●じゃあ、『Face』とは逆に、これまでの作品では、どれが一番考え過ぎて作ってたかも、と感じる?
Ali&「『THIS IS MY SHIT』が一番考え過ぎてたんじゃない?」
JUN「そうなの?」
Ali&「勿論、楽しかったけど。海外に出たいっていうのがあり過ぎてて、トレンドをかなり意識してるし」
JUN「してるの? まあ、僕はそんな考えてないけどね」
Ali&「JUN君はいつも考えてない」
●ハハハッ(笑)。
Ali&「まあ、海外意識したっていうか。僕はね、日本のアーティストも洋楽みたいな音楽をボンッと出して――しかも一瞬遅れているやつじゃなくて、リアルタイムのやつを出して、なおかつそこがロック・フィールドと被っているっていうのを、中学生くらいからずっと、いつか出来たらいいなって思ってたから。そういうのをやりたいっていうのが前提にあった。で、そう思ってる人ってきっといるだろうなって思ってたから、そういう人たちに『うわっ、ヤバい!』みたいな感じになってもらえないかな? って。だから洋楽っぽく作ろうってずっと思ってた。“She”は完全に僕が中学生くらいの時に思い描いてたようなやつ。泣きメロで外人が歌ってて」
JUN「当時はやったもん勝ちだな、みたいな時代感だったし。僕らがやったら一番早いんじゃない? っていう。まだ不器用だったから、何を作ろうみたいなのは、僕はそんなになかったけど」
●ただ、エレクトロの次を提示しなきゃ、っていう気負いがあった時期でもあったじゃない?
JUN「1stではそこまでなってなくない?」
Ali&「いや、僕はそう思ってたね」
JUN「そう? でも、そのまんまやんなかったから、よかったんじゃないの?」
●やっぱり当時の状況としては、海外ではジャスティスとかデジタリズムのアルバムとかが出揃っていたけど、日本からはエレクトロのプロデューサーが出てきていなかった。じゃあ、日本でこういうことが出来るのって誰かいるの? っていう空気で。世間的に。
JUN「うん」
●そういうアーティストがどこかに存在しているのか、メディアの人間は誰もわかってなかった。でも、実際は東京のクラブ・シーンではそういうパーティやDJが出てきてたわけで。当時はデックスピストルズを筆頭にね。Space Lab Yellowでやったボーイズ・ノイズの来日公演に、その辺のDJがみんな出てたじゃん? じゃあ、この中で誰が飛び抜けていくの? っていう空気があって。そこで80KIDZがオリジナル・トラックを作ったら、「こいつら、すごいの作れる!」ってなったわけでしょ?
JUN「なったよね」
●で、一気にガーッと行き始めて、その勢いで1stは駆け抜けてる印象があるから、むしろエレクトロ・オンリーでもまだよかったかもしれないし、むしろちょっと次を探し過ぎてたんじゃないかな? っていうのはあるよ。特にアルバム後半。
Ali&「ああ。“Frankie”とか絶対、次を意識し過ぎてるもんね」
JUN「ちょっとメトロノミーみたいのやりたい、みたいなのがあって。元々インディも好きだったから。MAYUちゃんはレコードでずっと買ってたし、Ali&君もインディ好きの時代あったもんね」
●このアルバムに対する世間からのフィードバックはどう受け止めたの? 国内からでも海外からでもいいけど。自分たちの予想と較べてどうだった?
Ali&「大きかったよ。実際、海外でも結構流れたみたいだし。80KIDZの作品のなかで一番流れたと思う、あのアルバムは。テレビとかでも流れてたって言うし。日本からは見れてないけど(笑)。だから、向こうに住んでたら、いろんなところからブッキングされたんだろうね。でも、日本の新人にエアー代払って、ギャラも払って、っていう金額を出すのもなかなかいないわけでしょ」
●そう言えば、フィルシー・デュークスのミックスCD『ファブリックライヴ48』にも、1stの“Miss Mars”が使われてたよね。
Ali&「そうだ、そうだ」
●『ファブリックライヴ』って超有名なミックスCDシリーズだし、あれは結構すごいなって思った。
JUN「エアロプレーンのマンスリー・フェイヴァリットみたいなチャートでも1位に選ばれたんだよね、“Miss Mars”って。で、その後に出た、エアロプレーンがやったフレンドリー・ファイアーズ“パリス”のリミックスにそれっぽいフレーズが入ってるから、もしかしたら何か影響与えたのかな……って思いたい(笑)」
Ali&「その時も『BBC』の人だったりとか、いろんな人たちがメッセージをくれて、売れてるってこういうことだな、っていうのがわかったよ、海外で」
●周りから見てると、すごく勢いに乗っているなっていう感じがあったけど、それは自分たちの実感としてもあった?
Ali&「一番すごいなと思ったのは〈フジ・ロック〉の時だったよね。あんなに人が来るんだ、日本人でこんなに好きな人いるんだ、って感じじゃなかった? 日本でやってて、裏方の人たちからは『売れててすごい』って超言われてて。でも、現場レベルではそんなに変わんなかったじゃん」
JUN「まあね。リキッドでワンマンができたくらい」
Ali&「それくらいで、DJの現場でのポジショニングとかも、12時、よくて1時、2時とかで。1年前とそんなに環境が変わってなかったの。そういう感じでずっとやってきて、めっちゃ変わったんだな、と実感できたのが〈フジ・ロック〉だったね」
JUN「出た時が初めて〈フジ〉行った時だったから。すごいたくさん人いるな、お父さんもいるわ、って思って(笑)」
Ali&「JUN君のお父さん、来てたからね(笑)」
JUN「リハーサルから来てたから」
●いい話だなー、それ(笑)
80KIDZ interview
キャリア総括篇③:『WEEKEND WARRIOR』
「何この手のひら返し?! からのリスタート」
はこちら。
総力特集:80KIDZ
最高傑作『FACE』までの
全キャリアを合計3万字に及ぶ
インタヴューで徹底総括します