チルウェイヴ・オリジナル世代の二大巨頭を挙げるとすれば、やはりウォッシュド・アウトとトロ・イ・モアだろう。だが黎明期から約3年、今や彼らはそれぞれ全く異なる道を歩み始めている。
2nd『パラコズム』で危険なほどに甘美な白昼夢の王国を築き上げたウォッシュド・アウトが目指しているのは、おそらくチルウェイヴの逃避主義を徹底的に突き詰めていくこと。一方のトロ・イ・モアは、アーバン&メロウな感触を更に強めつつ、より洗練されて開かれたポップ・サウンドへと向かっている。特に3rd『エニシング・イン・リターン』では、リヴァーブの霧をほぼ完全に晴らし、臆することなく前に出ることを決意した感じさえある。もうチルウェイヴとかインディとか、そういう細かいタームには捉われることなく、「ポップ」を本気で目指し始めた、とでもいうか。もっとも、音楽的には背筋がシャキッとして「プロフェッショナル」になりつつあるのに、実際の彼は相変わらずナード気質のナヨナヨとした佇まいなので、そのアンバランスが微笑ましくもあるのだけど。
さて、そんなトロ・イ・モアの来日公演が決定した。来年2月6日(木)に渋谷クラブクアトロとだいぶ先の話だが、念願の初単独来日ということで嬉しい人も多いのでは? チルウェイヴを超えてポップへと向かっている、現在の彼の雄姿を観に行こう!