SIGN OF THE DAY

『トレインスポッティング』から20年。
英国ポップ・シーンの「今」をその当事者、
フォーメーションに訊く:前編
by SOICHIRO TANAKA April 25, 2017
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『トレインスポッティング』から20年。<br />
英国ポップ・シーンの「今」をその当事者、<br />
フォーメーションに訊く:前編

英国のポップ・シーンはすっかり変わってしまった。現在その中心にあるのはアデル、エド・シーランという二大ビッグ・アクトを頂点とする所謂ポップ・アクト。もうひとつのアンダーグラウンド寄りの勢力は昨年のマーキュリー・プライズを勝ち取ったスケプタ、今年2月にアルバム『ギャング・サインズ&プレイヤー』が全英No.1に輝いたストームジーに代表されるグライムだ。

シーンの存在やファンベースの規模からすれば、90年代半ばのブリットポップ期をひとつの頂点に、所謂ロック・バンド/インディ・バンドにとって現在の英国には居場所らしき居場所はなくなりつつある。実際、目立ったシーンらしきシーンも見当たらない。リバティーンズ発見後、英国各地にバンドが雨後の竹の子のように生まれたゼロ年代半ばと比べれば、サヴェージズやボーニンゲンが共演するバンドに困るほど、そもそもバンド自体が存在しないというのが現状だ。

勿論、ミューズ、カサビアンといったアリーナ・ロック・バンドはいる。だが、どちらもキャリアはもはや20年を超す大御所的存在。カイザー・チーフスやキャットフィッシュ・アンド・ザ・ボトルメンといった音楽性というよりはキャラクターやパフォーマンスによって人気を博しているバンドもいる。だが、レディオヘッドはその音楽性から言ってももはや英国バンドというフォルダに収まる器ではないし、デーモン・アルバーンの音楽的なメイン・ヴィークルはブラーではなく、ゴリラズ。そのファンベースはブラーとは違い、むしろアメリカにある。ストーン・ローゼスは英国バンドというよりはマンチェスターのバンドだし、コールドプレイは英国のロック・バンドというよりはアメリカのメインストリーム・ポップだ。

The 1975やウルフ・アリス、アルト・Jのように成功を収めたバンドもいるにはいるが、それぞれの活動が目指す場所はアメリカを向いている。他方、フォールズやロイヤル・ブラッドは間違いなく健闘しているし、常に良作を上梓しているものの、そのファンベースはラウド・ロックのファン中心に限られがちなのは否めない。正確にはバンドとは呼べないものの、所謂ロックと呼ばれるバンド・サウンドが英国で存在することがここ日本で想像するより遥かに厳しいことを、ラット・ボーイの孤軍奮闘ぶりが物語っている。

クールブリタリアから20年。英国のポップ・シーンはすっかり変わってしまった。だが、英国ポップ・シーン全体の変化はここ20年の間にUKという国家が辿った変化と分かちがたく繋がっている。単に文化だけの問題ではない。より詳しくは映画『トレインスポッティング』の続編ーー『T2 トレインスポッティング』のサウンドトラックの日本盤フィジカルCDに寄せた筆者のライナーノーツを参考にしてもらいたい。

では、英国からもはや新たなバンドの動きは出てこないのか?

だが、あらゆる物事にはライフサイクルがある。時代は振り子のように揺れもどす。こちらの記事で示した通り、ロンドン郊外からはようやく新たな動きが顕在化しつつある。そして、本稿の主人公フォーメーションもまたその渦中にいる。


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ダニー・ボイルの娘がファンだからという理由で収録されたウルフ・アリスを除けば、映画『T2 トレインスポッティング』のサウンドトラックに収録されたリアルタイムで活動する作家たちの楽曲はどれも、ロックというサウンドが、バンドという形態が、今のイギリスでポピュラリティを得ることがとても難しいという事実を象徴しているとも言えなくない。

だが、本稿の主人公フォーメーションを含め、こうしたロンドン郊外のバンド・シーンの活性化は、間違いなく『T2』の「次の時代」を感じさせる動きだろう。

我々の想像以上にバンドとして活動することの険しい時代に、彼らがまず本国イギリスにおいてどの程度のポピュラリティを得ることが出来るかどうかは正直わからない。だが、2010年代後半のポップ・シーン全体を牽引する存在が出てくるかもしれない。確かな胎動は聞こえる。

まずはこちらの原稿を読んで欲しい。きっとフォーメーションというバンドが60年代のビートルズに端を発する「英国ロック」の正当な継承者だということがわかってもらえるはずだ。


