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〈エレクトラグライド〉を
120%楽しむための
!!!(チックチックチック)、
最強の15曲  part.2
by SOICHIRO TANAKA November 23, 2013
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〈エレクトラグライド〉を<br />
120%楽しむための<br />
!!!(チックチックチック)、<br />
最強の15曲  part.2

改めて言います。現在の!!!はこれまでの最強のラインナップ、最強のセットリストを持っている。正直、今の!!!を見逃すなんて、ありえない。なので、教えます。チックチックチックの、はじめちょろちょろ、中ぱっぱ、やがて楽しきドロドロの世界。

さあ、エレクトラグライドまで、もう一週間を切りました。わくわくする気持ちにラスト・スパートをかけて行きましょう。準備は整いつつありますか? そんなわけで、エレクトラグライドを120%楽しむための短期集中特集――!!!の重要ステージ・レパートリー15曲を3回に分けてカウントダウン、しかも、ファンも見過ごしがちなライヴ映像でご紹介するという、この企画。今回は中盤戦です。

それにしても、前回はふざけすぎた。反省している。なので、今回はなるべくなら、笑いを排除した方向で行きたい。今からでも遅くない。さらなる予習を兼ねて、それぞれのリンクから!!!作品を買って、当日に備えて下さい。では始めましょう。中盤戦は少しこってり、麺バリ硬、で。


10)GET THAT RHYTHM RIGHT
では、最新作『スリラー』から1曲行こう。まずはひとつめの映像を観て欲しい。この曲は、先日の完全ソールドアウトだった単独公演では、ショーのオープナーとして演奏されたクールなディスコ・トラック。おそらく今回のエレクトラグライドでも一曲目に演奏されるはず。この映像、最初はステージではなく、街路のシーンから始まる感じが、真夜中にパーティに出掛ける際のわくわくしたフィーリングをうまくとらえている。いやあ、焦らすね。憎いね。さすがは、はじめちょろちょろ、中ぱっぱ、やがて楽しきドロドロの世界。我々オーディエンスも、それがわかっているからこそ、ここでは焦らされて、焦らされて、焦らされて、やがてやってくる絶頂を想像しながら、グッとこらえて身悶える。ぷるぷる踊る。

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じゃあ、ふたつめの映像も行っとこう。地元ブルックリンでのステージだ。これは見物。爆笑必至の代物だ。まずニック、いつもと違って、今夜はキメている。見ろ、この半パン。どうやらローリング・ストーンズのアルバム『サム・ガールズ』のジャケットをプリントした半パンだ。絶対にステージに上がる前に楽屋で穿き替えている。さも大事そうに鞄から半パンを取り出したに違いない。それを想像しただけでもうダメだ。しかも、見よ。2分58秒から壮絶なクライマックスがやってくる。我らがニック・オッファー、渾身の新魔球を隠し持っていた。新たなダンスを用意していた。そう、こともあろうに睾丸ダンス。小学生風に言うと、タマキンぷるんぷるん。これはさすがに18禁。女性には見せられない。むしろ見たい女子もいるかもしれない。そして、その睾丸の見事な震えに応える「ふおー」というオーディエンスの歓声。震えるぜ。これは見たい。エレクトラグライドでも是非見たい。ぷるんぷるん。「ふおー」。

