SIGN OF THE DAY

〈サマーソニック〉はクイーンで締めるべし
老害と侮るなかれ。大英帝国が誇る、最古の
萌えバンド、その華麗なる10曲。Part.2
by SOICHIRO TANAKA August 16, 2014
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〈サマーソニック〉はクイーンで締めるべし<br />
老害と侮るなかれ。大英帝国が誇る、最古の<br />
萌えバンド、その華麗なる10曲。Part.2

とにかく最初からクイーンを観ろ。とは言わない。最後の5曲でも構わない。それまでは他のステージにいてもいい。だが、クイーンのステージの後半、最後の最後の大団円だけは観た方がいい。というか、参加した方がいい。その一部になった方がいい。そんな風に言わずにはいられない理由を心の底からわかってもらうために選んだのが、この後半5曲。というか、5.5曲。

これは完全なネタバレだ。この5.5曲はおそらくステージ最後に演奏されるはず。もしかすると、少しは違うかもしれない。だが、例え、そのことが事前にわかっていたとしても、ここからの流れが生み出す感動は少しも目減りすることなどない。その程度でどうにかなるような、そんじょそこらのB級バンドのB級曲とはわけが違う。本当に優れた映画や小説は、例え、その結末がわかっていたとしても、何度読み直し、何度観たとしても、その時々に新たな発見がある。それと同じ。その渦中にいる瞬間にこそ、すべてがある。

そして、コンサートにはお約束がある。特にキャリアの長いバンドになればなるほど、そうしたお約束が自然と出来上がる。だが、そうした予定調和はダメだ。と若かりし渋谷陽一先生のようなことは俺は言わない。予定調和を作り上げるのもまたライヴの醍醐味。というか、優れた楽曲と演奏、そして、それを一回性の今へと収束させようという意志さえあれば、お約束は軽々と予定調和を越える。そういうものだ。それを成しえるもうひとつの鍵は、勿論のこと観客の主体性。なので、是非、お約束を奇跡に変えて下さい。御託はここまで。さあ、始めることにしましょう。



5. Tie Your Mother Down

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ブライアン・メイがガット・ギターを使って書いた、クイーン屈指のギター・リフを持つ最高のロックンロール・ブギー。2001年にクイーンがロックンロール・ホール・オブ・フェイム入りした際の、フー・ファイターズとの共演もさもありなん。まさにザ・ブギーなジョン・ディーコンのベースも、フレディ・マーキュリーがトースティング気味に歌うヴァースも最高にグルーヴィ。痺れる。

個人的な話をするなら、10代の頃、唯一自分の手元にあったクイーンのレコードがこの曲が冒頭に収められた5thアルバム『華麗なるレース』。他はすべて友達から借りた。なので、今でもクイーンと言えば、まずこの曲。間違いなく70年代ロックンロール・グルーヴの理想型がここにはある。ブライアン・メイのスライド・ギター・ソロも最高だ。現在のツアーではソングライターであるブライアン・メイ本人が歌ってる。白髪のお爺ちゃんの勇姿、しっかりとその目に焼き付けていただきたい。

4. Radio Ga Ga

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70年代半ばの3rd『シアー・ハート・アタック』と4thアルバム『オペラ座の夜』の2枚は不朽の傑作。その後の70年代の3枚――『華麗なるレース』、『世界に捧ぐ』『ジャズ』も勿論、捨てがたい。だが、その後の、80年代のクイーンはバンドとしてはその頂点を極めていたものの、作品の内容からすれば、80年の8thアルバム『ザ・ゲーム』という傑作を最後に、次第に下降線を辿っていく。その最後のきらめきと言えるのが、このロジャー・テイラーの手によるミュンヘン・ディスコ調トラック――“レディオ・ガ・ガ”だ。

この曲のPVにはフリッツ・ラングによるSF映画の古典『メトロポリス』(1927年作品)の映像が使われているが、84年にジョルジオ・モロダーが自らプロデュースした音楽を加えて、この映画をリストアした際、そのサウンドトラックの冒頭を飾っていたのが誰あろうフレディ・マーキュリーのソロ曲“ラヴ・キルズ”だった。この原稿のパート1の最後に貼った“アイ・ウォント・ブレイク・フリー”、あるいは、この“レディオ・ガ・ガ”を聴けば一目瞭然だが、この時期のクイーンは明らかにジョルジオ・モロダーの影響下にあった。勿論、忘れちゃいませんよね。ジョルジオ・モロダーもまたダフト・パンクが『RAM』を作るのに召喚したミューズのひとりですから。