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以下のインタヴューでは、彼ら自身のことを訊ねると同時に、この201年代後半にロンドン郊外で活動を始めた彼らフォーメーションが英国ポップ・シーン全体をどんな風に眺めているのかについても事細かく訊ねた。ここ日本における音楽ファンでいるだけでは感じることの出来ない当事者のリアリティを感じ取ってもらえることと思う。

と同時に、今、ロンドンからフォーメーションのようなバンドが出来てたことの必然をより感じてもらえるに違いない。

Formation / A Friend





●フォーメーションの音楽の核にあるのは間違いなくグルーヴですよね。ソングライティングにおいても、サウンド・プロダクションにおいても。グルーヴにフォーカスしようとした最初のきっかけはなんだったんでしょうか?

ウィル・リットソン(以下、ウィル)「もうホント最初からそうだったんだ。たぶん僕らがやることで一番重要なのがグルーヴを作りだすことだし」

マット・リットソン(以下、マット)「フォーメーションとして曲を書きはじめた時、僕はベースを弾いてて、ウィルがドラムだったんだ。で、やってたのが『ジャズのインプロヴィゼーションをポップのフォーマットにどう落とし込むか?』ってことだったんだよ。だから最初は3分間、ただ即興でグルーヴを作って、そこから曲を書いていったんだ」

●ジャズのインプロヴィゼーションとポップ・ソングのソングライティング、それぞれ一番ヒントになったようなロールモデルって何かあったりしたんでしょうか。

ウィル「僕にとってはジョン・コルトレーンがジャズにおける最大の影響だね。ほら(と、シャツを上げて胸のタトゥを見せる)、ジョン・コルトレーンの『ラヴ・スプリームス』(笑)」

●あ、ホントだ(笑)。

ウィル「ジョン・コルトレーンが僕のヒーローなんだ。僕にとって即興音楽のヒーローでもある。彼のグループ、エルヴィン・ジョーンズやジミー・ギャリソン、マッコイ・タイナーがね」

●ポップ・ソングのソングライティングについては?

ウィル「ポップについては直接的な影響を受けたっていうより、そこで起きてきたもの全部って感じかな。でも、強いて挙げるとしたら、イギー・ポップやデヴィッド・ボウイ、ザ・フレーミング・リップス」

マット「ナイン・インチ・ネイルズ」

ウィル「ナイル・ロジャーズだね。つまり、シックとか、シスター・スレッジ」

●例えば、ストゥージズにしても、ロックのリフとジョン・コルトレーン的なインプロヴィゼーションを合体させたバンドですよね。そういった系譜の中に自分たちもいる、という実感もありますか?

ウィル「もちろん。僕らのレコードーー『ルック・アット・ザ・パワフル・ピープル』にも1枚にものすごくいろんなところから影響がある。ジャズ、ポップ・ミュージック、ヒップホップ、パンク、メタル。いろんなジャンルを全部突っ切ろうとしてるんだ。歌詞についてもイギー・ポップやデヴィッド・ボウイは即興的にやろうとしたよね? 思うままにその場で言葉を吐き出して。一番最初に僕が使ったプロセスもそれなんだ。感じるまま、何も考えずに言葉を口に出して。だから“ハンギン”や“ブラッド・レッド・ハンド”みたいな曲は、プレイしはじめた最初の2日とかでできた曲で、歌詞もその場で出てきた言葉なんだよ」

●あなたたち二人のアイデアから始まって、他のメンバー三人もそれぞれ音楽的なバックグラウンドを持っている。何よりエレクロトニック・ミュージックのプログラミングのバックグラウンドとか、サウンド・プロダクションに対するバックグラウンドがあるよね。彼ら三人が加わることで起きた、最大のケミストリーって何だったんでしょう?

ウィル「ベース・プレイヤーのジョニー・タムズとは幼なじみなんだ。同じ学校に通ってたし、彼、地元のレコード店で働いてたから、僕らそこでレコードを買ってた。その間ずっと友だちで。ジョニーはそのあとオリンピック・スタジオっていう大きなスタジオで働くようになった。チェンゾ・タウンゼンド(Cenzo Townshend)っていう有名なミキシング・エンジニアのもとでね。だからビョークとかキングズ・オブ・レオンとか、いろんなビッグネームと仕事して」

