SIGN OF THE DAY

2014年 年間ベスト・アルバム
21位~30位
by all the staff and contributing writers December 23, 2014
2014年 年間ベスト・アルバム <br />
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30. Christopher Owens / A New Testament

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男なら、誰でも一度はカウボーイになってみたい。それは別にテンガロン・ハットにウェスタン・ブーツというファッションに憧れるということではなく、都会のしがらみを離れ、誰にも頼らず荒野で生きていくというその姿に、ロマンを感じるからなのだろう。そして本作収録曲のヴィデオでカウボーイに扮していたクリストファー・オウエンスも、おそらくそのひとりだ。彼がガールズ在籍時から書き溜めていたという楽曲を集めたこのアルバム、“新約聖書”を意味するタイトルや参加ミュージシャンの顔ぶれから、ガールズの2nd『ファーザー、サン、ホーリー・ゴースト』を連想する人も多かったと思うが、実際にはそれ以前のミニ・アルバム『ブロークン・ドリームズ・クラブ』を思わせる、カントリー・タッチの小品だ。時代遅れと罵られようが、メロディという拳銃だけを腰にぶら下げ、破れた夢を追い続けるクリストファーに最大級の敬意を表したい。(清水祐也)

29. Perfume Genius / Too Bright

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ピアノを相手に赤裸々な私小説を震え声で紡ぐパフューム・ジーニアスの音楽には、告解室に立ち会う感覚がある。そのインティメイトさは(窃視型のタブーと共に)前二枚を通じて内気な魂たちを惹きつけてきたが、本3rdで新たに転生したディーヴァが祭壇に躍り出た。契機は共同プロデューサー、エイドリアン・アトリー(ポーティスヘッド)、ジョン・パリッシュ(PJハーヴェイ)といった懐深い英前衛勢の参加で、白い細腕を突き上げる劇的なゲイ・アンセムからプレスリーのリアレンジ、霊歌の美、アブストラクトな夢想等々、ワイルドなアイデアを好サポート。エレクトリックにブーストされたサウンドが単なる新奇さ狙いではなく、「部外者」として抑圧され続けてきたマイク・ハドレアスの怒りを解き放つ有機的な管脈になっているのも素晴らしい。今年“レット・イット・ゴー”を無邪気に歌い上げた子供たちが、いつか本作収録の“クィーン”に埋め込まれた底無しの悲しみに気づいてくれたら、と思う。(坂本麻里子)

28. Royal Blood / Royal Blood

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ブリット・アワードでわざわざ「ロックンロールは死なない」と発言したアレックス・ターナーのスピーチにも象徴されるように、英国では今年も、数年来続く「ロックは死んだのか」という議論が相変わらず盛んだった。あぁ、つまらない。そんな退屈な話は、いい加減このアルバムを聴いて終わりにしてくれ。ブライトン出身の新鋭デュオ、ロイヤル・ブラッドは、2000年代UKインディの残滓といった印象がいまだ抜け切れない多くの若手を尻目に、鈍色に磨き上げられた大文字のロック・サウンドによって、英国メインストリームにどでかい楔を打ち込んだ。ミューズやホワイト・ストライプスを筆頭に、彼らのデビュー作には多くの先達からの直接的な影響が反映されているが、中でも大きな意味を持って見えるのは、ヘヴィなファンクネスを身にまとった現在のアークティック・モンキーズの姿。過去ではなく、今の彼らの背中を追いかける若者がようやく現れたのだ。(青山晃大)

27. Caribou / Our Love

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太いビートは、かぶさる身体の重さ。サイケデリックなサウンドに溶け込むファルセットは、白い布にくるまれた吐息か。ここまで濃密に官能を掘り下げたエレクトロニック・ミュージック作品もなかなかないだろう。とにかく封じ込められたエモーションが特濃だ。その渦中で抗えずに染みでていくように、過ぎた場所からがむしゃらにたぐりよせるように、求めの声が狂い咲いている。そうしたダン・スナイスの臆することなき語り口を前に、聴き手も自らの経験と向き合うことになる。“キャント・ドゥ・ウィズアウト・ユー”の冒頭1分半。ワン・ループの声と裏拍のスネア、わずかな上モノのみという、音的には隙間だらけにもかかわらず、少しの身動きもためらうほどの緊張感が走っている。まるで真正面から問われているかのようなのだ。「お前は本気で誰かを愛したことがあるのか?」と。(田中亮太)

26. Chet Faker / Built On Glass

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2000年代のオーストラリアを代表するレーベルが〈モジュラー〉だったとすれば、2010年代のそれは〈フューチャー・クラシック〉だ。今年10周年を迎えたこのレーベルには、欧米のアクトと十分に渡り合うだけの実力を備えたアーティストがひしめき合っている。このチェット・フェイカーは、フルームと並ぶ同レーベルの二枚看板の一人。言わば彼は「豪州のジェイムス・ブレイク」とも位置付けられる存在で、凍てつくようなエレクトロニック・ソウルに乗せて悲しみに濡れた歌声を寒空に響かせる。その名前から想像がつくように、ジャズを隠し味に忍ばせているのも今様でジャスト。これはデビュー作だが、豪州チャートで1位を獲得し、ARIAアワーズでは5部門を受賞するなど、本国ではセンセーションを巻き起こした。おそらく、チェット・フェイカーと〈フューチャー・クラシック〉を取り巻く熱気が世界中に伝播するまで、さほど時間はかかるまい。(小林祥晴)

