トム・ヨークも認める才能――というのは、よく見かける宣伝文句のひとつですが、なんだかあまりにも乱発され過ぎじゃないでしょうか。確かに彼の嗅覚は鋭い。ただ耳が早いだけというよりは、誰もが見過ごしていた才能をフックアップするセンスも持ち合わせている。でも、彼のオフィス・チャートに入ったアーティストが全部、「トム・ヨーク絶賛!」で売り出されてしまっては、そのありがたみも薄れてしまうってものです。乱用禁止!
と、いきなり愚痴っぽい始まりですが、このアクトレスも、そんな「トム・ヨーク絶賛!」というキャッチフレーズをよく付けられるアーティストの一人。実際、トムもご執心だったはず。でも、アクトレスはDRCミュージックにも参加していたから「デーモン・アルバーンお墨付き!」でもあるわけだし、前作『R.I.P.』がクラブ系ウェブ・メディアの権威『レジデント・アドヴァイザー(RA)』で年間ベスト2位に選ばれたのだから、「RA絶賛!」だっていいんです。彼が手掛けたパンダ・ベア“サーファーズ・ヒム”のリミックスもヒットしたので、「アニコレ御用達!」だって構わないでしょう。ちなみに、パンダ・ベアのリミックスを聴いたことない人は、本当に素晴らしいので要チェックです。
それにしても、いわゆるポスト・ダブステップの文脈から浮上したアーティストの中で、これほど挙ってテイスト・メイカーたちから愛されているのは、そんなに見かけるものではありません。ジェイムス・ブレイク、マウント・キンビー、ブリアル――そして、このアクトレス、といったところではないでしょうか。そう、彼は密かな人気者なのです。
そんなアクトレスことダレン・J・カニンガムが、ニュー・アルバム『ゲットーヴィル』を2014年1月1日にリリースします。そのタイトルが指し示す通り、本作は2004年の1st『ヘイジーヴィル』と対になる作品。しかも、レーベルの公式サイトには、アクトレス名義での最終作であることを示唆するような本人のメッセージも掲載。思わせぶりです、気になります。その真意のほどは定かではありませんが、前作にも引けを取らない音響彫刻となっている本作からは、ある種の凄味のようなものさえ感じられるのは確かでしょう。
また、『ゲットーヴィル』のリリースに際し、入手困難だった『ヘイジーヴィル』もリマスターされて同時発売。どちらも海外より大幅な先行リリースとなるので、お年玉で2枚とも国内盤を手に入れることをお勧めします。
では最後に、『ヘイジーヴィル』から一曲、“レディット・124”をどうぞ。そして1月1日をお楽しみに!