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9)YADNUS
笑いを排除するつもりが少しばかり脱線してしまった。改めねば。では、お次は最高傑作『ミス・テイクス』から。さあ、少しばかり沼と化してきますよ。この曲、おそらくはステージ後半の完全沼状態で演奏されるはず。この粘っこいグルーヴ。ドロドロの泥まであとわずか。まずは以前のラインナップの映像から観ていこう。この時代の!!!のライヴの見所のひとつは、現在ではバンドを脱退してしまったドラマー兼セカンド・ヴォーカリスト、ジョン・ピューがステージ上で必要以上に自身をアピールするところにある。彼の音楽家としての才能は認める。この時期の!!!の音楽性を支えていたのは、やはり今では脱退してしまったタイラー・ポープと彼だろう。だが、フロントマンとしてはどうか。おそらくオーディエンスもメンバーも、誰もが「フロントマンはニックに任しときゃいいんじゃね?」と思っていたに違いない。正直、誰も求めていない。にもかかわらず、見よ、1分過ぎた辺りからの渾身のパフォーマンス。このファルセット。この身の悶え。ぷるぷる震えている。彼は完全に自分の世界に入りきっているが、オーディエンスもメンバーも明らかに引いている。この場には居合わせなくて良かった。しかし、この後、ジョン・ピュー渾身のパフォーマンスには凄まじいクライマックスが待っている。5分12秒でのこと。一瞬の出来事なので絶対に見逃さないで欲しい。見よ、壮絶な鼻水噴射。ぶしゅ。

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気を取り直していこう。すっかり肝心の沼グルーヴのことを忘れていた。では、現在の編成によるライヴ映像を見てもらおう。冒頭の二人のルックスに関するツッコミは認めない。どうしたって危険なふたり。風呂上がりのようなマフラー姿。まるで神田川。しかし、演奏が始まってみるとどうだ。あれ? さっきほど暑苦しくない。失ってわかる、身悶えするジョン・ピューの大切さ。沼バンド、!!!も最新作『スリラー』同様、洗練されたということか。だが、変わらぬものもある。以前より遥かに増したものもある。そう、ニックの腹。3分30秒辺りからのニックの腹。妊婦か、狸か。さすがにこれには勝てない。どうだ、!!!最強伝説。じゃんじゃじゃーん。

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8)Californiyeah
では、もう1曲、最新作『スリラー』から行こう。何よりもアルバムからの先行シングル“ワン・ガール/ワン・ボーイ”の印象もあって、洗練されたディスコ・アルバムというイメージの強い『スリラー』だが、このトラックを聴く限り、やはり粘っこいグルーヴは健在だ。まずひとつめはシアトルのラジオ局主催のライヴから。いい。最高にいい。ベース・ラインもギターのフレーズも激ファンキー。だが、余計なことに気がついた。ニックの股間を見ろ。これはニューヨークのライヴでも穿いていた半パン。もしかして、お気に入り? やはり楽屋で穿き替えたのか。しかも、お気に入りの半パンが二枚ほどあって、「今日はどっちの半パンにしようかな?」なんて迷ったりしたのか。想像しただけでもうダメだ。

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今再び、気を取り直していこう。しっかりしよう。たかが半パンじゃないか。で、お次はブダペストのフェスティヴァルでのライヴ映像だ。あ、しまった。困ったことになった。そう、また同じ半パンだ。世界中を旅する、お気に入りの半パン。そんなに気に入ってるのか。だが、正直、それほどの半パンか。また楽屋で穿き替えたのか。几帳面すぎる。しかし、ちゃんと洗濯はしてるのか。ずっと洗ってないのは困る。匂うし。かと言って、ステージがはけた後、ひとりホテルのコインランドリーで半パンを洗濯してる姿も情けない。乾燥機から半パンを取り出して、綺麗にたたんでいたらどうしよう。たかが半パン、されど半パン。余計なお世話だ。

演奏に戻ろう。少し音が悪いが許して欲しい。先ほどの地元ブルックリンのライヴと比べれば、ステージもデカい。パフォーマンス自体も明らかに気合いが違う。見よ、3分20秒でのニックの渾身のジャンプ。だが、悲劇はこの直後に待っていた。ニックは3分26秒で後ろ向きに転倒。会場が凍りつく。さんざ半パン半パンと笑われたあげく、今度はこのザマだ。踏んだり蹴ったりとは、まさにこのこと。ニックは明らかに怒っている。笑ったやつは誰だ。書いたやつは誰だ。俺は絶対に許さない。ごめんなさい、僕です。

