さて、ここからはボーナス・トラック。本編を離れた副読本。エレクトロからは遠く離れた『FACE』をインスパイアした音楽は何か? アルバムを読み解くヒントとなる10作品+αを、二人に挙げてもらった。
Ali&「僕、バウハウスはベスト・オブみたいのでしか聴いてなくて、一枚一枚は知らなかったんだよね。でも最近、時間がある時にユーチューブで見出したら、これがグッと来て。トム・ヨークがこの曲に影響を受けたって書いてあるのも見たんだけど、確かにUKの暗さがめっちゃ出てるし、〈4AD〉の暗さも出てるなと」
●そこが一番惹かれた部分?
Ali&「あとは、その時代でアートを意識して新しいことをやろうとしていた人の音楽を聴こうかな、とは思ってて。“Into The Sun”の途中にグチャグチャッとなるところあるでしょ? ああいうのは、こういった曲を聴いてアレンジを変えたり」
JUN「あの曲の、混沌とした、ウワーッとなる感じとか」
Ali&「サイケ感というか、不協和音的な部分を意識したんだよね」
JUN「今回のアルバムは90’sっぽさがあるっていうけど、これはたぶん90年代の人が影響を受けているものまでさらに掘っていったっていう感じなんじゃないかな」
●“Into The Sun”はインドっぽい感じもするけど、あれはどこから来てるの?
Ali&「二人でインドっぽいのやろうとは言ってたんだよね」
JUN「クラブ・ミュージックでそういうの結構あるじゃん? インドっぽいのは。あの曲で特にこれを意識したってわけじゃないんだけど、今日改めて聴いてインドっぽいなと思ったのは、ケミカル・ブラザーズの『ハンナ』のOSTに入ってる“エスケープ700”。これが結構よくて」
Ali&「僕もケミカルのアルバムでは、このサントラが一番いいと思う」
JUN「僕、このサントラは知らなくて。この前、神戸で一泊した時に、(バーサーカー・チルドレン・クラブの)ダイキの家で半日くらい遊んでたんだよ。その時に、Ali&くんと彼が、これがヤバいって言ってて。で、聴いてみたら、何曲かエッセンスとして取り入れたいな、と思ったんだよね」
●でも、これは世間的にはケミカルの代表作ではないよね?
Ali&「でも、超アートじゃん! ケミカル・ブラザーズにみんなが求めているものと違ったから、あんまり評価されなかったんだと思うけど。今までのケミカルのアルバムで、間を繋ぐためのパッとしない曲ってあるでしょ?(笑)それがちゃんとブラッシュアップされた感じ。変に踊るってことに捉われないで作ってるから、すごくいい」
JUN「自分達のオリジナル・アルバムとして意識して作ってるわけじゃないから、逆に時代性がないっていうか。埋もれてるかもしれないけど、いい内容だと思う」
●でも、俺としては、ケミカル・ブラザーズっぽさは、むしろ“Egyptian Raver”の方に感じてたんだけど。
Ali&「僕も感じてたね」
JUN「僕も感じた(笑)」
Ali&「最初、ケミカルっぽい状態で(JUNに曲のデモを)渡したよね? でも、この曲はむしろこっちかもしれない。僕、このアルバム聴いてたの。ブライアン・イーノがデヴィッド・バーンと一緒にやってるやつ」
●『マイ・ライフ・イン・ザ・ブッシュ・オブ・ゴースツ』だ。
Ali&「トーキング・ヘッズの『リメイン・イン・ライト』は聴いてたんだけど、そっちじゃなくて、アフリカ・ビートが強いやつがあるって知ってて。それはどうなのかな? と思って聴いてたんだよね」
●これは、『リメイン・イン・ライト』をトーキング・ヘッズが作る前に、2人でいろいろフィールド・レコーディングしたアフリカ音楽を使った、世界初のカットアップ・ミュージックだね。作品としてすごいというよりかは、作り方とか、何を参照するかというところではターニング・ポイントっていう。
Ali&「実際、“Egyptian Raver”は、こんな感じでしょ? サンプリングの手法とか、グチャグチャ入れたりとか、変なタイミングでギターが入ったりとか。ギターは途中、JUNくんが入れてくれたんだけど」
Ali&「ずっと僕、位相っていうか、声がグルグル回るような錯覚を生み出すために音をクネクネやりたかったんだよね。それもあのアルバムを聴いてた影響で。でも、僕がブライアン・イーノのを聴いた状態でやると意識しちゃうから、何にも先入観がないJUNくんに、これやって、って渡して。何も説明しないで」
JUN「僕は本当に、それを参照しているのを知らないから。どうしたらこの曲がもっとよくなるか? っていうことだけ考えて、尺を延ばしたり、展開を増やしたりしていってるんだよね」
80KIDZ interview:『FACE』のレシピ篇②
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最高傑作『FACE』までの
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