では、86年ウェンブリー・スタジアムにおける圧巻のステージも併せて貼っておこう。何はなくとも、1分53秒からの両手を頭上にかかげた観客の姿を見て欲しい。

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是非とも万雷のクラップで応えて下さい。これぞ国民の義務。集団的自衛権とか知らんわ。MTV全盛期に全米のローカルFMラジオ局がその競争に負けて、独自性と主体性を失っていった時、彼らはメディアの腐敗をただ嘆いたり、糾弾するのではなく、こんな風に歌った。「ねえ、ラジオ、今も誰かが君のことを愛してるんだから」。他の国に攻め込む暇があるなら、俺はこのウェンブリー・スタジアムで、大勢の一部となって感動で涙する馬鹿でいたい。

3. Crazy Little Thing Called Love

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この曲がリリースされた時は驚いた。80年代最初のシングルがいきなりのロカビリー。しかも、この曲が収録された8thアルバム『ザ・ゲーム』には既に紹介したディスコ・トラック――“アナザー・ワン・バイツ・ザ・ダスト”も収録されていた。それは、当時パンクとロックンロールに夢中だったまだ10代のガキからすれば、いきなりの転身に映った。時代遅れのオールド・ウェイヴ・バンドが時代に遅れまいと焦ったあげくの時代への迎合。だっせー。そんな風に思った。バイクと革ジャンとブロンドのお姉ちゃんというステレオタイプを使ったPVもそうしたイメージに拍車を駆けた。

だが、あまりにも良く出来すぎている。付け焼き刃では絶対に作れない。しかも、コードの展開は徹頭徹尾オリジナル。どう聴いてもロカだが、こんなロカ・ソングはかつて存在しなかった。最高。という言うほかない。ちょっとキラキラしすぎた80年代プロダクションが残念な部分はありつつも、今、聴いても曲としては完璧だ。それもそのはず。実のところ、クイーンはその黎明期から50年代ロックンロールに対する深い愛情と理解に裏打ちされたバンドでもあった。件の狭量なガキがそれに気付くのは、それから随分時代が経ってからのこと。

実際、クイーンは活動前期にはお得意のハード・ロック・ブギー調のアレンジでリトル・リチャードの“ルシール”を、80年代半ばのメガ・バンド期にはロカビリー~ブギー調のアレンジで“トゥッティ・フルッティ”を、どちらもそのセットリストのとても重要な位置でカヴァーしていて、どちらも掛け値なしに素晴らしい。こちらも貼っておきたい。このバンドがロックンロール音楽に対する深い敬意と理解で溢れているのが手に取るようにわかるはずだ。

Queen / Lucille

Queen / Tutti Frutti

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ロジャー・テイラーが「エヴリバディ、ロックンロール!」の掛け声の後に、レッド・ツェッペリンが“ロックンロール”で引用したリトル・リチャードの“キープ・ア・ノッキン”のドラム・パターン――ロックンロール・ドラムのすべてを生み出したと言っても過言ではない不世出のドラマー、アール・パーマーのドラム・パターンを踏襲していて、もうこれだけでも落涙しそうになる。ちょっと叩けてませんが。ちょっと脱線しちゃいましたね。本筋に戻りましょう。



2. Bohemian Rhapsody
さすがにこの曲を知らない人はいないだろう。少なくとも曲タイトルくらいは聞いたことがあるはず。冒頭のバラッド・スタイルから東欧民族の旋律を持ったオペラ風コーラスへ。そして、まさにクイーン印のハード・ロック・ブギーへと突入。この凄まじい高揚感。最後はまた再びバラッドに。そのめくるめく展開。すべてが完璧。

