SIGN OF THE DAY

2014年 年間ベスト・アルバム
11位~20位
by all the staff and contributing writers December 23, 2014
2014年 年間ベスト・アルバム <br />
11位~20位

20. Ty Segall / Manipulator

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ローカル・シーンを代表するガレージ狂だったセガールが、今や〈モジョ〉、〈アンカット〉のような英老舗メディアにおいても「シンガー・ソングライター」として確かな評価を得ている現状には、やはり感慨を禁じ得ない。そういう意味では、ニール・ヤングやトム・ウェイツのレコードに育まれたリリシズムを発露させた昨年のアコースティック作『スリーパー』が大きかったのだろう。転じて、その反動的なファズ名義のデビュー・アルバムを挟んでリリースされたこの最新作は、〈ドラッグ・シティ〉と契約した近作以降のソング・オリエンテッドな作風を引き継ぎながらも、アレンジを練り上げ演奏の幅と厚みをプログレッシヴに押し広げた重量感ある仕上がりに。多作を誇るセガールが、これまでで最長の制作時間を費やしたというのも頷ける、どこか集大成的な密度の高さ。サポートを務めたバンドの面子に、マイカル・クローニンを始め地元の盟友オールスターズを揃えたのもデカい。(天井潤之介)

19. Swans / To Be Kind

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まさかスワンズが再結成してソニック・ユースが活動休止する状況が来るなんて。そうサーストン・ムーアに直接話したら苦笑いされてしまった。もっとも、ジラにすれば「奴らはモンキーズで、俺はジミヘン」だそうだが……しかし。結局のところ、現在のUSアンダーグラウンドの活況も、いや2000年代のフリー・フォークさえも、スワンズの掌で踊らされていただけではないのか。再結成後三作目となる本作がそのキャリアを総覧的に再提示する音楽的蓄積は、それだけ巨大で、深遠極まりない。二枚組2時間越えという容量に加えて、ライヴで楽曲を練り上げた前作『ザ・シアー』に対し、ライヴ・セットそのものをレコーディングに持ち込む荒業も試みた本作は、スワンズ史上に残るモノリスティックで重厚長大な代物。けれど自家中毒に陥ることなく、緊張感を持続させた作品トータルの完成度に、今年数々の傑作を送り出したジョン・コングルトンのプロデュース・ワークが光る。(天井潤之介)

18. Sleaford Mods / Divide and Exit

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被支配層同士を対立させることで彼らの目を大局から逸らす政治的戦略「Divide & Rule(分割統治)」により、歪んだ格差社会への批判とそれに比例して台頭する反動保守潮流に割れる現イギリス。分割された上に「一抜けた」と見捨てられた(exit)底辺を鮮明に映し出す本作で、メンバーは40代/キャリア8年近いこのデュオの舌鋒ににわかに注目が集まっているのも不思議はない。英北部ポスト・パンクのシュールな知性(ザ・フォール)、UKストリート詩人のブラック・ユーモア(ジョン・クーパー・クラーク、ザ・ストリーツ)をミックスした音楽性はクセ=地方訛りが強いとはいえ、ベーシックなDAWと紙&ペンさえあれば作れる徹底的に安上がりなプロダクションと、対照的に綿密極まりない日常観察に基づくモダン・ライフの諸相への軽蔑/風刺の数々は、サイレント・マジョリティの溜飲を下げる。「でも“半径5メートル”が射程距離のイギリス社会の皮肉でしょ、分かんないよ~」とスルーするなかれ――グローバリゼイションは狂気や絶望、失望をも世界共通言語にしているので。(坂本麻里子)

17. Kindness / Otherness

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前作で聴かせた(ワシントンD.C.発の)ゴーゴーにヒントを得たサウンドの抽出度を上げるような形で、例えば、本作で不思議なこだわりを見せているカウベルを鳴らしながら歌うファンクひとつとっても、(カウベルが不可欠な)ゴーゴーからだけでなく、実際にファンク・バンド、スレイヴの作品に1979年に関わり、彼らを一回り大きな存在にしたジミー・ダグラスをサウンド・エンジニアに招くことで、かつて彼と彼らで作り上げた“アー・ユー・レディ・フォー・ラヴ”のプロダクションから、カインドネスなりのアイデアがうまく引き出されている。今年は、エンポリオ・アルマーニ絡みで来日したこともあり、ファッショナブルなイメージの人なのかもしれないが、センスのある音楽家としては、ファンク特有のいなたさが大好物なのに違いない。(小林雅明)

16. Flying Lotus / You’re Dead!

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死を主題に掲げているという意味では、『コスモグランマ』と同じ。ここまで前面に押し出すとは思いも寄らなかったものの、ジャズが通奏低音として流れているのも、やはり『コスモグランマ』と共通している。そして、ただの断片でしかない曲がパズルのピースのように組み合わさっていき、アルバム一枚を通して壮大なスピリチュアル・ジャーニーを創出する点に関しては、最早言わずもがな。要するに、本作は乱暴に位置づければ『コスモグランマ』のジャズ・ヴァージョン。ではあるのだが、それでも強い既視感でうんざりさせるどころか、むしろ未知の世界に猛スピードで連れて行かれるような衝撃を聴き手に与えられる点に、本作のすごさがある。鍵となっているのは、プレゼンテーションの巧みさ。とりわけ、冒頭5曲の息もつかせず畳み掛ける勢いか(そこも『コスモグランマ』と同じなのだが!)。衝撃の問題作というよりは、手堅さと上手さが光る安定の大傑作。(小林祥晴)

