SIGN OF THE DAY

ダブステップ界の最重要人物、
ブリアル新作『ライヴァル・ディーラー』を
100%堪能するための「12曲の歴史」part.1
by AKIHIRO AOYAMA December 16, 2013
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ダブステップ界の最重要人物、<br />
ブリアル新作『ライヴァル・ディーラー』を<br />
100%堪能するための「12曲の歴史」part.1

1年振りに最新EP『ライヴァル・ディーラー』をリリースしたばかりのブリアル。彼はデビューから現在までずっと、ダブステップ~ポスト・ダブステップの未来を切り拓くパイオニアであり続けてきました。どんなに大金を積まれても一切のライヴ活動を行わず、全く人前に姿を現さずにただただ音楽のみを届ける彼の一貫したアティチュードは、かつてのダブステップが持ち合わせていたアンダーグラウンドの精神に基づいたもの。それはここ数年でヒップな音楽として注目を浴びている「ダブステップ」的なクラブ・ミュージックが失ってしまった大切なピースと言ってもいいでしょう。ここでは、最近膨大な量のアーカイヴ音源をアップしている〈ハイパーダブ〉のYouTube公式チャンネル(ブリアル以外のアーティストももちろん多数!)からの音源を中心に振り返ることで、2000年代後半以降の音楽シーンにとっては最も重要なもののひとつである、ブリアルの残した足跡を辿っていきたいと思います。

ブリアルが〈ハイパーダブ〉によって見出されデビューするきっかけを作ったのは、主宰のコード9がレーベル立ち上げ以前にインターネット上で運営していたオンライン・マガジン。読者だったブリアルの送り続けたCD入り手紙にコード9は可能性を見出し、05年、ブリアルは初めての12インチ・シングル“サウス・ロンドン・ボロウズ”をリリースすることとなります。レーベル番号は「HDB001」、つまり〈ハイパーダブ〉の記念すべき001番。ダブステップ出生の地、南ロンドンはクロイドンを示唆するタイトル。アンダーグラウンドで、だからこそ先鋭的だった当時のダブステップ・サウンドがここでは鳴っています。

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このシングルからちょうど1年後の06年5月にリリースされたデビュー・アルバム『ブリアル』で、ブリアルの名はイギリスに留まらず世界に知られていきます。そして、それに伴い、当時は知る人ぞ知るアンダーグラウンド音楽でしかなかったダブステップという言葉もしだいに知名度を増していきました。

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1stアルバムからシングル・カットされた“ディスタント・ライツ”。改めて振り返ってみて驚かされるのは、この曲で亡霊のようにループするヴォーカルのサンプリング元が、デスティニーズ・チャイルドの“エモーション”だということ。例えばジェームス・ブレイクが“CMYK”でケリスとアリーヤをサンプリングしてみせたようなアイデアのプロトタイプを、ブリアルは06年の時点ですでに試みていたのです。

デビュー・アルバムからわずか1年半というリリース・スパンで、彼は早くも2ndアルバム『アントゥルー』を作り上げます。R&Bのヴォーカル・サンプルが前作以上に印象強く配置された同作は、世界中の音楽メディアによる07年ベスト・アルバム・リストに軒並みランク・インし、ブリアルにとって、あるいはダブステップというジャンルにとっても本格的に世間一般へと知られるひとつの転機となりました。

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そして、翌年のマーキュリー・プライズにアデルやレディオヘッドと並んでノミネートされたことにより、彼の周辺環境にも変化が訪れます。一切素顔を明かしていなかった彼の正体についての記事がタブロイド紙などにも出回り、ブリアルは実はリチャード・D・ジェイムスの変名なのではないかといったゴシップまで流れることに。それを受けてブリアルは「自分は控え目な人間で、ただ音楽を作りたいだけ」というメッセージと共に、自身の写真をMyspace上にアップしました。ただ、その後も現在に至るまで、ブリアル別人説は度々持ち上がっているのですが。

ブリアル自身にとっても、ダブステップにとっても転機となった『アントゥルー』でしたが、その後はさらに大きな状況の変化が訪れることになります。


「ダブステップ界の最重要人物、 ブリアル新作『ライヴァル・ディーラー』を 100%堪能するための『12曲の歴史』part.2」はこちら。

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