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  • ゴッズ・オウン・カントリー(2017) directed by Francis Lee by TSUYOSHI KIZU July 06, 2018 1
  • バトル・オブ・セクシーズ(2017) directed by Valerie Faris & Jonathan Dayton by TSUYOSHI KIZU July 06, 2018 2
  • ジュラシック・ワールド/炎の王国(2018) directed by J.A. Bayona by TSUYOSHI KIZU July 06, 2018 3
  • セラヴィ!(2017) directed by Eric Toledano & Olivier Nakache by TSUYOSHI KIZU July 06, 2018 4
  • 菊とギロチン(2018) directed by Zeze Takahisa by TSUYOSHI KIZU July 06, 2018 5
  • ゲイ・テーマの映画としては2017年『君の名前で僕を呼んで』と双璧をなすとされた本作。いわく、「イギリス産『ブロークバック・マウンテン』」。ヨークシャーの寒々とした農村を舞台に、孤独な主人公がルーマニアの移民青年と出会って愛を育む様を静かに描いた作品……だそうだ。そう、じつは僕も未見なのだが、2018年の〈レインボー・リール東京〜東京国際レズビアン&ゲイ映画祭〜〉の目玉作品として公開されることが決まっている。これは見逃すわけにはいかないでしょう。ティーザーなどを見る限りでは、どうやら『ブロークバック・マウンテン』よりも親密な画面作りがありそうなのはモダンだと思えるし、ゲイ・ロマンスだけでなく移民というモチーフが横軸に入ってきているのはヨーロッパ映画として同時代性の高さが感じられる。インディペンデント系の映画賞を多数受賞した本作、贔屓目なしに『ウィークエンド』(11)以降の重要作のひとつであることは間違いない。寡黙な移民青年を演じるルーマニア俳優、アレック・セカレアヌの濃厚な男前ぶりも要注目ですぞ。

  • これもまた、いまの時代に出るべくして出たポップ作。1973年当時テニス界の女王であったビリー・ジーン・キングが、元世界チャンプのボビー・リッグスと前代未聞の男女対決を行った実話を基にしており、つまりフェミニズム再考の一本として数えられる。興味深いのは、「男性至上主義のブタ」を自称するリッグスを面倒だが憎めないオヤジとして描いているところ。彼を演じる芸達者なスティーヴ・カレルが最高にチャーミングだ。つまり、本当の敵はリッグスではなく、女子の賞金を男子の8分の1としても当然だと思っている男権的な組織のオヤジたちである……ということだ。ビリー・ジーンはそうした構造自体と闘ったのだ。また、のちにレズビアンをカミングアウトする彼女のセクシュアリティの発見を繊細に描いている点も現代的で、エマ・ストーンの丁寧な役作りにも好感が持てる。余談だが、今年のNYプライド・パレードにおいて、ビリー・ジーン・キングが現代の銃規制運動のシンボルとなっているエマ・ゴンザレスと並んで笑顔を見せている姿はなんとも感慨深いものがあった。

  • ジュラシック・シリーズ25周年ということで、今年の夏休み映画と言えばやはりこれでしょうか。アメリカではすでに大ヒットを記録しているそうだ。新3部作の2作目にあたる本作は、前作の3年後という設定で、滅びゆく島に取り残された恐竜たちを救うためにオーウェン(クリス・プラット)やクレア(ブライス・ダラス・ハワード)が奔走する。ジュラシック・シリーズらしい「テクノロジーの進歩はどこまで許されるのか? その倫理とは?」という問いかけもきちんと引き継いでいる。いっぽうで本作の特徴は、監督が『永遠のこどもたち』(07)や『怪物はささやく』(16)で知られるJ・A・バヨナだからなのか、一番の見せどころをホラー/ダーク・ファンタジー風の演出にしている点だ。どこか子どもが見ている悪夢のようでもあり、ジャンル映画が培った豊かな息吹が感じられる。まあでも、新3部作は“恐竜使い”クリス・プラットが元気よく走りまわっている可愛らしさを見ているだけで満足なんだけど。

  • フランスで記録的なヒットを飛ばした『最強のふたり』(11)は、いっぽうで人種問題をステレオタイプに落としこんでいるとして批判の対象にもなった。エリック・トレダノ&オリヴィエ・ナカシュの監督コンビはその経験を鑑みたのだろう、もう少し繊細に移民問題に触れた『サンバ』(14)を経て、本作でフランスにおける多様な人間で構成される集団を描いている。ある豪勢な結婚式を執り行うために集まったウェディング・プランナー・チームだが、アクが強く主張の激しいメンバーばかりで式はトラブル続き……というややスラップスティックなコメディである。全体の和よりも個人の要求ばかりが先立つスタッフたちの姿はフランスの国民性を戯画化したものだろうが、様々な人間たちがぶつかり合いながら何だかんだでひとつの目的を達成する様は微笑ましいし、そこでキーになるのが移民のスタッフだというのも効いている。サッカーW杯でもフランスは移民や2世が多いことで話題だが、それがいま、かの国が目指す「チーム」ということなのだろう。

  • ついこの間も『友罪』の公開があったばかり、勢いの止まらない瀬々敬久監督だが、本作は構想30年の悲願が叶った作品だという。3時間を超える大作である。大正末期、関東大震災直後の日本で女相撲に身を投じた女力士たちと、アナキスト集団である〈ギロチン社〉の若者たちの出会いを軸として、必死に生きた彼らの姿を群像的に描き出していく。女性への暴力、貧富の差や朝鮮人への差別をモチーフとしながら、「強くなりたい」と歯を食いしばる者たちの生のエネルギーを立ち上げていく。登場人物たちの魂の叫びを収めるような生々しさは、4時間半を超える超大作『ヘヴンズ ストーリー』(10)をどうしたって思い出してしまう。そこでわたしたちは、深い悲しみと底のない苦しみの渦中にあってなお、どうにか生きようとする人間の業と本質的な生命力を目の当たりにするのだ。

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