マット「マドンナとか(笑)」

ウィル「そうそう。で、僕らがフォーメーションを始めた時は倉庫でやってたんだけど、ジョニーもスタジオの仕事をやめてその倉庫でやるようになって。そのあとジョニーはまたスタジオに戻って、僕らのデモとかを手がけるようになった。僕らの最初のEPをプロデュースしたのも彼。で、ジョニーはその新しいスタジオでキーボードのサシュと知り合ったんだ。カイはマットが昔プレイしてたバンドのメンバー。で、僕らがライヴを始めたときに、カイにドラムを叩いてもらうことになった。だから君が言ったように、他の三人は以前むしろサウンド・デザインに関わってたんだけど、バンドでプレイするようになって。それが全員にとって新しかったんだよ」

Formation / Pleasure


●では、あなたたち5人が出会った南西ロンドンという場所と、あなたたちがやっている音楽の関係性は重要ですか?

マット「まあ、“バック・ゼン”みたいな曲はそうかもしれない」

ウィル「特に歌詞の部分ではね。僕が歌詞を書いたから、より個人的な体験が書かれてるかもしれない。“バック・ゼン”はすごくノスタルジックな曲なんだ。でも、カイとサシュはノース・ロンドンに住んでるから。だから、僕たちとしては5人でロンドン全体をリプリゼントしてる感じ。僕ら5人の間にある多様性そのものがフォーメーションになってると思う」

●あなたたちのベースは南西ロンドンですよね。今、ロンドン自体はどんな感じなんですか? 

ウィル「前と比べるとロンドンで暮らすのに金がかかるようになったんだ。で、貧乏な人たちは追い出されて。だからアーティストや音楽を作ってる人たちがどんどん家賃が安い地域に引っ越してるんだよ。それが南東ロンドンと北東ロンドンなんだよ」

●なるほど。

ウィル「そもそもイングランド、特にロンドンでは音楽業界のマジョリティがミドルクラスやアッパークラスのキッズなんだ。もともとそういう活動をする金がある連中っていうか、親が全部払ってくれるような。で、若いミュージシャンにとっては状況がずっと難しくなってる。だからこそ、自分が持ってるツールに関してクレバーにならなきゃいけない。インターネットやラップトップ、音楽ソフト……それをどう使って自分の音楽を外に出すのか、そこにおいてクレバーじゃなきゃいけないんだ。それ自体面白くなる可能性もあるんだけど、若い人たちが音楽を作って、クリエイティヴになれる状況がないのは残念だよね」

●日本から見た勝手な印象だと、今のロンドンというとやっぱりグライムが一番元気だってことなんだけど、彼らとあなたたちがシェアしてるものはあると思いますか?

ウィル「もちろん。僕らみたいに政治的なテーマについて語ろうとしてたり、アイデアとして同じところから出てきてるアーティストがグライムのシーンには大勢いると思う。僕らが特に好きなのが、ノヴェリスト(Novelist)っていうアーティストんだ。彼とは音楽や政治、歌詞とかについて何度か話したこともあるんだけど。うん、そこはロンドンがいまどう変わりつつあるかのサインだと思うし、世界的なものも示してると思う。僕らもそうだけど、そうしたことについて語る最前線にアーティストがいる、っていうね」

Novelist x Mumdance / 1 Sec



●これも日本から見た勝手な印象なんだけど、グライムはある種のレベル・ミュージックで、クラス・ミュージックでもある。要するにワーキング・クラスのものってことなんだけど、あなたたちはクラス的にももっと多様ですよね。そういうところで違いはありますか?

ウィル「とは言っても、重なる部分もある。僕ら自身、人種が混じってるしね。僕とマットの母方の祖父はガーナ出身なんだ。アイルランド人やイングランド人も混ざってる。だから僕らはブラックの視点にももちろん共感するし、音楽の歴史としてそれがどこから来てるか、オリジンも理解してる。ブルーズやルーツ・レゲエ、ヒップホップ、ダンスホールーーそうした音楽は僕らの家族の歴史に存在してるんだ。文化的にグループの中にも多様性があるし、僕たち、一つの決まった立場に立ってないんだよね。むしろその外側にいるんだ」

●なるほど、なるほど。

ウィル「だから、僕らは全部を見て、あらゆるところにコネクトしようとしてる。イギリス、アフリカ、ヨーロッパの文化のあらゆる部分にね。でも特に一つのものをリプリゼントしていない、っていうね。物理的にもそうだし、全部をリプリゼントしてるんだ。まあ、そのせいでほんの少し、難しいところはあるかもしれない。『自分は何々だ』ってピンポイントで言えないからね。『そうじゃない、僕らは全部なんだ』って言わないと嘘になる。だから、さっきも言ったけど、僕ら5人の間にある多様性そのものがフォーメーションになってると思う」

●イギリス音楽の最大の魅力というのはずっと英国が多民族国家だってところから生まれてきたところだと思うんですね。それぞれの民族、文化の衝突だったり融和だったり、そこから生まれてるっていう実感があるんだけど。あなたたちの意識としてはどうですか?

