インターネット・コミュニティから飛び出した新世代のポップ・スターによる、2ndアルバムからのリード・トラック。1stは少しばかりゴシックなニューウェイヴ色が感じられたが、新曲はそのタイトルが連想させるように、もっと明るくポップに弾けている。やや食傷気味に感じられるエレクトロ・ポップ臭がなくなったのも好印象。彼女が大好きと公言しているスパイス・ガールズのDIY版と言ってもいいような、最高に胸躍るポップ・ソングだ。ちなみにPVは東京と横浜で撮影されたそう。
今年はトーフビーツにとって、以前から彼を支えていたコミュニティを超えて一気に注目が集まり始めた年だった……と総括してしまうのは、どうやらまだ早過ぎるようだ。いよいよ11月にリリースされるメジャー・デビュー曲のデモを聴く限り、今年はもう一山ありそうな予感がする。これはメロウでセンチメンタルな彼一流のアーバン・ポップで、新たなアンセムとなる可能性を感じずにはいられない。しかも先日発表された通り、ずっとシークレットにされていたフィーチャリング・シンガーは森高千里!(まだそちらのヴァージョンは30秒強しか聴けない)。今の状況にも変に気負わず、これまで通りの姿勢で、しかし上手くメジャーの力も使うことで贅沢に「ポップス」をやっていこうという彼の姿は、本当に頼もしい。
簡単に言ってしまえば、これはフアン・マクリーンの評価を決定付けた名曲“ハッピー・ハウス”のパート2だ。ここではファットなベースがうねり、あまりタメ感のない性急なビートが駆け抜ける。ファンキーなピアノが跳ね、カットアップされたヴォーカルが飛び交う。そして、ナンシー・ウォンのキュートでパンキッシュな歌声は、この見事なインディ・ハウスにポップな色彩を加えているだろう。ダンス・ミュージックの退廃ではなく楽しさをセレブレートしているような、フアン・マクリーンらしい良質なトラック。特に目新しさはないけれど、安心して身を任せることが出来るはずだ。
ガールズの曲に乗せてジェイミーTがラップをしているような、つまり淡いノスタルジック・ポップのインディ・ヒップホップ・ヴァージョンとでも呼べそうなのが、このオンリー・リアルことナイル・ギャルビンだ。デビュー・シングルの“バックシート・キッサーズ”からはロンドンに暮らす若者の甘く切ない日常がロマンティックに匂い立っていたが、4曲入りの新EP「デイズ・イン・ザ・シティ」収録の“レモネード”は、それよりも少しばかりダークでヘヴィ。ビートは重く、ナイルの口調もよりシリアスだ。これも彼が見ているロンドンのひとつの側面なのだろう。
夏の終わりに届けられたサマー・キャンプの2ndの中でも、このリード・トラックだけは何度聴いても格別に素晴らしい。昔の青春映画を観ているかのようにレトロで甘酸っぱいフィーリングはそのままに、ディスコティックなアレンジをスパイスとして軽く効かせたサウンドには、確実に胸を撃ち抜かれてしまう。巨匠スティーヴン・ストリートをプロデューサーに迎えているが、洗練され過ぎていない適度なローファイ感も絶妙。もう季節はすっかり秋だけれど、晩夏の切なさを湛えたこの曲を聴くのはやめられない。