SIGN OF THE DAY

キャリア20年のサヴァイヴァー、アッシュの
辛口批評家ティム・ウィーラーに訊く、
2010年代ポップ・シーンの見取り図。後編
by SOICHIRO TANAKA March 11, 2016
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キャリア20年のサヴァイヴァー、アッシュの<br />
辛口批評家ティム・ウィーラーに訊く、<br />
2010年代ポップ・シーンの見取り図。後編

キャリア20年のサヴァイヴァー、アッシュの
辛口批評家ティム・ウィーラーに訊く、
2010年代ポップ・シーンの見取り図。前編



>>>以下のツイッター・アンケートで1位になった曲をアッシュが2016年3月開催のジャパン・ツアーで演奏します(アンケートは終了しました)。

「アッシュ究極のベスト・ソング」のアンケート結果はこちら。

「普段あまりライヴでは演奏されない、アッシュの隠れた名曲」のアンケート結果はこちら。

*投票期間:2015年3月9日(水)21:00〜2015年3月16日(水)20:59(予定)
*投票に参加するにはツイッター・アカウントを取得する必要があります。
*投票は1人1回までです。

Ash Japan Tour 2016詳細




●じゃあ、ここ5年間のUKインディやロックについてはどうですか? サヴェージズみたいなバンドは頑張っているけども、決してバンド・シーンは元気ではないですよね。

「かなり停滞してるよね。僕はフォールズやザ・マッカビーズみたいなバンドがやってることが気に入ってる。ああいう風にキャリアを築けるのはクールなんじゃないかな。ゆっくり少しずつビッグになってるから、急に落ちることもない。それってクールだよね?」

Foals / Mountain At My Gates

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「あと僕はずっとアークティック・モンキーズのアレックス・ターナーの歌詞が好きだな。いいバンドだし、ずっとよくなりつづけてる。もしかすると、ここ何年かの間に、急に短期間だけ人気沸騰するみたいなのが少なくなってる代わりに、長期間成功していられるバンドが出てくる土壌みたいなものが生まれつつあるのかもしれない」

●あなた達は2013年にはスマッシング・パンプキンズのウェンブリー・アリーナでのサポートを務めていますが、その時のパンプキンズ、そして、オーディエンスを観て、感じたことを教えて下さい。

「クールだったよ。観客は僕らの観客にかなり近かった気がする。年齢層も含めてね。オーディエンスの大半はアッシュのこともよく知ってたし。まあスマッシング・パンプキンズのセットリストって、とにかく長い上に、長いギター・ソロが挟まれたりもするんだけど。まあ、僕はギター・ソロ好きだから問題ない。長すぎなければ(笑)。だから、できれば僕が彼らのセットリストを作って、1時間10分とかに短縮できるといいんだけど。だと、最高のギグにできるのに(笑)。3時間のライヴとかじゃなくてね」

Ash / Orpheus~Burn Baby Burn (live at Wembley Arena 2013)

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●じゃあ、イギリスのロック・リスナーがオアシス再結成を望む気運についてコメントして下さい。

「予想通りって感じだよね(笑)。オアシスが揉めたりなんだりしてる間も僕はずっと心の底で『そういう筋書きなんだろうな』って思ってた気がする(笑)。さらに大きな話にするためっていうか。ま、でもみんな大好きなバンドだし、再結成したらクールなんじゃない?(笑)」

●マジソン・スクエア・ガーデンで開催されるストーン・ローゼズのライヴって行きます? ストーン・ローゼスが最高の新作を作れるかどうかについて、あなたなら、どちらに賭けますか?

「マジソン・スクエア・ガーデンには行きたいと思ってる。コーチェラでも観たんだけど、あの時はああいうオーディエンスの前で彼らがプレイしてるのがすごく変な感じだったな。ストーン・ローゼズどころか、グランジだって知らないような子たちだったから。彼らがあんなにもタフなライヴをやってるのを見るのは変な気がしたし、本当はそんなの見たくなかった」

The Stone Roses live at Coachella Festival 2013


「でも、NYではもっといいライヴになると思う。ただ、グレイトなレコードは作れないんじゃないかな(笑)。トライしてみるのはいいことなんだろうけど(笑)。まあ、それぞれソロでやった中にはかなりクールなレコードもあるし。う~ん、そこはまだ考えてなかったな。作ってほしい気はするんだけど、どうなるかなあ、って感じ(笑)」

●じゃあ、あなたが、ボンド映画の原作者イアン・フレーミングの伝記ドラマ『Fleming: The Man Who Would Be Bond』の音楽をこれまでずっと映画のスコア音楽を手掛けてきたイラン・エシュケリと共作することになった経緯を教えて下さい。

「イランとは10年くらい前から友達なんだ。僕はずっとサウンドトラックをやるのに興味があって。多分、僕らの曲が映画で使われるようになった頃からだと思う。“ライフ・レス・オーディナリー”とか、ジャッキー・チェンの『レッド・ブロンクス』に“カン・フー”が使われた頃からずっと『映画で自分たちの曲が流れるのって最高!』って思ってたんだ。だから最初は、ただ何かやれないかって話をしてたんだけど、イランとはまず『Ashes』っていう映画を一緒にやって、それから『Spike Island』をやった。『Spike Island』はストーン・ローゼズがやったスパイク・アイランドでのフリー・ギグを背景にした映画で、それもクールだったんだけどね。で、その次が4回シリーズのテレビドラマ『Fleming』だったんだ」