ウィル「だと思う。たぶん……ただ自分自身である、っていうのが一番難しいんだよ。でも、そこが伝わると、それがその音楽の魅力になる。正直だからね。だからこそグライムはこんなに人気があるんだ。言葉がリアルで、正当だから。これまでになかった声があるんだ。いったんその声が人に届くと、それはすごくパワフルになる。だからこそ、僕らの声、僕らの音楽も人に届くといいんだけど」

●じゃあ、あなたたちが自分たちの音楽を説明する時に使う三つのワードがあるじゃない? グルーヴ、パワー、ノウハウ。それについてもう少し詳しく聞かせてもらってもいいですか?

ウィル「パンテラのフィル・アンセルモは知ってる? 僕、若い頃に彼のインタヴューを読んだんだよ。今、彼らがやってるような白人至上主義的な音楽をやり出すずっと前の話だけど。で、当時の彼が『パンテラっていうのはグルーヴとパワーとノウハウなんだ』って言ってて。それがずっと頭に残ってたんだ。その三つは僕が常に音楽に求めるものなんだよ。まあ、彼がそう言った時はかなりドラッグやってたんだろうけど(笑)。でも、僕にはなんか意味が通じたんだよね。今の僕は、その三つがバンドの他の三人を表してる気がしてるんだ。サシュはシンセを操るからノウハウ。ジョニーはベースでグルーヴを作りだすから、グルーヴ。で、カイがパワー。僕らのライヴ観てもらえるとわかると思うけど、まさにドラムにパワーがあるんだ」

●そんな風に三つのキーワードを掲げたりするのって、どこか状況主義的なスローガンとも近い気がするんだけど。状況主義からの影響はあるんでしょうか?

ウィル「もちろん! ギー・ドゥボールの存在、それに60年代にパリで起きてたことは僕らにとってすごくデカい影響だね。あれは政治的なグラフィティの出発点でもあるし、ブレック・ル・ラット(Blek Le Rat)みたいな人にも影響を受けてる。ステートメントによって地政学的な意識を高めるっていうのは、僕らがこのアルバムのキャンペーンで使ってるアプローチでもあるんだ。見たことあるかな? 曲の歌詞を拾ってステートメントにして、それを使ってアルバムのメッセージを拡散してるんだけど。哲学的にも政治的にも、僕らはギー・ドゥボールやあの集団のアーティストを支持してる」

●じゃあ、例えば、バンクシーみたいなアーティストとの共通点を感じることはありますか?

ウィル「マットはアートを勉強したから、バンクシーについては僕より知ってるんじゃないかな」

マット「うん、バンクシーは好きだよ。バンクシーにハマったのは16歳くらいのときかな? そのころステンシルとかも始めて、当時住んでた家の近所でグラフィティをやったり。だからある意味、影響は受けてる。やりたいことをやって、許可を求めずにそれを出していく、ってところで(笑)」

●イギリスのロック、ポップ・ミュージックと状況主義の関係でいえば、まず思い出すのはマルコム・マクラーレンとセックス・ピストルズ。次が90年代のマニック・ストリート・プリーチャーズ。『アクトン・ベイビー』を作った時のU2も状況主義からの影響は多大だったと思うんだけど、彼らがやったことについては?

ウィル「グリール・マーカスが書いた『リップスティック・トレイシーズ』っていう本(『Lipstick Traces: A Secret History of the 20th Century』)は知ってるよね? あの本はすごく興味深かった。セックス・ピストルズやパンク・ムーヴメント全般に対しても、状況主義のムーヴメントがどれほど幅広く影響を与えたかがわかったからね。僕ら、ザ・フォールみたいなバンドもポップ・バンドだと思ってるんだ。だから、ああいう『構造はどう振る舞うべきか』についての反抗の系譜っていうのかな。それは確実に、僕らが音楽を作るやり方に影響してる。やり方は一つじゃないっていうこと、さらには自分のやり方、自分の声はある特定の構造、ストラクチャーより重要なんだ――ってね。だからこそ、僕らのストラクチャーはポップ・ミュージックなんだよ」

●なるほど。さっきはグライムのアーティストとシンクロする部分があるって言ってたけど、いま話してくれたような部分も含めて、いまあなたたちと近いことをやってるようなバンドって思い浮かんだりしますか?