25. Damon Albarn / Everyday Robots

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「ポスト・ブラー」のデーモンは確信的な連続コラボ犯として数々のアヴァターを創出してきたが、初の本格的なソロ・アルバムになる本作はアフリカ音楽/R&B/クラシック他、彼の多彩な音の旅路を総合する力作になった。もっとも、押し出しは強くない。ジャケットは首を垂れた白黒ポートレートであり、〈XL〉盟主リチャード・ラッセルが仕切ったミニマルなグルーヴはほぼ全編を通じゆったりシャッフルするBPMで哀感のメロディを運び、タイトルや歌詞モチーフは感情や記憶を際限なく蓄積しているデジタル時代の空疎をあぶり出す。しかし一歩間違えれば「これ見よがし」になるサンプリング&ループの扱いは非常に繊細で、主軸になるアコースティック楽器のひなびた響きを増幅。ノスタルジックでありながら確実に現在でもあるそのユニークなフォーク・ソウルの音像は、中年世代らしい疲れや諦めの中にあってもこの人の音楽的な感性はまったく鈍っていないことを示している。(坂本麻里子)

24. St. Vincent / St. Vincent

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2007年の1st以来、デイヴィッド・バーンとのコラボも含めれば今作で5枚(!)を生み出しファン層を広げてきた赤丸上昇アクトだが、スフィアン・スティーヴンス、ダーティ・プロジェクターズといった同時代のアート・ロック勢との同調を経て彼女がソングライターとして「個」を主張し真に開花し始めたのは前作から。才気縦横な地力は初期から明らかだったとはいえ、なんの気なしに聴けば「少々風変わりなダンス・ポップ/モダン・ファンク」として通用し愛されるアクセス度の高いプロダクションで門戸を開け放った本作は、聖人のアイコンを芸名に掲げたことからもうかがえる崇拝への欲望=プリンスからロード(綴りは違うが元ネタのLordは「君主」の意)に至る、スクエアな父系型社会の主流に中指を突き立て新たな目覚めを促すカリスマ像を露にしてみせた。突き詰めれば数学である音楽の硬質なロジックと女性的な官能の濁りを、先人ケイト・ブッシュやビョークのように巧みに融合させられるか? に期待の募る、今後も目を離せない人だ。(坂本麻里子)

23. Aphex Twin / Syro

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何もかもが、驚くほどにまったく変わっていない。13年の長きに渡る沈黙を遂に打ち破った新作、ではあるのだが、13年間ずっと世界の片隅で誰かに発見されるのをひっそりと待ち続けていたマスターテープから起こした音源と言われても信じてしまうだろう。ここでは、90年代初頭の作風を強く喚起させる美しき白昼夢の世界が、おそろしく高純度で高品質な電子音として結晶化している。違いがあるとすれば、さらに磨きがかけられた音の粒立ちくらいか。それゆえに、本作はただひたすら心地よい。出来ることならば、今が2014年だということも忘れて、いつまでもこの音の中に浸っていたい。そんなふうに思わせるアルバムだ。これが世界中で凄まじい大絶賛を巻き起こしたという事実は、あらゆるリスナーの神経を逆撫でしていたかつてのエイフェックスとは、今や期待されるものがすっかり様変わりしたということか。やはり時は流れた。(小林祥晴)

22. Metronomy / Love Letters

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2014年の英国ロック・シーンにおいて、センセーショナルではなくとも着実な良作を届けてくれたバンドには、2000年代後半デビューの中堅組が多かったように思う。ただ、ワイルド・ビースツ然り、ホラーズ然り、それらのバンドが今年上梓したアルバムは、革新ではなく洗練を、挑戦よりも成熟を選び取ったかのような作品ばかりで、その完成度に舌を巻きつつも、どこか寂しさや物足りなさが感じられたのも確か。しかし、その中でメトロノミーだけは安定を選ぶことなく、60年代サイケ/ヒッピー・カルチャーを換骨奪胎するという新たなコンセプトへと果敢に飛び込んでみせた。本当に驚くべきは、その抜本的な変化にも関わらず全体に漂う、飄々としたメトロノミーらしさ。膨大なインプットを頭の中に抱えつつも、アウトプットに決して親しみやすさを失わないジョセフ・マウントのヴィジョンがある限り、メトロノミーはどこまで行こうともメトロノミーなのだ。(青山晃大)

21. The War On Drugs / Lost In The Dream

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一部に「オヤジ向けのレトロ・ロック」なる批判があるのはごもっとも。かつての盟友であるカート・ヴァイルの根っこがニール・ヤング/ルー・リードなら、アダム・グランデュシェルの唱法はディラン直系、メロディにスプリングスティーンが残響する。イギリスの「ロック・オヤジ御用達」雑誌である〈モジョ〉&〈アンカット〉が本作をそれぞれ年間2位/1位に選出したのも自分的には予想的中だった。しかし「もののあはれ」な歌とリヴァーブの酔いだけではなく、確実に耳の壁に何かが残る。それは過去数年シーンに亡霊のようにつきまとってきた80年代中期AORサウンドの秀逸な引用&咀嚼と、商業化と赤裸々な本音との狭間でモヤモヤしていた『ストリート・リーガル』あたりの(いまだ誤解されている)ディランの繊細なファジィさとのジャストな邂逅=あるようでなかった音場が本作にあるからだ。占いは得意じゃない。が、こんなレアで美しい出会いを実現させた作品はそうそう生まれないという意味で、一世一代の一枚。(坂本麻里子)




「2014年 年間ベスト・アルバム 11位~20位」
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「2014年 年間ベスト・アルバム50」
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