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  • ザ・ビートルズ:Get Back(2021) directed by Peter Jackson by MARI HAGIHARA December 09, 2021 1
  • ヴェルヴェット・アンダーグラウンド(2021) directed by Todd Haynes by MARI HAGIHARA December 09, 2021 2
  • ザ・ユナイテッド・ステイツvsビリー・ホリデイ(2021) directed by Lee Louis Daniels by MARI HAGIHARA December 09, 2021 3
  • ヴォイス・オブ・ラブ(2020) directed by Valérie Lemercier by MARI HAGIHARA December 09, 2021 4
  • 偶然と想像(2021) directed by Ryusuke Hamaguchi by MARI HAGIHARA December 09, 2021 5
  • あえておすすめするまでもない話題作。ただ、当たり前にビートルズの音楽が存在する世代にも、私のような門外漢にも、面白く見どころの多いドキュメンタリーになっています。何せ誰でも知っている曲が無から形になっていく瞬間、バンドというクリエイティヴ・プロセスがまざまざと映されている。映画『レット・イット・ビー』の素材として残っていた57時間の映像、150時間の音声を3エピソード、計468分に編集したのはピーター・ジャクソン監督。『ゼイ・シャル・ノット・グロウ・オールド』(2018)で第一次世界大戦の兵士たちを甦らせた復元技術を使って、映像だけでなく、これまで他の音に埋もれていた会話など音声もAIによって復元したとか。そんな技術が「物語を作る」危険性も感じつつ、すでに方向性の違いは明らかなのに、それに抗ってセッションを続ける4人の描写には見入ってしまう。長時間退屈しないのは、やっぱりピーター・ジャクソンの編集力、物語力でもあるのです。いきなり誰かが「ゾーン」に入ったり、口論の末妥協したり、偶然をプロセスに取り込んだり、環境を整えたり。小さなディテールと大きな流れがリンクしている。家族や他の仕事とのワークバランスも見えてくる。私は案外お仕事映画として見ました。服やティーカップ、当時の風俗も興味深く、無駄なものなし。メディア主導で作られたビートルズ神話を覆し(ヨーコがバンドを解散させたって?)、生き生きした姿を楽しめるシリーズ。最後のルーフトップ・ライヴがめちゃかっこいいです。

  • ビートルズに話題が集中しがちですが、トッド・ヘインズ監督によるヴェルヴェット・アンダーグラウンドのドキュメンタリーも配信されています。ここでテーマとなるのは、活動期にはカルトにすぎなかったバンドが、時間と場所を超えて影響力を持つことになった理由。そして彼らを生んだ60年代のNYアート・シーン、そのエコシステムです。ライヴ映像があまり残っていないのを逆手に取って、ヘインズはウォーホルの映像や当事者の証言、60年代の風俗をコラージュしながら、前衛的かつ包括的にヴェルヴェッツを描いていく。まるでヴィデオ・インスタレーションです。影響力とともに、ヒッピーを嫌い、60年代メインストリームのカウンターとなって、それがパンクへ継承される流れも描かれる。黒しか着ないバンドが西海岸に降り立ち、浮きまくるエピソードに笑ってしまいます。生き証人として話すモー・タッカーとジョン・ケールの変わらない孤高のアーティスト像もいい。基本的には暗くダウナーななか、ジョナサン・リッチマンのファンボーイぶりがキラキラしています。見終わるとすぐ、ヴェルヴェッツのレコードをかけたくなる一作。

  • 公開はまだ先ですが、最近次々と公開される音楽ドキュメンタリー、アーティスト伝記ものにおいてかなり異色なのがこれ。『プレシャス』(2009)のリー・ダニエルズ監督は黒人ジャズ・シンガー、ビリー・ホリデイの壮絶な闘いと人生を描くため、彼女と連邦捜査官とのロマンスを縦軸にしているのです。その部分はおそらく限りなくフィクションに近いので、海外公開時には問題視もされたよう。とはいえ、そのストーリーラインがビリー・ホリデイという女性の複雑さ、連邦局の執拗さをドラマティックに強調するのも事実。40年代、政府は公民権運動の芽とジャズ・クラブの隆盛を潰そうとし、ビリー・ホリデイはリンチされて死んだ黒人の歌“奇妙な果実”を歌いつづけようとしています。一方彼女は夫やマネージャーに搾取され、虐待され、ドラッグに溺れながら、それによってシンガーとしての凄みを増し、大いなる人気を獲得する。とにかく、この難役を演じたアンドラ・デイを讃えるしかありません。ステージでのパフォーマンスも圧巻。相手役は『ムーンライト』(2016)のトレヴァンテ・ローズです。

  • こちらは堂々と「事実をモデルにしたフィクション」と但し書きされた、セリーヌ・ディオンのライフストーリー。創作の自由を確保するため、役名はアリーヌ・デューとされています。「それ面白いの?」と思う人がいるかもしれませんが、監督・脚本・主演のヴァレリー・ルメルシエの情熱と愛が詰まっていて、どうしたって引き込まれてしまうのです。実際、私もセリーヌが子どもの頃からのマネージャーで、何倍も年上の男性と結婚したことを「ええーっ」と思っていたひとりながら、まれに見る純愛物語として楽しんでしまいました。プライベートな部分だけでなく、容赦ないツアーの楽屋風景や“マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン”でアカデミー賞授賞式に出演した際の裏話など、歌手としてのリアルな日常も伝わってくる。キッチュで感動的な人生、それを涙と笑いと華やかなパフォーマンスでつづる、大いなるオマージュ映画です。

  • 『ドライブ・マイ・カー』(2021)の濱口竜介監督による三つの短編集。こういう会話劇を日本映画で見られた! という驚きと喜びがあります。カフェや駅前など見慣れた場所で、ちょっとロメールを思い出すような、深く鋭い会話が交わされるのですから。偶然の出会いや過ちが人生を大きく変える——その瞬間が自然な言葉と表情、振る舞いで表現されていく。俳優にとっても演じがいがあるのでは。恋愛、復讐、後悔、償いなど大きなターニング・ポイントになるようなことが、日常の小さな出会いによって引き出されていきます。特に第三話の意外すぎる展開にぐっときました。出演に古川琴音、渋川清彦、占部房子他。

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