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このクソ記事をここまで我慢強く読んできた読者の最大の興味と言えば、おそらくこれだろう。「果たしてニックは何枚、半パンを持っているのか?」。いや、違う。ここからどんな凄い沼ファンク・トラックが待っているのか。だが、そこは!!!のライヴに倣って、もう少し焦らしたい。焦らしに焦らしたい。なので、この曲の映像をもうひとつ観ておこう。ベルギーのフェスティヴァルでのライヴ映像だ。ステージもさらにデカい。あ、でも、聡明な皆さんは気がついてしまいましたね。そう、またしても同じ半パン。もはや半パンにしか目が行かなくなってきた。ここまで来ると、おそらく今回のエレクトラグライドにつめかける大観衆の最大の関心事はこれだろう。「もし今回のエレクトラグライドでも、同じ半パンを穿いていたら?」。想像するだに恐ろしい。しかも、もし大観衆の大半がこのクソ記事を読んでいたら? メンバーがステージに登場するなり、凄まじい大爆笑が会場中を包み込むこと必至。困る。さすがにそれは困る。!!!のメンバーには絶対に理解出来ない。何故、誰もが爆笑しているのか。「え、もしかして、社会の窓、空いてた?」と思わず股間をチェックするかもしれない。マズい。さすがにそれはマズい。もはや演奏どころではない。せっかくのエレクトラグライドが台なしだ。なので、ニック、頼む。新しい半パン買ってくれ。

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7)Pardon My Freedom
それにしても、もう何回、半パンと書いただろう。だが、安心して欲しい。残り2曲にはもう半パンは出てこない。ニックが穿いているのは腐った色の黒いパンツだ。これから先はもう沼しかない。大名曲しかない。半パンの入る隙間はない。笑いはいらない。

お次は、彼ら!!!の存在を全世界に知らしめた2ndアルバム『ラウデン・アップ・ナウ』からのトラックだ。もしあなたが!!!のアルバムを揃えるとするなら、まずは3rdアルバム『ミス・テイクス』、お次は最新作『スリラー』、そして、3枚目は間違いなくこの『ラウデン・アップ・ナウ』。いまだファンクよりパンク色の強い、このアルバム。粘っこいグルーヴや完成度では先の二枚に譲るが、その粗野で野卑なサウンドの魅力には抗しがたいものがある。そして、この曲のタイトルが示す通り、アルバム全編にみなぎる「自由にやらしてもらうぜ」という傍若無人なアティチュード。ある意味、ここから!!!というバンドは始まったと言ってもいい。

この曲のリリックの一部を引用しよう。「大統領に言ってやれよ/舐めてみろって/俺のくされチンポを」。おい、半パンの次はチンポかよ! いや、ここは笑うところじゃない。では、何故、彼らは敢えてそんな小汚いことを歌うのか。もう少しだけ引用しよう。「FBIに俺をブラックリストに載せるよう言ってみろよ/だってジョン・レノンは俺ほど危険じゃなかったろ?」、「クリスチャン連中を呼びつけて言ってやれよ/俺はイエス・キリストより背が高いってな」。ここでの彼ら!!!は、あらゆる弾圧、言葉狩りや同調圧力に対して、真正面から疑問を投げ掛けようとしている。この程度のことを歌っただけで何か問題になるなんて、むしろそちらがおかしいんじゃないか。権利と義務という囲いの中での自由=リバティではなく、フリーダムというコンセプトについて今一度議論しようとしている。

