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  • People The 1975 by YUYA WATANABE September 30, 2019 1
  • Grimes & i_o Violence by YUYA WATANABE September 30, 2019 2
  • all the good girls go to hell Billie Eilish by YUYA WATANABE September 30, 2019 3
  • The Greatest Lana Del Rey by YUYA WATANABE September 30, 2019 4
  • Old Town Road Lil Nas X by YUYA WATANABE September 30, 2019 5
  • マリリン・マンソン風のゴス・メイクを施したマシュー・ヒーリーが、カメラに向かって叫ぶ。「起きろ、月曜の朝だ/月曜の朝はあと1000回しかこないんだぞ」。国連の報告によると、2030年までに世界の平均気温は産業革命前と比べて1.5℃上昇。このままいけば深刻な気候変動は免れられないのが現状だ。さらにもうひとつの新曲“The 1975 (NOACF)”では、地球温暖化と気候変動の阻止を求めるスウェーデン出身の16歳、グレタ・トゥーンベリのスピーチをフィーチャー。この2曲を聴く限り、どうやらニュー・アルバム『ノーツ・オン・ア・コンディショナル・フォーム』は環境問題を大々的に取り上げた作品になりそうだが、同時に「ピープル」では現在の共和党体制と人種差別を批判し、ストリーミング・サーヴィスやソーシャル・メディアに依存する現代人への警鐘も鳴らしている。わずか2分40秒でこのバンドの政治的なスタンスを明確に表明してみせた、痛烈なハードコア・パンク。

  • 世界最古の軍事戦略書『ジ・アート・オブ・ウォー(孫氏兵法)』をめくり、彼女は静かにこう繰り返す。「ベイビー、それは暴力だよ、暴力……」。気候変動を擬人化した女神についてのコンセプト・アルバムになるという新作『ミス・アンスロポシーン』。グライムスはそのリード・トラック“ヴァイオレンス”のMVでまさにその女神役を演じ、人間と地球の関係性を虐待的なものとして述べている。つまり、ここでいう「ヴァイオレンス」とは人類による環境破壊を指しているのだ。〈マウストラップ〉所属のプロデューサー=i_oと共作したトラックは従来のグライムスらしいエレクトロ・ポップだが、一方で本人によると『ミス・アンスロポシーン』の収録曲はほとんどニュー・メタル的なものになるとのこと。その全容はいまだ掴めないが、いずれにせよ『ミス・アンスロポシーン』はかなりダークな世界観を描いた作品になりそうだ。

  • 真っ白な翼を生やしたビリーが天から一気に落下。石油の沼に墜落して全身が真っ黒に染まった彼女は、その重たい身体を引きずりながら炎のなかを歩き、暗闇の街を焼き払ってゆく。「愚かな人間をなんで私が救わなきゃいけないの?/自分に毒を盛っておきながら、私に救いを求めてるなんて/カリフォルニアでは丘が燃えてる/次は私があんたを無視する番だよ/聞いてなかったとは言わせない」。ビリーはこのMVを9月23日の〈国連気候行動サミット2019〉にむけて発信。自身のインスタグラムで各国の首脳に地球温暖化への迅速な対応を求め、グレタ・トゥーンベリが先導している「気候変動のためのストライキ」に参加するよう、ファンに呼びかけた。ビリー・アイリッシュ、17歳。グレタ・トゥーンベリ、16歳。人類の危機と向き合う彼女たちの声に世界中の若者たちが耳を傾けている。

  • MVを監督したのは、ビリー・アイリッシュ“オール・ザ・グッド・ガールズ・ゴー・トゥ・ヘル”と同じくリッチ・リー。海岸沿いで燃え盛る街がラナの後方に映し出された『ノーマン・ファッキング・ロックウェル!』のアートワークも示唆していたとおり、ラナ・デル・レイがこの曲中で憂いているのは、やはり環境問題だ。「L.Aは炎に包まれ、どんどん暑くなってる」「私は最大の危機に直面してる」。気候変動への危機感を示すのと並行して、ラナはここで現代アメリカの政治/文化的状況についても言及。2018年にハワイを震撼させた、弾道ミサイル発射の誤報。衰退の一途を辿るロックンロールへの思慕。そしてドナルド・トランプへの支持を表明したカニエ・ウェストに対する失望を、ラナはちいさな声で明かしてゆく。西海岸カルチャーへの追憶と、かつての栄光に固執するアメリカ社会への苛立ちが交錯する、静謐なピアノ・バラッド。

  • 8月17日付のビルボード総合チャートで19週連続1位を達成したラップ・ソング“オールド・タウン・ロード”も、じつは気候変動がテーマだったという説が取り沙汰されている。リル・ナズ・Xは同曲の「I got the horses in the back(俺は馬を背負った)」というラインについて「現在進行中の気候変動と水質汚染、そしてこの試練の時代に私たちが目撃している壊滅的な政治的状況」のメタファーだったと自身のツイッターで言及。これについてはさすがに懐疑的な意見も少なくなかった一方、ファンの間では同曲のリリックをめぐる考察が再びヒート・アップ。結果としてこの歌詞をめぐる論争は同曲のロング・ヒットをさらに長期化させただけでなく、彼やビリー・アイリッシュの主なファン層とされるZ世代の気候変動に対する関心の高さを、あらためて証明することにもなった。

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