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  • ペイン・アンド・グローリー(2019) directed by Pedro Almodóvar by MARI HAGIHARA June 09, 2020 1
  • 未成年(2019) directed by Kim Yun-seok by MARI HAGIHARA June 09, 2020 2
  • ホームカミング シーズン2 (2020) created by Eli Horowitz and Micah Bloomberg by MARI HAGIHARA June 09, 2020 3
  • コリーニ事件(2019) directed by Marco Kreuzpaintner by MARI HAGIHARA June 09, 2020 4
  • SKIN/スキン(2018) directed by Guy Nattiv by MARI HAGIHARA June 09, 2020 5
  • 『神経衰弱ぎりぎりの女たち』(87)を映画館で観て、友だちと「ナニコレ!」と言い合ってから早30年。老境にさしかかったペドロ・アルモドヴァルによる自伝的作品は、初期の頃と同じユーモアと熱くたぎる欲望を底に持ちながら、老いて萎れ、死に、それでも生き返る人の思いをめぐる物語となりました。70歳の映画監督サルバドール(アントニオ・バンデラス)は体調が悪く、母が死んでからは鬱気味。ところが昔の作品の再上映のため主演俳優アルベルトと顔を合わせたことで、少しずつ状況が動きます。アルベルトが持っていたヘロインに手を出し、彼が覗き見た創作メモを舞台化するのにしぶしぶ同意し、その舞台を通じて昔の恋人と再会。その合間に、少年時代に住んでいた洞窟の家や母の思い出、ある青年との交流が挟まれる。美しくスケッチされた逸話はやがて一つになり、怒涛のカタルシスを迎え、情熱がよみがえる実感が描かれます。これぞメロドラマ。サルバドールが体調について延々語る、一見不必要な場面に共感してしまう自分にも、あれから30年経った観客を発見しました。男たちのとんでもなくセクシーなキスシーンもあり。それにしても、ソレンティーノの『グレート・ビューティー』(2013)同様、老いてからハード・ドラッグを始める描写には桁違いなラテンの欲望を感じてしまう。

  • 俳優キム・ユンソクが初めて長編映画を監督。ちょっと意外だったのは、それが二組の母娘の細やかな感情の物語だったこと。不倫する夫/父をキム・ユンソク自身が演じ、とぼけただらしなさでその間を行き来します。腹を立てる妻、彼をつなぎ止めようとする愛人。そのとばっちりを受ける二人の高校生、ジュナとユリ(キム・ヘジュンとパク・セジン)がぐいぐいと物語を動かしていく。大人と違って、彼女たちは感情と行動が直結しているのです。ただその感情は相手の感情とぶつかるだけでなく、寄り添い、溶け合い、思わぬ方向に向かっていく。その予測のつかなさが、面白さと優しさを引きだします。大人たちの勝手を背負わされる未成年の少女たちと、新しい命。出てくる全員の演技のニュアンスを楽しめるのは韓国映画の強みです。やっと公開される『はちどり』とともに観たい。

  • 以前レヴューしたシーズン1を見ていないと楽しめないので、ちょっと紹介を迷うのですが。それでも、ジャネール・モネイとホン・チャウの主演二人によって革新されたところを見てほしい。思うに『キリング・イヴ』を含め、どんどん女性がスパイものや陰謀ミステリ、古典的なエンタメの顔を変えています。『ホームカミング』シーズン1は記憶をなくす薬を兵士に服用させ、トラウマを消す実験の話。もともとポッドキャストとして製作されたものの映像化という点と、クリエイターを務めた『MR. ROBOT / ミスター・ロボット』のサム・イスマイルのけれん味が見どころでした。シーズン2ではジャネール・モネイ演じるアレックスがふと気づくと、湖のボートの上でひとりきり。彼女は記憶をなくし、腕には空軍のタトゥーが。アレックスが状況を探る一方、ガイスト社による発見の米軍利用が進み……と前シーズン同様、謎解きの要素たっぷり。主要人物が皆「自分は何者か?」を問うのも同じです。ただ、記憶の欠如がより大きなインパクトを持つのが新シーズン。アレックスの拭えない不安をジャネルが好演し、ガイスト社の受付係だったホン・チャウがのし上がっていく姿もかっこいい。このドラマでアイデンティティを探すのは皆、マイノリティの人々です。

  • ドイツの司法スキャンダルを下敷きにしたミステリ小説の映画化。戦後ドイツで多くのナチス戦犯が罪に問われなかった理由は、膨大な法改正案の中に埋め込まれた数行だった——と、どこかで聞いたことがあるような話。ただ、それによって現実にはどんなことが起こりえたのか、それが人々の人生をどう変えるのかが重層的でダイナミックなストーリーになっています。トルコ系の新米弁護士が初めて担当することになったのは、イタリアからの移民労働者が大物実業家を殺した事件。ただ、その理由がわからない。調べるうち弁護士は過去へと遡ることになります。つねに歴史とともにあるドイツ社会は、日本の写し鏡。法廷サスペンスとしての緻密な面白さは、原作者シーラッハが刑事事件弁護士であるのが大きい。しかも彼がナチス高官の孫として生きてきた経験も反映されていると聞くと、俄然興味深くなります。6月は『お名前はアドルフ?』と本作、二本のドイツ映画が掘り出しもの。

  • 一連のブラック・ライヴズ・マターのニュースを見ながらふと気になったのは、英語の「イシュー」と「プロブレム」を両方「問題」と訳してしまうのは、それこそ問題なんじゃないかということ。黒人の「イシュー」に対しては自分(たち)の問題に引きつけず、あくまで固有の歴史や背景を理解するのが重要な一方、差別の「プロブレム」は自分(たち)の問題として直面しなくてはいけないのでは、と思ったのです。同じ言葉でも態度を変えなければ、と。本作はある白人至上主義者の男が全身のタトゥーを消すまでの実話。大きな痛みを伴い、長い時間がかかり、それでも消えないものもある。その生々しさをジェイミー・ベルが熱演しています。監督はイスラエル出身でホロコースト生存者の孫でもあるガイ・ナティーヴ。彼がこの映画を製作するために撮った同名の短編(オスカーでは編賞を受賞)も同時上映されますが、実はこっちがすごい。生まれながらの貧しさ、暴力、差別を人は超えられるのか、超えられないのかを突きつけてきます。

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