こうした形式は、その後のレディオヘッドの“パラノイド・アンドロイド”、くるりの“リバティ&グラヴィティ”にも繋がるもので、その両者がクイーンの熱烈なファンだったことを思えば――特にトム・ヨークはブライアン・メイに憧れて、ギターを弾き始めた――、すべてが腑に落ちる。革新が伝統として受け継がれる不思議。だが、ガキの頃はわからなかった。何だよ、このオペラみたいな変な曲。と毛嫌いしていた。

だが勿論、これはポップ史に燦然と輝く不滅の名曲。彼ら以外のバンドがどれだけ腐心しようとも、そっくりそのまま再現しようとする以外に、どんな形でもカヴァーすることは絶対に不可能な唯一無比の名曲。だが、勿論のこと、クイーン以外のバンドが再現することなどかなわない。だからこそ、絶対に観た方がいい。フレディ・マーキュリー不在の現在、ライヴではどんな風に再現すべきか? を熟考した上での工夫も成されている。

この曲のPVは、6年前にYouTubeのオフィシャル・チャンネルに改めてアップされた後ももうすでに1億回以上も再生されているので、敢えてここでは貼らない。代わりに、86年のウェンブリー・アリーナでのライヴ映像を貼っておきたい。出来ることなら、この場所にいたかった。誰もがそんな風に思うだろう圧巻の映像だ。

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1. We Will Rock You

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さすがにこの曲も誰もが知っているはず。コンサートで、サッカー・スタジアムで、TVで、クラブで、何度となく耳にしたことがあるはず。ストンプが二回、ハンドクラップが一回。たったそれだけのトラックにアカペラ。にもかかわらず、数万人収容のスタジアムを否応なくロックする。一度聴いたら、絶対に忘れない。

この曲は「WE」のためにある。一人称を使ったケツの穴の小さいチンケな歌なんて聴きたくない。音楽はコミューナルな空間を生み出すためにある。そんな風に思わせるに十分な、問答無用のアンセム。この曲が始まったら、どうすればいいかはもうわかってますね。是非、存分に楽しんで下さい。声を枯らして、両手を腫らして下さい。ほんの1分少しの曲ですから。

そして、おそらくステージ最後はこのまま、次の曲になだれ込むはず。これをネタバレなどと言うべからず。てか、これを最後にやらなきゃ、締まるものが締まらねーんだよ! というわけで、最後の曲です。

Encore : We Are the Champions

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この曲のために〈サマーソニック2014〉はあった。そうなる可能性を秘めた曲。まあ、以前はFIFAのオフィシャル・テーマ・ソングになったこともあるし、何度も聴かれすぎて、いろんな形で使われすぎて、まっさらな状態で楽しむには今では難しくなっているかもしれない。だが、この曲は色褪せない。アンセミックなパワー・バラッドという形式はこの曲が生み出したと言っても過言ではない。だが、いかにもフレディ・マーキュリーらしいジャズ風味のコード進行が、この曲を凡百なパワー・バラッドと一線を画することに一役かっている。今、改めてこの曲を聴くと、コーラス中盤にディミニッシュが出てくる辺りからのコード進行は、まさにくるり。

コーラス冒頭こそトニックで始まり、凄まじくユーフォリックな高揚感をもたらすが、次第に不安定なテンションが続くことで、今まさにこの瞬間に感じている勝者のフィーリングの裏で、どれだけの苦渋と辛酸と屈辱と犠牲が折り重なっていったか。この曲はそれを見事に表現している。そして、勿論、この曲の主語は「WE」。かつてフレディ・マーキュリーはこの曲を自分たちのオーディエンスのために書いたと語った。「俺たちは世界の覇者だ」――つまり、この曲の主人公は誰なのか。それを決めるのは、あなた自身だろう。

ビジネスであろうと、スポーツであろうと、どんな競争ももはや不平等な条件でしか行われないことが誰の目にも明らかになってしまった今現在、勝利について歌うのは難しい。勝利を追い求めることは、自分以外の誰かが用意した周到な罠に嵌まることであり、自分以外の誰かを犠牲にすることにほかならない。だが、さまざまな不条理な格差がいろんな形で世界規模で広がる今だからこそ、この曲の存在価値がある。〈サマーソニック〉での体験は、こうした命題に対する何かしらのヒントになるはずだ。是非、楽しんで下さい。

We Will Rock You ~ We Are the Champions





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