2013年に世界を震撼させた一大ポップ・センセーション――それは間違いなくニュージーランド出身の17歳、ロードだった。第56回グラミー賞で二冠の栄誉に輝いた彼女は、なぜこれほどまでの熱狂を引き起こしたのか?その理由はここにある。
1. すでに世界中のリスナーの傍らにロードの歌は寄り添っている
なぜ、今、世界中の誰もが彼女のことをナンバー1だと認めているのか? それはすでに歴史が証明しているから。ロードのシングル“ロイヤルズ”は、全米シングル・チャート9週連続第1位という記録を達成。『タイムス』誌が選ぶ「もっとも影響力のある10代」では1位に選ばれ、第56回グラミー賞においては年間最優秀楽曲賞と最優秀ポップ・ソロ・パフォーマンス賞の二冠に輝いている。この目を見張るような快挙には世界中が色めき立った。下の映像はグラミー主要部門のひとつ、年間最優秀楽曲賞を受賞したときの様子。
2. ロードは自作するシンガーソングライター。しかもまだ17歳
世界中のリスナーをとりこにしたのは、まずは彼女の透き通った声。ダフィーの“ウォリック・アヴェニュー”を歌うロードの声に魅せられた業界関係者が見初め、彼女は13歳にして音楽レーベルと契約を果たしている。しかも、彼女はソングライティング・パートナーのジョエル・リトルとともに、すべての楽曲を自分自身で書いている。歌唱力とソングライティング能力――ロードはその両方を兼ね備えた希有な才能なのだ。
3. どこまでもポップ!しかもカッティング・エッジな音楽性
「トップ40に入っている曲は何でも聴いている」というロードだが、それと同時にケンドリック・ラマーやカニエ・ウェストをはじめとしたエッジーなヒップホップ、さらにはジェイムス・ブレイクやブリアルといったアンダーグラウンドなクラブ・ミュージックも愛聴している。そういった彼女のテイストが、『ピュア・ヒロイン』を凡庸なポップ・アルバムとは一線を画するものにしたのは間違いない。ミニマムなビートとダークなアンビエンスを軸とする削ぎ落とされたサウンドだが、どこまでもポップ――そんなジャンルの壁を越えたカッティング・エッジな音楽性だからこそ、世界中の音楽ファンがとりこになった。
4. 幾多のパーティ・ポップとは一線を画したグルーミーなムード
ロードの音楽性の新しさは、多くのパーティ・ポップと一線を画する落ち着いたフィーリングにある。「私はダンサーじゃないの。私は立って、おしゃべりするだけ」。「私の曲はクラブで腰を振るようなポップではなくて、皆が面白いと思ってくれるようなことを言おうとしているの」。ひとりベッドルームで聴くのにも打ってつけの、少しばかりグルーミーで、親密な雰囲気――ひんやりとした大理石の心地よい冷たさと、羽毛のような温かさを併せ持った、聴き手にそっと寄り添うような耳障りを持っているからこそ、多くのリスナーが魅了されているのだ。
5. 「フィメール・ポップ新潮流」を牽引する新世代的な存在感
2013年になって世代交代が一気に進んだフィメール・ポップの世界。ロードの“ロイヤルズ”がマイリー・サイラスの“レッキング・ボール”やケイティ・ペリーの“ロアー”と入れ替わり、ビルボード誌の〈ホット100〉で一位の座をしとめたのは象徴的だ。「フリートウッド・マックとTLCの出会い」とも呼ばれる、やはり新世代のフィメール・バンド=ハイムとともに、シェリル・クロウの“ストロング・イナフ”をカヴァーして、新世代フィメール・ポップの台頭を印象づけたロード。彼女こそが、そうした新たなトレンドの象徴的存在なのは言うまでもない。下の映像が、そのハイムと共演したときのものだ。
6. 多くの「同世代アーティスト」が彼女の声に耳を傾けている
世界中のティーンエイジャーからの熱狂的な支持のみならず、ロードの1stアルバム『ピュア・ヒロイン』は多くの評論家たちから、「世代を代表するアルバム」と評されている。それが証拠に、カーリー・レイ・ジェプセンやスカイ・フェレーラ、グライムスのような同世代のフィメール・アーティストたちを筆頭に、映画『キック・アス』で人気を博した女優クロエ・グレース・モレッツ、ABCファミリー製作の人気ドラマ『プリティ・リトル・ ライアーズ』で知られるモデル/女優アシュレイ・ベンソンも、ロードの熱烈なファン。
7. 「豪華な暮らしよりも大切なものは何?」というメッセージ
ロードの音楽が同世代の女性たちをとりこにしたのは、彼女の書く歌詞の世界――ゆったりとリラックスしたフィーリングの音楽性なのに、鋭い視点の言葉を持っていることも大きい。「歌詞は、私の友人や私の人生について書いてる。妙な社会情勢とか、私の年齢でいることの大変さ、孤独について、本当の友人と偽の友人についての私の考えが入っているの」。その代表格が「ゴージャスな暮らしよりも大切なものがある」というメッセージを歌ったメガ・ヒット曲“ロイヤルズ”だ。
8. 「等身大のカジュアルさ」と「詩的な文学性」を併せ持つ言葉
どれだけ大切なことを歌っていてもお説教臭いメッセージ・ソングなんて聴きたくない。だが、彼女の歌が支持されたのは、わかりやすく、カジュアルで、しかも詩的な語り口にある。ロードの母親は詩人のソニア・イェリッチ。「家には沢山の本があって、子供の頃はいつも本を読んでいたわ。私は曲を書き始める前に、短いフィクション小説を書いていたの。10歳の時にレイモンド・カーヴァーを初めて読んで、すごく影響を受けたのよ」。テイラー・スウィフトのような等身大の視点に加えて、文学的なリリシズムも兼ね備えた言葉。それがロードをワン・アンド・オンリーな存在にしているのだ。
9. 新世代代表の「物怖じしない言動」や「独自のスタイリング」
今やフィメール・シンガーたちこそが同世代の女性を代表する「世代の声」としての役割を果たしている時代。そして、ロードもまた、テイラー・スウィフトに向けて、「彼女には完璧なルックスであって欲しくない。彼女は自分の不完全さも同時に表現しているからこそ、素敵だと思う」といった内容の、ひたすら完璧な美しさばかりを追い求める昨今のフォトショップ・カルチャーに異を唱える発言をすることで物議をかもした。また、クラシカルで、ゴシックな彼女のヘアスタイルやスタイリングは、欧米を熱狂させた映画『トワイライト・サーガ』や、HBO製作のダーク・ファンタジー・ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』とも共振する最新のモードだ。
10. 「豊かさ」の在り方を再定義した“ロイヤルズ”の歌詞
ロードは、ジェイ・Zとカニエ・ウェストのアルバム『ウォッチ・ザ・スローン』への反発から、“ロイヤルズ”を書いたという。この曲の中で、彼女は消費文化に溺れるセレブリティたちに異を唱え、「“贅沢”より大事なものがあるんじゃない?」と問いかけることで、世界中から熱狂的な支持を得た。すでに再生回数1億6千万回を越えているこの曲のPVは、日本語字幕付きでも見られる。