マット「ブリクストンに〈ウィンドミル〉っていうヴェニューがあるんだ。僕ら、そこで10年くらいプレイしてるんだけど。そこでプレイしてるバンドからどんどんいいバンドが出てきて、ある意味、シーンを作ってる。僕らは必ずしもその一員っていうわけじゃないんだけど、彼らがやってることはすごくいいと思うな。シェイム(Shame)とか、ソーリー(Sorry)。あとハッピー・ミール・リミテッド(Happy Meal LTD)、もしくはHMLTDとかがそのヴェニューから出てきてる。彼らのDIY的な本質をすごくリスペクトしてるんだ」

ウィル「ただ、僕らとサウンドが似てるバンドはないんじゃないかな。僕ら確実に孤立してるね(笑)」

HMLTD / Stained

Shame / The Lick (Live at Dropout Studios)


●メインストリームに目を向けた場合はどうですか? やっぱり自分たちは明らかにはみ出し者だっていう感覚が強い?

ウィル「完璧そう(笑)。今のUKだと、バンドをやること自体がとにかく難しいんだ。実際、かなり苦しくて。UKだとホント人に知られるのも、存在するのさえ難しい(笑)」

●あなたたちのビデオを撮ったマイク・スキナーがザ・ストリーツをやってた頃というのは、まだあなたたちは幼かったかもしれないんだけどーー。

マット「僕ら、彼の音楽を聴いて育ったよ!」

ウィル「うん、最初に彼の曲聴いたときのことも覚えてる。『オリジナル・パイレート・マテリアル』の“ハズ・イット・カム・トゥ・ディス?”がラジオで流れたんだ。あれが15年前だから……僕らが13歳の時? あれが出た時、僕らは10代前半だった。他にもディジー・ラスカルだったり、あのころ僕らがパーティに行くと音楽がそういうので。特にロンドンだと、あのへんを聴いて育ったんだよね。すごくビッグだったから」

マット「直接的に影響は受けてないかもしれないけど、確実にUKのミュージシャンとしてリスペクトしないきゃいけない人の一人だよね。彼はものすごくユニークなことをやったし、彼みたいな人がまた他の人たちのドアを開いた。自分の声を自分なりにチャネリングする、っていうね。いったんマイク・スキナーがああいうことをやったら、他の人も自分なりのことをやりだした。彼は本当にビッグなんだ」

ウィル「すごく面白い人でさ。ビデオの撮影の時も変な話いっぱいしてくれたんだよ(笑)。ジョークばっかりだし。多分、彼の音楽へのアプローチって、映画を撮るときのアプローチとも似てると思うんだけど、カメラを据えて、ただ僕らのやりたいようにやらせて。マイクを据えて、シンガーに好きなように歌わせるのと同じ感じでね。僕らをその映画的なスペースに自由に生かした、みたいな」

Formation / Powerful People


マット「で、そこには労働安全基準もなく、プランもまったくないんだよね(笑)。僕らが現場に行くと、バイクが周りを走り回ってて、それだけ(笑)」

●じゃあ、あなたたちが音楽を始めるに際して直接的な起点になったアーティストを挙げてもらえますか?

ウィル「レディオヘッドだな(笑)」

マット「でも当時、ニュー・メタルもビッグだったんだよね」

ウィル「ラム・オブ・ゴッドとか、フィア・ファクトリーとか、パンテラとか」

マット「ヒップホップもね。僕はナズをよく聴いてた。ア・トライブ・コールド・クエストも」

ウィル「N*E*R*Dとか」

マット「あと僕ら、ずっとクラシック音楽も聴いてた。僕はジョン・タヴァナーみたいな声楽もすごく好きなんだ。モートン・ローリゼンとか。ドビュッシーやショパンみたいなピアノ曲もね。ラフマニノフも!」

●クラシック音楽のバックグラウンドっていうのは、子ども時代の環境から?

マット「子どものころ、母が僕らを教会に連れていって、合唱隊で歌わせたんだよ。母自身、クラシックをよく聴く人だったし。だから、小さいころから自然と周りにあった音楽なんだ」

●あと、アルバムを聴いても、ハウス・ミュージックのリファレンスがありますよね。ハウス・ミュージックにおいてはどのタイミングで、どういったアーティストの影響が一番あるんですか?

