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  • ベイビードライバー(2017) directed by Edgar Wright by MARI HAGIHARA July 22, 2017 1
  • スパイダーマン:ホームカミング(2017) directed by Jon Watts by MARI HAGIHARA July 22, 2017 2
  • オクジャ/okja(2017) directed by Bong Joon-ho by MARI HAGIHARA July 22, 2017 3
  • ツイン・ピークスThe return(2017) directed by David Lynch by MARI HAGIHARA July 22, 2017 4
  • オラファー・エリアソン視覚と知覚(2009) directed by Jacob Jørgensen, Henrik Lundø by MARI HAGIHARA July 22, 2017 5
  • ビート、スピード、キレとタメ。冒頭、ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョン“ベルボトム”に合わせてすべての動きが振り付けられたカーチェイス。この音と映像をエドガー・ライトが思い描いたのは22年前だそうです。そのアイデアをミント・ロワイヤル“ブルー・ソング”のMVで使ってしまったのは、本人的に忸怩たる思いだったとか。でもいまこうして、『アントマン』(2015)降板の失意の後、そのヴィジョンが晴れてハリウッド映画として結実。本作ではベイビーこと強盗団のドライバー(アンセル・エルゴート)が、耳鳴りを消すためつねにiPodで音楽を聴いています。その音楽が全シーンで流れ、カーチェイスだけでなく銃撃戦も、ベイビーが道を歩くのも恋を語るのもリズムとメロディと歌詞に同期している。その映画的な巧さ、ワクワク感は『ラ・ラ・ランド』以上かも。しかも、既存曲の権利を全部クリアしてから製作しているところにガチな情熱を感じます。これまでアイロニーいっぱいなオタク映画を撮ってきたエドガー・ライトが、ストレートに「映画のロマン」を実現した、ハートフェルトで痛快な一本。

  • 『ローガン』『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』『ワンダーウーマン』、そして本作と、スーパー・ヒーローものの当たりが続く2017年。とは言えこの4本は同ジャンルと言えないほど趣向も目指すところも違っていて、いちばんの王道が女性監督作『ワンダーウーマン』というのも面白い。そのなかで15歳のスーパー・ヒーローが主人公の『ホームカミング』は、『フェリスはある朝突然に』(1986)を思わせるハイスクール・ムーヴィです。三代目ピーター・パーカーとなるトム・ホランドは、前の二人と違いキャスト時に本物のティーンエイジャー。原作の設定にぐっと近づいたのに加え、マーベル・シネマティック・ユニバースにおけるリブートとして、話を繰り返さないですむアドヴァンテージがあります。ただそれを最大限活かし、フレッシュなスパイダーマン像を生んだのはジョン・ワッツ監督らのお手柄。アクション・シーンもNYの高層ビルの谷間を縫うだけでなく、平地や海上のフェリーなど、意外な場所で新しい動きをさせています。基調はギャグながら、15歳の少年の夢や悩みでいっぱいなカミング・オブ・エイジ・ストーリーは、キュートの一言。

  • 「劇場公開のない配信映画をコンペ候補にするのか?」で揺れた今年のカンヌ映画祭。その標的となりながら、ポン・ジュノ監督自身はそんなこととは関係なくさらに作品をスケールアップさせています。米企業が開発した巨大なスーパー・ピッグ、オクジャとともに韓国の山奥で育ったミジャ。この少女がNYに連れ去られたオクジャを追いかけ、過激な動物愛護団体も加わってスラップスティック的展開になるところは、『ほえる犬は噛まない』(2000)や『グエムル』(2006)を思わせます。食肉、企業倫理、理想と手段――といった社会的テーマがありながら、トーンはどこまでも人間臭く、コミカルで残酷。そして彼の他の作品同様、どんなに映画的スペクタクルになっても、最後には苦い思いとともに現実に放り出される感覚がある。少女と動物が主人公の本作にしても、彼らが暴力にさらされるときの生々しさは普通メジャー作では見られないもの。本気で辛かったです。でも、この器の大きさは、実際小さな画面で見るには惜しいほど。ティルダ・スウィントンやジェイク・ジレンホール、ポール・ダノらの怪演以上に、ミジャ役のアン・ソヒョンの表情から目が離せません。

  • 前回のプレイリストで、『アメリカン・ゴッズ』ドラマ化を「意味不明」なんて言ってすみません。というのも、わけのわからなさでは、デヴィッド・リンチはもう桁違い。甘く見ていました。25年ぶり、全18話を彼が監督する新シーズンでは、明らかに世界の狂いかたが増しています。現在海外で公開中のドキュメンタリー『ジ・アート・ライフ』で、『イレイザーヘッド』(1976)を撮りはじめた時からそのなかに棲みたくなった、と語っているリンチ。そんな彼と彼の世界には絶対にそこにしかない光景、法則、つながりがあるのです。今回のシリーズでも奇妙な人々の逸話の数々がそれぞれナナメ上に展開し、ネタバレさえ不可能。あらゆるディテールが分析を求めるところは、前シリーズが放映された1990~1991年当時よりSNSが発達した現在の方が合っているようでいて、そんなことでは太刀打ちできない。『ツイン・ピークス』は議論や解説を超え、ただただ存在しているのです。面白すぎる。ほぼ毎回終盤で町のクラブの場面となり、オー・ルヴォワール・シモーヌやシャロン・ヴァン・エッテンらのライヴ演奏でエンド・クレジットとなるのが新たな趣向。

  • テート・モダン美術館の広大なスペースに人工の太陽を作った2003年の『ザ・ウェザー・プロジェクト』。この大規模なインスタレーションは美術館の知名度を一気に上げ、大勢の人々が訪れ、ファイン・アートがポップ・カルチャーになるきっかけを生んだ作品でした。それを手がけたのがデンマーク生まれのアーティスト、オラファー・エリアソン。メディアにあまり出てこない彼のドキュメンタリーはそれだけで貴重ですが、彼はこの映画そのものを、観客に「主体として現実を作り出す」きっかけとして投げているのです。2008年の『ザ・ニューヨーク・シティ・ウォーターフォールズ』など大きなプロジェクトを抱え、スタッフとともに工場のようなアトリエで作業を進めるかたわら、創作活動について語るエリアソン。彼はまた、直接カメラに向かって視覚的な実験を行い、いま見えているもの、リアルだと思っているものがある転換で変わってしまうことを伝えようとします。個人的にはエリアソンがアーティストとしての「責任」を語り、見る人にも同じ責任をともなう「批評」を求め、だからこそ自分のアートはメインストリームなのだ、と言い切ったのが印象に残りました。

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