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総力特集:
今、どうしても知っておきたい
「スワンズのすべて」
by SOICHIRO TANAKA April 15, 2014
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総力特集:<br />
今、どうしても知っておきたい<br />
「スワンズのすべて」

今の音楽を追うので精一杯なのに、過去の膨大なアーカイヴなんて掘ってる暇ないよ。それにどこから掘ればいいのさ?という疑問に答えます。「今、掘るべきもの、今に繋がるものから」。というわけで、その必要十分条件を満たすキャリア30年以上、今まさに何度目かの絶頂期、過去最大の再評価の波が訪れているスワンズの総力特集ですよん。

今とにかくスワンズがやばい!と、まずは軽佻浮薄で間抜けな振りをしておきましょう。熱心なファンからすれば、何を今さら。しかし、大方の読者からすれば、スワンズという名前は知ってはいても、とても全貌は把握しきれてはいないに違いない。若い世代の中には、スワンズ、何それ?という方も当然いるはず。だって、スワンズ、及び、その中心人物であるマイケル・ジラの活動の起点は、かの“ノー・ウェイヴ”がニューヨークのローワー・イースト・サイドにおいて勃興した時期に遡ります。ブライアン・イーノが編纂した歴史的コンピレーション『ノー・ニューヨーク』が世に出たのが1978年のこと。要するに、遥か昔でござい。同期とも言えるバンドの代表格はソニック・ユース。つまり、スワンズ自体、活動休止期間も含めると、もはや30年以上のキャリアがある。それゆえ、今さら、それを一から追いかけるのなんて無理!と思われても仕方ない。面倒臭い。そんな時間はない。それはわかる。でも、手っ取り早く何でもわかった気分になりたがるのはネット世代の悪い癖ですよ。などと、老害っぷりを発揮しても仕方がない。

だが、今からでも遅くはない。というか、昨年からのポスト・インダストリアルという潮流を見るにつけ、その源流のひとつでもあるスワンズに触れるのは今が絶好のタイミングなんです。それ以外にもいろんな要素が絡み合い、スワンズ再評価としても、今、間違いなく最大の大波が来ている。なるほど。でも、何から聴きゃあいいの?いい質問だ。そりゃあ、2012年に出た最新作『ザ・シアー』ですよ。とあっさりと答えられるほどに、現在のスワンズは何度目かの絶頂期を迎えている。しかも、こんな風にスワンズ再評価の機運が盛り上がる中、エレクトロニクス音楽の最古参インディ・レーベル〈ミュート〉契約後、初のアルバムとなる新作『トゥ・ビー・カインド』のリリースが5月第一週に控えてさえいる。要するに、キテるんですよ、スワンズ。と、結局、軽佻浮薄。

なので、『サインマグ』としては、ここで皆さんに余計なおせっかいを焼きたい。この絶好のタイミングを機に、スワンズの軌跡をウェブ上に日本語でしっかりとアーカイヴしておきたい。いつの時代にもスワンズという禁断のドブ板を踏み抜くために最適な窓口を作っておきたい。出来ることなら、日本盤リリース元の弱小インディ〈トラフィック〉もサポートしたい。という私事もある。というわけで、お届けします。「何故、今、スワンズなのか?」「てか、ずっとスワンズだったんじゃないの?」を訴えかける総力特集です。

そこで、活動初期の80年代から現在に至るディケイドごとに彼らスワンズの軌跡を多角的に追う4つの記事を筆頭に、彼らの実相に迫ることにしたいと思います。まあ、これは読みごたえありますよ。各ライター陣の筆が乗りすぎて、長尺になってしまう場合も多々あるはず。あ、きちんと映像や音源も貼っていきますから、ご心配なく。しかも、今後、順序立ってアップされていく以下のポストをのんびり、じっくり追ってもらえれば、スワンズの歴史を知ることは、ここ数十年の北米インディ・シーンの歴史における、ひとつの位相を知ることでもあることに気がつくはず。ご期待下さい。

最後にひとつだけリアル・タイム世代の戯言を挟ましてもらうと、80年半ばのレコード店で、スワンズの『フィルス』『コップ』、ソニック・ユースの『バッド・ムーン・ライジング』辺りを発見した時――筆者の場合は高円寺駅前の伝説の貸レコード屋さん、〈パラレル・ハウス〉で借りました――なんて、ホント何の情報もなかったんですから。でもって、「すげー。でも、何これ?」だったんですから。取りあえずジャンクって呼ばれてたんですから。まあ、何の情報もないまま、ただ音楽にぶっ飛ばされるのも、ミュージック・ライフの醍醐味。でも、人が音楽を十二分に享受するのは、やはり何かしらの文脈あってのことなんです。にしても、80年代の原宿には、普通にスワンズが店内に流れてるカフェもあったりしたんだよねー。ありゃあ、さすがに無理あったわー。と、知らなくても、わかんなくても、とにかく涼しい顔で知ったかぶりしなければならなかった時代の昔話。だが、時代は変わった。なので、知って下さい、聴いて下さい、スワンズ。よろしくどうぞ。



スワンズ再評価5つの理由:80年代篇
今へと繋がるレーガン時代のアメリカへ
突きつけられた、理想という名の中指



スワンズ再評価5つの理由:90年代篇
不遇の時代に残した遺産がその種を蒔いた
現行US地下シーンの活況と再評価の機運



スワンズ再評価5つの理由:00年代篇
フリー・フォークの豊かな水脈を掘り当て
世に知らしめたジラと〈ヤング・ゴッド〉



スワンズ再評価5つの理由:10年代篇
「30年の歴史」の記憶を生々しく蘇らせた
US地下シーンの活況。そして最盛期へ



スワンズ再評価5つの理由:人脈篇
自由と開放を希求する気高き白鳥が
紆余曲折の闘争を経て育んだ独自の生態系



スワンズ『トゥ・ビー・カインド』合評

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