/ヒップホップを独自に解釈し言葉を紡ぐ詩人たちがいる。例えば、『T2 トレインスポッティング』でも重要な役割を担ったヤング・ファーザーズや、昨年傑作アルバムを上梓したケイト・テンペスト。そして、これまでにリリースした2枚のアルバムが両方ともマーキュリー・プライズにノミネートされた、このゴーストポエットもその系譜に位置するアーティストだ。彼が約2年振りに公開した新曲は、緊張感で張り詰めたトラックとヴォーカルが切迫した移民の心情を伝える、その名も「移民のブギー」。イギリスを二分したブレグジットの争点の一つであり、アメリカやヨーロッパ、中東でもっとも切迫した政治イシューとなっている移民問題を正面から扱ったこの曲は、今こそ耳を傾けるべき詩人の声だ。

  • リル・ヨッティは本当にブレない。いよいよリリースが間近に迫ったデビュー・アルバムのタイトルは『ティーンエイジ・エモーションズ』。自分のことを「キング・オブ・ティーンズ」「キング・オブ・ユース」と呼んでいた一連のミックステープから、一切ブレてない。いや、“ピーカブー”や“フォーエヴァー・ヤング”といったタイトルがトラックリストに並んでいるのを見ると、社会的なコミットメントよりも若さを謳歌したい、とにかく気持ち良い音楽を作りたいという姿勢は、アルバムでよりいっそう純化していそうだ。このリード・シングルも彼の快楽原理主義者っぷりを見事に伝える一曲。もはやトラップの面影すら一切なく、ひたすらドリーミーな音像が続くエレクトロ・ポップ。オートチューンもさらに強まって、これはもはやヒップホップですらなく、そこから派生した未知のジャンルなのではないかという気さえしてくる。

  • 〈サイン・マガジン〉でも2014年の年間ベスト・アルバム10位に選ばれていた、アメリカ南部の伝統を受け継ぐロックンロール詩人、ベンジャミン・ブッカー。この曲は、来たるべき2ndアルバムからの新曲。ガレージ・ロック、フォーク、ブルーズから、ゴスペルへ。短期間で作られたデビュー・アルバムのラフさから、製作にじっくり時間をかけたことが伺える厚みのあるゴージャスな演奏へ。驚きの変化というわけではなく、至極真っ当な2作目の方向性ではあるが、それだけにとても実直で、感動的な仕上がりだ。何より、デビュー・アルバムに続いて、彼の書くリリックが素晴らしい。「兄弟が死に、母が泣き、TVが嘘をつく/僕にはこの世界の全ての理が戯言にしか思えないんだ」。〈ブラック・ライヴズ・マター〉に共振する音楽は、何もヒップホップやR&Bだけじゃない。

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