15. Taylor Swift / 1989

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例えば映画だとグザヴィエ・ドラン、テレビだとリナ・ダナムが絶賛されるのに、なんでテイラーは違うんでしょう。みんな「知ってることを書く」という基本に忠実な、優れた作家なのに。やっぱり音楽はヒップスター構造が強いのか。まあ、それももういいんです。テイラーがヒップスターを揶揄したのは前作『レッド』で、今は『1989』ですから。しかも、大胆なエレポップの導入が示す通り、これは「変わること」についてのアルバム。恋してないと幸せじゃないと思ってた女の子が、そうじゃないと気づくスリルについて。「私は止まれないし止まらない/“大丈夫”って音楽が頭の中で鳴ってるみたいに」(“シェイク・イット・オフ”)。過去の失敗があってこそ今を肯定できるという発見が、笑いとともに語られるのです。だから明日には明日の失敗や後悔があっても“大丈夫”。自分というストーリーにとことん意識的な作家、テイラーにはロードはじめ心強い仲間も生まれているのですが、それについてはまた改めて。(萩原麻理)

14. Arca / Xen

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アルカの音楽について、ポスト・インターネットなる術語を使って語ろうとする際に、注意しなければならないのは、かつて彼がヌウロ名義で、ムンバトンやレゲトンやタラーショを演り、ネット上で、ある種アイドル的な人気を獲得してからほどなくして、ヌウロとしては、オンライン上から忽然と姿を消した、という事実があることだ。本作における、無軌道さや狂暴さは、彼が幼年時代からレッスンを受けていたクラシック音楽、あるいはネットでの人気時代のタラーショといった、彼の身体の内側にいつの間にか蓄えられていたものが、むしろ、ネットや外部からの雑音を完全に遮断することで、表出してしまったものであり、そこが、面白さなのではないだろうか。そして、表題となり、ジャケにも姿を晒したゼンなるキャラの造形を手掛けたジェシー・カンダによるヴィジュアル・デザインとの合体が、作品としての、真の完成形なのかもしれない。(小林雅明)

13. Sun Kil Moon / Benji

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バンドを捨て、エレキをナイロン弦に持ち替え、詩的な暗喩を遠ざけ、各種コラボにトライ……と、25年にわたって変遷の回廊を緩やかに進んできたマーク・コズレク。恋愛という名の亡霊への若きオブセッション、侘び寂びに富んだ優れたキャラクター・ソングといった数々のフェーズを経て、近年その視線は自己=中年男の嬉しくない現実に向かっている。旅芸人の孤独に肉体の衰え、若さへの嫉妬や自嘲のユーモアをあけすけに綴ってきたソウル・サーチングは、“カリッサ”に歌われる従姉妹の悲劇を契機に家族=ルーツを再訪する経験を反映した本作にいくつもの死と世の無情/無常を描くと共に、そこで許された小さな灯り(家族や同胞への愛情)への感謝という胸打つ情感を導き出す。「私小説」と評されながらも実は主演俳優と脚本家を演じ分けてきたマークが、その微妙なバランスをソリッドな楽曲&プロダクションの客観性とエッセンシャルな言葉=主観とで統合した、作家主義の勝利を思わせる一枚。(坂本麻里子)

12. Ariel Pink / Pom Pom

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度重なる失言から音楽以外の部分に注目が集まってしまったことは忘れてしまっていい。本作は今年リリースされたロックのなかでもっとも実験的で、なおかつもっともポップな作品のひとつだ。レーベルが苦し紛れに“カーニバル・ダブ・サイケデリア”と名付けたトリッキー過ぎる楽曲のオンパレードは、ペイズリー・アンダーグラウンドに影響を受けたプリンスの傑作『アラウンド・ワールド・イン・ア・デイ』のよう。世間を煙に巻くその姿は、アルバム中5曲を共作した伝説のプロデューサー、キム・フォウリーにも重なるが、その2人がタッグを組んだことで悪ノリはエスカレートし、幼児性スレスレとも言える悪趣味ポップが炸裂している。あまりの毒気にあてられる人も多そうだが、本作の収録曲をいち早くカヴァーしたアジーリア・バンクスの言葉を借りるなら、「皮肉が効きすぎていて、みんなから馬鹿だと思われているぐらいが一番」なのだ。(清水祐也)

11. Julian Casablancas + The Voidz / Tyranny

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ルー・リードがロックンロールから前衛音楽に飛躍した『メタル・マシーン・ミュージック』以来の踏み絵アルバム、とまで評された2014年きっての問題作。ストロークスの鋭利なクールさをロック博物館「00年代コーナー」にフリーズさせておきたい向きは多いが、そうした世代の声としての重さや期待のくびきはチップチューンと機械油と砂利まみれな本作のサイバーパンク・サウンドの前で木っ端みじんになる。痛快である。かといって傍若無人な自己満足音楽ではなく、ぎりぎりのところで維持されたメロディックなフォルムを抽象的なノイズや厚い音のクラスターに大胆にぶつけることで新たなポップを生み出している。そのレストレスな野心は、彼のクリエイターとしての再燃に他ならない。ストロークスには昔からルースターズがだぶるが、本作はジュリアンにとっての“ニュールンベルグでささやいて”ではないかと思う。だとしたら時代の狂気とパラノイア、もっと突き詰めてほしい。(坂本麻里子)




「2014年 年間ベスト・アルバム 6位~10位」
はこちら。


「2014年 年間ベスト・アルバム50」
はこちら。

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