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世紀のお騒がせ少女、グライムス新作が
海外に先駆けて、緊急デジタル・リリース!
炎上必至と噂される問題作の真価やいかに?
by YOSHIHARU KOBAYASHI November 06, 2015
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世紀のお騒がせ少女、グライムス新作が<br />
海外に先駆けて、緊急デジタル・リリース!<br />
炎上必至と噂される問題作の真価やいかに?

遂にその全貌が明かされる時がやってきました。「次のアルバムはもしかしてヤバいんじゃ?」「下手したら、とんでもない失敗作になるかも」――世界中がこんなにも大きな期待と不安を寄せ、待ち焦がれていた作品は、近年なかったのではないでしょうか? リリースの中止と延期を経て、とうとうグライムスのニュー・アルバム『アート・エンジェルス』が本日11月6日にデジタル・リリース!(フィジカルは12月11日。)しかも、時差の関係で、日本だとヨーロッパやアメリカより一足早く聴けてしまいます!

アルバムに先駆けて公開されたトラック群からも予想出来た通り、本作は大いに議論を呼ぶこと必至。まだ聴いていなかったという方は、まずはそちらをチェックして下さい。映像もグライムスらしさ全開です。

Grimes / Flesh without Blood/Life in the Vivid Dream

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Grimes / Scream ft. Aristophanes

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この『アート・エンジェルス』は、これまでの比ではないほどポップでパワフルに弾けながらも、いつになく分裂症的でカオティック。とにかくとんでもない。さあ、四の五の言っていても始まりません。早速手に入れて、聴いてみて下さい。勿論アップル・ミュージックでも結構。


では、ここで改めて振り返っておきましょう。ご存知の通り、グライムスことクレア・ブーシェの評価を決定づけたのは、2012年リリースの傑作3rd『ヴィジョンズ』。このアルバムは乱暴に言ってしまえば、ブリアルとマライア・キャリーが仲良く手を繋いでいるような、あるいはダフト・パンクとアニマル・コレクティヴとコクトー・ツインズがめちゃくちゃに継ぎ接ぎされているような作品。あらゆるジャンルや時代や地域の音楽が何の脈絡もなく入り乱れているそのサウンドは、ネットでどんな音楽も並列で触れられるのが当たり前となった世代――俗に言う「ポスト・インターネット世代」の象徴と位置づけられました。

しかも、この『ヴィジョンズ』では、過去二作のようなレフトフィールドな感触を残しつつも、マライアを心底愛するグライムスの突き抜けたポップ・センスが大きく開花。それは、〈ピッチフォーク〉が2010年代前半のベスト・トラック第1位に選んだ“オブリヴィオン”を聴いてもわかるはず。このMVのヒットは、まさしくポスト・インターネット世代のポップ・アイコン誕生の瞬間でした。

Grimes / Oblivion

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そして翌2013年には、なんとジェイ・Zの〈ロック・ネイション〉とマネージメント契約を締結。このまま一気にポップ・スターの階段を駆け上るのか? と思いきや、この3年間、グライムスは悪戦苦闘。その一番の要因は、純粋に音楽だけで自分が注目されていると感じられなかったことでしょう。

既に幾つか出ている海外メディアの最新インタヴューに詳しいように、ソングライティングからプログラミングや演奏まで全て自分で手掛けるグライムスは、女性というだけで置物のようなポップ・スターと同列に見られてしまうことにストレスを感じていた模様。さらには、いまだに男性中心社会の音楽業界に憤りを覚えたり、実は根っからの炎上体質ということもあってTumblrのポストがたびたび燃えたり――と、音楽ではなく見た目や性別や言動で自分が判断されてしまうことが続いて疲弊していたとか。それもそのはず。あくまで彼女のアイデンティティは、アイコンではなくプロデューサーですからね。

そして2014年9月には、一度完成させたアルバムをボツにして作り直すとアナウンス。これを契機に、もしかしてグライムス、迷走している? 次のアルバムは大丈夫? という空気が流れ始めたわけです。

では、そんな混迷期にドロップされた曲も、ここで整理しておきたいと思います。2014年8月リリースの“ゴー”は、リアーナのために作曲したものの採用されず、結局はグライムス名義で発表することになったトラック。プロデュースは同郷の知人、ブラッド・ダイアモンド。リアーナ用に作ったのでEDM寄りです。発表後は「グライムスがセルアウトした」と誤解されたりも。

Grimes / Go ft. Blood Diamond

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こちらの“リアリティ”は、ボツにしたアルバムに収録されるはずだった曲のデモ・ヴァージョン。2015年3月にいきなり公開されました。これは完成版が『アート・エンジェルス』にも入っていますね。

Grimes / REALiTi (demo)


さて、そんなふうに、すったもんだがあった末、遂に完成したニュー・アルバム。それが『アート・エンジェルス』です。間違いなく、これはグライムスの真価が問われる試金石。果たして彼女は生粋のエクスペリメンタルなプロデューサーなのか? 新世代のポップ・アイコンなのか? それとも、その両方を兼ね備えた希有な存在なのか?――まずは誰よりも早くアルバムを聴いて、あなた自身の答えを見つけ出して下さい。


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