ウィル「ぺぺ・ブラドックかな」

マット「フランスのハウスのプロデューサーで、ぺぺ・ブラドック(Pepe Bradock)っていう人がいて。僕ら、子どものころ夏休みになると南仏に行ってたんだけど、そこに英語のラジオ局が一つだけあって。そこでニュースのBGMとして流れてたのが、ぺぺ・ブラドックの“ディープ・バーント”ってトラックだったんだよ。そのループを8歳くらいからずーっと聴いてて。ラジオ局も変えずにずっと使ってたんだ。で、僕が18とか19の時にそのループの元のレコードを見つけたんだよ! ものすごいチューンで、大好きになった。あと18になって僕らがクラブとかに通いだしたころはフレンチ・エレクトロがビッグだった。だから〈エド・バンガー〉とか。ビジーP、ジャスティス、フェズ、セバスチャン、その辺りだよね」

ウィル「DJメディとか」

マット「僕がDJを始めたころはその辺りをかけてた。そこから始まって、いろいろ広がっていったんだ」

Pepe Bradock / Deep Burnt


ウィル「マットがDJを始めて、僕も聴くようになって。すごく変なジャズ・バンドを見つけるところから始まって、新しいハウスのレコード、エレクトロのレコードを見つけるようになった。当時、レコード店に入って、セオ・パリッシュを初めて聴くのって、すごくエキサイティングなことだったんだよ。『ワオ、これから全部見つけていく新しいジャンルがまるまる一つあるぞ!』って。しかも、あの頃って毎週UKで新しいハウスやテクノが出てきたんだよね。あれは本当にすごかった。新しい音楽の発見っていう意味ではそこが最後のステップだったんじゃないかな」

Theo Parrish / First Floor (full album)


●2010年代における英国のハウスと言うと、誰もがディスクロージャーを思い浮かべると思うんだけど、彼らとシェアしてるものはあると思いますか? あと彼らの1枚目と2枚目をどう評価しているか、教えてください。

マット「僕は以前、イースト・ロンドンのオールド・ストリートにあるクラブでDJしてたんだ。ホント最低な場所でさ。ひどいバーに最悪の客が来て、最悪の音楽を聴きたがるっていうね(笑)。でも、ディスクロージャーのレコードが出たら、突然みんなハウス・ミュージックを聴きたがるようになったんだよ。あれはホント最高だったな(笑)。だから、僕、あのレコードは何百回とかけたんだ。シングル曲はもちろんのこと。だから僕はほとんどの人たちよりずっと、あのレコードに感謝してるんだよ(笑)」

●じゃあ、ジェイミーxxは? 彼もロンドンのクラブ・シーンがバックグラウンドにあるけど。

マット「僕はThe xxのレコードより彼のレコードの方が好きなんだよね。サンプリングとすごく美しいシンセのトラックをミックスするやり方が大好きなんだ。それにヤング・サグとかに始まって、ヴォーカルのフィーチャリングも面白い。とにかくいろんな面白いものをブレンドしてみせる」

Jamie xx / I Know There's Gonna Be (Good Times) ft. Young Thug, Popcaan


マット「彼がギル・スコット・ヘロンをリミクスしたアルバムも大好きなんだ。あのレコードを見事に革新しながら、ギルの声っていう要素をまったく損なっていない」

ウィル「いや、僕の意見は違うな! 僕はギル・スコット・ヘロンはギル・スコット・ヘロンのあり方が好き。あれはいじっちゃダメだよ(笑)」

Gil Scott-Heron and Jamie xx / I'll Take Care Of U


●(笑)ギル・スコット・ヘロンはいつ頃のタイミングで発見したんですか? 彼のサウンドと彼が偉大な詩人であること、そのどちらの比重のほうが大きい?

ウィル「僕にとってはどっちも重要だね。ティーンエイジャーの頃、父に教えてもらったんだ。確か14歳の誕生日だったと思う。アルバムを2枚買ってくれたんだけど、その1枚がギル・スコット・ヘロンの『ウィンター・イン・アメリカ』で、もう1枚がクラッシュの『ロンドン・コーリング』だった。僕、すぐにあの音楽にコネクトしたんだよ。ギル・スコット・ヘロンは詩人でありミュージシャンだし、何が歌詞で、何が詩なのか、差別化するのが難しい。ギル・スコット・ヘロンはその境界をぼやかして無意味にしてしまうんだ。ある意味、すべてを一度にやってるんだよね。それがすごくクールだと思った。それに、彼の音楽からは常に深い感情が伝わってくる。まるで歴史の重い鎖を引きずってるみたいにね」


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