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  • Doomed Moses Sumney by MASAAKI KOBAYASHI July 05, 2017 1
  • Space Gracie Gray by MASAAKI KOBAYASHI July 05, 2017 2
  • Rich Friends Portugal.The Man by MASAAKI KOBAYASHI July 05, 2017 3
  • Picture Perfect Day Ben Talmi by MASAAKI KOBAYASHI July 05, 2017 4
  • I'm Depressed Ka5sh by MASAAKI KOBAYASHI July 05, 2017 5
  • モーゼス・サムニーは水をいっぱいに張った水槽の中に押し込まれている。最初は、彼の歌声は聴こえても、口は全く動いていないのだが、そのうち、彼の口が歌の歌詞通りに動いていることに気づかされる。ただ、相変わらず、彼がいるのは、ガラス張りの水槽の中なので、その声は、外には聞こえないはずだ。そこで、カメラが少し引いてゆくと、隣にも同じような水槽があり、女性が入っている。サムニーが手を伸ばしても、ガラス面に触れられるのが限界だ。さらに、そこから引いてゆくカメラが捉えた光景が、映画『マトリックス』で描かれていたものと同じなら、このMVで映し出さされている世界のほうが、現実世界なのかもしれない。他人に触れることもできなければ、自分の声も届けることができない彼は、呪われているのだろうか。この曲は、〈ジャグジャグウォー〉との契約も公表されたサムニーのデビュー・アルバム収録予定曲。

  • 画面の左上隅に表示されたマークをクリックし、操作すると、視点を左右方向に360度、(主に)上方向に180度、動かすことのできる、インタラクティヴなMVが、ここ数年でコンスタントに発表されるようになった。その動きを模したカメラワークが活かされているのが、このLAの女性シンガー・ソングライター、グレイシー・グレイのMV。一定以上の距離を置き、互いに背中合わせでピアノに向かう男と女を、カメラをパンするのではなく、敢えて、片方の手元から上方向に180度動かし、その先に相手がいるという見せ方で、遠くはない距離の遠さを強調している。そのうち、フレーム内に収まっていたはずの相手のピアノも、姿も、消えたかと思えば、近寄った場所にいたりして、互いの距離が、限られた(しかし、完全に開かれた)空間内で、予想外に変幻してゆく。そこに何度となく、過去の親密さ(と互いの微妙な表情)を記録したホーム・ムーヴィ的な映像が挟み込まれる。幕切れは、縮めることのできない互いの距離と空間(スペース)を、広大なスペースへとスーッと広げてみせることで、一気に切なさが募ることに。

  • ウェブ・ページを開いた時に出てくる目障りなポップアップ広告。ところが、このMVでは、その広告内で消費文化を謳歌し、いかにも幸福そうに見える美男美女の、普段は我々がお目にかかることのできない実像(笑)が暴かれ、ポップアップ広告にしか目がいかなくなってしまう。ここでは、消費至上主義における幸福感と背中あわせの破壊の欲望のほうを描き切ることに夢中なのだ。この作品を、例えば、YouTubeのウェブサイトで観てしまうと、「MV作品」としてさほど違和感はないかもしれない。が、MV中でも案内されるインタラクティヴ仕様のサイト(http://chardonnayandadderall.com/)に行って、実際にウェブ・ページ大になったこのMVを観てみると、逆に、プレイをクリックしてないのに、ポーチュガル.ザ・マンの楽曲がどこから聴こえてくるの? という感覚に襲われ、肝心の楽曲そのものがポップアップ広告的な存在に化してしまう「錯覚」も面白い。

  • “ピクチャー・パーフェクト・デイ”なるタイトルにあやかって、ピクチャー(この場合は、油彩画だと思われるが)を動かした、もしくは、実写を油彩画風に加工した映像でできたMV。そのどちらかなのかと思いきや、デジタル処理に一切たよらず、ゆうに1,000枚を超える油彩画を描き上げ、それらを使って作られた作品だという。3分半の曲で、千数百枚の絵を使用、つまり、1秒間に使用されているのは、5、6枚の絵ということになるわけで、結果的に、そこから、この独特な動き(スピード)が生まれている。

  • 主に、ネット上で拡散させる、いわゆる「ミーム」をアート・ショーとして提示してみせたのが(一部層からは、強い反感を買ったそうだが)、このキャッシュ(と読む)。そんな彼らしく、このMVでは、タイトルにある「自分、鬱だわ」というお題で、約10人ほどの「ミーマー」による「ミーム」(作品、と呼ぶべきだろうか)を取り込み、全体に、シュールリアルあるいは不条理な感覚が横溢している。とはいえ、それらは、鬱がトレンドだから、あるいは単純なウケ狙いに終始して、行なわれているわけではない。この曲のYouTubeの紹介欄には、自殺予防推進活動を行なう非営利団体の存在とその連絡先が記載されているように、深刻な現実問題としてとらえているのだ。そう、ここ数年で、鬱(からの自殺)が、ラップ曲の主題として取り上げられる機会が目立ってきたのである。

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