それが証拠に、2分51秒から始まるこの曲のコーラス部分はこんな具合だ。「Like I give a fuck, like I give a shit, like I give a fuck about that shit. Like I give a fuck about that motherfucking shit」――人前では言ってはいけない言葉の連投に次ぐ連投。だが、気にするな。好き放題、小汚い言葉を言ってやれ。たかがツイッターごときで、「連投お許し下さい」などと言わねばならない世界を、何故、当たり前と思わねばならないのか。下らない。ふざけるな。「すいませんね、自由で」。リバティではなく、フリーダムというコンセプトはいまだ何かしら意味を持っているはず。「誰かの言うことを聞いたりはしない。と同時に、誰かを言いなりにするつもりなんかない。だが、好きにさせてもらう。負けるつもりもないが、勝ちたいとも思わない。ただ俺達は、好きな勝手にやらせてもらうぜ」——そんな自由があってもいいはずだ。少なくとも音楽の中では。そう、半パン姿で歩いてもいい。少なくともステージの上では。外はダメだ。そうか! そういうことか。つまり、あの半パンはそういうことなのか。そんなわけない。

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僕が居合わせた今年の日本ツアー追加公演ではこの曲は演奏されていない。だが、このシドニー公演では演っている。パフォーマンスも素晴らしい。今回のエレクトラグライドでは是非聴きたい。


6)All My Heroes Are Weirdos
この企画、中盤戦最後は3rdアルバム『ミス・テイクス』から1曲観ておこう。もうここからは下らない冗談はない。半パンのことは忘れて、地獄の沼グルーヴにただただ痺れてくれればいい。誰も邪魔しない。このグルーヴの中では誰もが自由だ。何も気にすることはない。だが、ダサい踊りはするな。ぴょんぴょん跳ぶな。ガキじゃあるまいし。踊れ。腰で踊れ。腹が出てたっていい。セクシーに踊れ。そして、会場に来れないあなたは、その事実をただ呪ってくれればいい。

この曲は、先の日本ツアーでは1曲目“ゲット・ザット・リズム・ライト”で焦らしに焦らしたあげく、一瞬にしてフロアを発火させるべく演奏された。長尺のファンク・ソングを得意する彼らからすれば、かなり珍しい3分台。あっという間に終わる。ある意味、これはパンク。がちがちにこわばったファンク。バンド・アンサンブルがいまだ稚拙な時代の産物だ。最新作『スリラー』のスムースなグルーヴとは対照的。だからこそ、現在の!!!のステージは素晴らしい。パンクとファンクが交錯し、祝福と怒りが混じりあい、理想と情欲がドロドロに溶け合う、マインド・ベンディングな底なし沼。曲の後半、3分0秒にニック得意の腹見せサーヴィスもあるにはあるが、そんなことはどうでもいい。

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最後に、この曲についてのニック・オッファーの言葉を引用しておこう。「俺たちはずっと、最高にファンキーで、最高に奇妙で、最高にポップなものを作りたいと思ってきた。俺たちずっとフリーク・ミュージックに惹かれてきたんだよ。でも、わかるだろ? 最高のポップスって、すごく奇妙なものなんだ。ほら、ビートルズもプリンスもアウトキャストもね。だから、俺が『俺のヒーローは全員が変人だ』って言う時は、そういう偉大な変人達のことを言ってるんだよ」――この言葉の通り、!!!の音楽は、あらゆるフリークネスを賛美し、祝福する。「普通」だの、誤用されたリテラシーだの、そんな同調圧力に惑わされるんじゃない。フォトショップで加工した美しさなんかじゃ興奮しない。自分自身が奇妙であること、フリークスであること、変態であることを、最大限に利用し、「美しさ」を再定義しろ。そう、俺のヒーローは誰もが変態だ。確かに、あの半パンで外を歩いてたら変態だ。そうか! そういうことか。つまり、あの半パンはそういうことなのか。そんなわけない。

さあ、地獄の沼ファンクに浸りきることの出来る最高の夜まで、もう一週間を切りました。週明け前半には完結編、Part3もアップします。残りの5曲はさらに輪をかけて、凄いぜ。震えて待て、ジョン・ピュー並みに。ぷるぷる。ついでに、鼻水噴射、ぶしゅ。


「〈エレクトラグライド〉を120%楽しむための!!!(チックチックチック)、最強の15曲  part.3」

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