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  • 運び屋(2018) directed by Clint Eastwood by TSUYOSHI KIZU February 28, 2019 1
  • ブラック・クランズマン(2018) directed by Spike Lee by TSUYOSHI KIZU February 28, 2019 2
  • グリーンブック(2018) directed by Peter Farrelly by TSUYOSHI KIZU February 28, 2019 3
  • キリング・イヴ(2018-) directed by Phoebe Waller-Bridge by TSUYOSHI KIZU February 28, 2019 4
  • マイ・ブックショップ(2017) directed by Isabel Coixet by TSUYOSHI KIZU February 28, 2019 5
  • 僕たちもクリント・イーストウッドもわかっている。もうすぐ「終わり」が来ることを。『グラン・トリノ』以来の監督・主演作でイーストウッドが演じるのは、90歳を目前にしながら家族に愛想を尽かされている孤独な老人だ。ふとしたきっかけから麻薬の運び屋をやることになった彼は、取り返しのつかない人生の過ちと後悔を抱えながら、どうにかしてその贖罪を果たそうとする。顔にはいくつもの皺が刻まれ、声はかすれ、ゆっくりとしか歩けない――だが、けっして歩みを止めない。ある意味、イーストウッドが本作で語っているのはそれだけだ。その重さをしかし、イーストウッドはどうも重々しく描かない。主人公アールはそもそも「政治的正しさ」とは無縁な場所で、様々な人びとと交流し、軽口を叩いたり時折人生のアドバイスをしたりしながら、ただ仕事をこなすだけ。平然とした、しかし力強いショットをひとつひとつ積み重ねるだけ。いま、自分がやれることをやるだけ。形ばかりの「正しさ」が追いつかない地点で、最後までどうにかして正しく生きようとすること。この重さと軽さの美しいやりとりこそが映画なのだと、イーストウッドはこともなげに僕たちをいまも圧倒する。

  • ブラック・ライヴス・マター以降、あるいはトランプ以降にスパイク・リーがブラック・ムーヴィを放つ……という圧倒的な「文脈」の強固さに身構えてしまうひとも少なくないだろう。だが本作の肝はこれがスパイク・リーによるブラックスプロイテーションだということである。70年代のコロラド州で初の黒人警官になった青年が同僚の力を借りながら白人至上主義組織KKKに潜入捜査をしたという実話を、大胆に脚色しエンターテインメント化。ファンキーなノリとファッションと音楽でぶっちぎってみせる。ジョン・デヴィッド・ワシントンとアダム・ドライバーの黒人白人バディによるチームワークも、綿密というよりはわりとユルいムードで乗り切っていくのも面白い。そう、現実がクソであるからこそ、グルーヴィに駆け抜けなければならない。そういう意味ではラスト・シーンだけはどうしてもシリアスすぎるのだけど、いまのアメリカではそれぐらい言わないと伝わらないということだろう。

  • アカデミー賞作品賞を『ROMA/ローマ』ではなく本作が受賞したという事実は様々な分析が可能だと思うけれど、意地悪な言い方をすればある種の「安全さ」がここにはあって、異なる社会属性間の対立がこれだけ深まる現在に対する「ちょっとしたいい話、しかも実話」というのが大きいのだろう。興味深いのは、技巧派のピアニストであったドン・シャーリーは白人社会で成功している黒人であって、しかも同性愛者であったことでむしろブラック・コミュニティからは心情的に疎外されていた(ように描かれている)ことだ。だからこそ、当時としても白人との友情が可能だったのであろうと。そこは賛否両論ある。ただ、ヴィゴ・モーテンセンとマハーシャラ・アリのわかりやすい好演と軽いノリの脚本、対立や無理解を乗り越えるのは「いっしょに何かやることだ」というシンプルなメッセージを僕は嫌いになれない。特別すごい映画だとは言わないけれど、こうしたカジュアルな味わいがいまの時代に必要とされているのはたしか。

  • 昨年高く評価されたイギリス発サスペンス・ドラマ、WOWOWで放送が始まったので楽しく毎週観ています。ヨーロッパで暗躍する凄腕の女殺し屋ヴィラネル(ジョディ・カマー)を、ひょんなことからイギリスの諜報機関〈MI6〉のチームに加わった女性エージェントであるイヴ(サンドラ・オー)が追うというもの。あっけらかんと人間が死にまくるのをスタイリッシュに見せるのはいかにも英国発といった感じだが、どことなくオフビート感があるのが魅力。おそらく、エージェントというよりはわりとその辺にいそうな中年女性といった風情のサンドラ・オーの存在によるところが大きいのだと思う。満たされてはいるが退屈な日常からなんとなく抜け出したいと思っている彼女の像は、多くの女性にとって見覚えのあることではないだろうか。で、ヴィラネルにしろイヴにしろ主役を張るのは女性で、年上の初老男性がそれぞれのやり方でサポートするというのも、ありそうでなかった感があり現代的。今年4月には2ndシーズンが始まるそうだけど、ひとまず女ふたりの攻防のゆくえをハラハラ見守りたいと思います。

  • 1959年のイギリスの小さな町を舞台に、戦争で夫を亡くした女性フローレンス(エミリー・モーティマー)が小さな本屋を開店するも、町の保守的な有力者たちの妨害に遭うという受難を描く本作。ペネロピ・フィッツジェラルドの原作を『死ぬまでにしたい10のこと』(2003)のイザベル・コイシェが映画化したものだ。フローレンスをサポートする老人を英国紳士たるビル・ナイが演じているのだけれど、ふたりは『華氏451』といった名著によって共鳴する。つまり、ときとして社会秩序や規範を揺るがしかねないものとしての「本」を愛するということはある種の反社会的行為であって、ふたりの行動は本好きという名のマイノリティたちの共闘でもある。女性の自立の困難というテーマも現代に通じているが、そうしたことを殊更大げさにでなく、さらりと描く上品さが見事だ。孤独でか弱いわたしたちは、いつだって文学や音楽や映画、アートとカルチャーで繋がっていく。

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