『FLEMING: The Man Who Would Be Bond』トレーラー


「どれも同じ監督(マット・ホワイトクロス)の作品で、彼が僕らとの仕事を楽しんでくれて。僕もサウンドトラックの仕事が好きになった。で、その友達付き合いから『Shaun The Sheep Movie』の話が来たんだ。僕がイランの家で過ごしてる時に、彼があの曲の歌詞で悩んでて、たまたまそこに僕がいたから適当に歌ってみたんだけど、それが結局、あのヴァージョンになったんだよ」

Tim Wheeler / Feels Like Summer (From Shaun the Sheep The Movie)

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「今はジム・ローチっていう監督の作品に取り掛かってるところなんだ。ケン・ローチの息子さんなんだけど。70年代後半を舞台にした、カミング・オブ・エイジの話なんだ。うん、映画のスコアの仕事は大好きだし、ソロ・アルバムは確実にそこから影響を受けてる。あのレコードではより実験的になって、伝統的なポップ・ソングから離れて、少し違うやり方でやってみたからね」

●具体的には、イラン・エシュケリとのコラボレーションはどんな役割分担で、どんなプロセスで進めたんですか?

「まさにコラボレーションで、どういうものにするか、最初から二人で考える感じ。映画の背景をどう音で表現するか、話し合いながら作るんだけど、作業自体は二人ともすごく早いんだ(笑)。イランはストリングス、弦楽のアレンジに優れてるし、音楽理論においてもハイレベルな知識があって。で、そこに僕がギターを持ち込む(笑)。ただ以前に比べると、僕自身、アトモスフェリックなギターを弾くようになったんだ。それってロックンロールの難しいギター・プレイとは違うんだよね。もっとアトモスフェリックで、それもやっぱりシガー・ロスとか、そういう世界からの影響が強いと思う」

●今のアッシュはフルタイムのバンドでもない代わりに欧州でもアメリカでもツアーをする。あなた自身は東海岸のインディ・シーンにも属しながら、アッシュ以外の音楽も手掛けている。今のあなたは、いくつぐらいの音楽コミュニティに属している感じなんでしょう?

「いや、今でもアッシュはフルタイムのバンドだよ。昔とは違うかもしれないけど、別に僕がアッシュを脇にやったとか、そういう感じじゃないんだ。他の二人は子どもがいるから、僕が他のことをやってる間、ゆっくりできるのに満足してるしね。で、僕はいろんなことをやって、多作でいるのが好きなんだよ。うん、確かに僕らはUKシーンの一部だし、同時にNYのコミュニティにも属してる。ここNYにレコーディング・スタジオを持ってるのもクールだしね。僕、『10時間で10曲作ろう』みたいなセッションをよくやるんだ。1日で次々曲を作る。でも大事なのは、その日に友達やバンドとスタジオに集まって、一緒にビールとか飲みながら、作った曲を聴くんだよ。ここにはそういうことを一緒にやれる友達、僕がそういうことを頼めるミュージシャンたちのコミュニティがある。そこは本当に気に入ってるんだ」

●では昨年、アッシュ3人で集結して、アルバム『カブラモ!』を作ると決めた時、出発地点としては音楽的にどんな作品を作ろうと考え、どんなリスナーに語りかけようとしたんでしょうか?

「実際、僕はソロ・アルバムを仕上げた直後にあのアルバムに取り掛かったから……それまでの1年くらいは父が亡くなって、僕は辛い時期を過ごしてた。自分を持ち直すためにソロを作る必要があったんだ。でもその合間に、僕らはアッシュで数ヶ月ツアーにも出てて。ただクリエイティヴなところでは、僕自身、当時はソロ・レコードに集中してたんだよね。だから、ソロを完成してアッシュに戻ってきた時に、アッシュとして曲を書くやり方をもう一度見つけなきゃいけなかった。『カブラモ!』はそうやって始まったんだ」

●なるほど。

「それに時間がしばらくかかったし、どういう方向性で行くのかわかるまでにソングライティング・セッションを何度か繰り返さなきゃいけなかった。あと、アッシュは『A-Z』でかなり実験的になってたから、そこから戻ってきて、自分たちのコアなサウンドをもう一度見つけなきゃいけなかった。最初はそんな感じだったな」

●この質問はプライヴェートな話なので、スルーしてもらってもいいんだけど、ずっと以前からあなたは「ひとりの女性とずっと添い遂げることが出来ないんじゃないか?」という漠然とした不安を抱えてたと思うんですけど、今はそうした不安とはどんな風に折り合いをつけましたか? またそうした一連の体験と、昨年の『カブラモ!』における“マシナリー”、“フリー”、“コクーン”のリリックに対して、どういった影響を与えたのか? それぞれの曲について具体的に教えてください。

「まあ、いろいろあった中で……“コクーン”っていう曲には孤独感があるけど、あれは父を亡くしてどうしていいかわからない感情が大きかったと思う。喪の歌なんだ。父の死を受け入れるのに僕には長い時間が必要だった。で、物事を受け止めようとしながら、一人NYのアパートメントで曲を書いてて、それがコクーン=繭みたいだったんだよ。で、アッシュのアルバムに着手する頃には、そこから何かが浮かび上がってきてほしいと思ってた。だから、“コクーン”には、アルバムが動き出すのを待ちわびるような気持ちもあると思う」

Ash / Cocoon

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「で、“マシナリー”には焦がれるような思いがあるんだけど、あの曲って初めは、『90年代に生きてた人が冷凍保存されて、今目が覚めたらどう思うだろう?』っていうのを想像してたんだ(笑)。生活そのものや人と人との関わり方、関係性みたいなことにものすごく混乱するんじゃないかと思って。そういうことを想像しながら、僕は今の自分のいる場所や、僕自身について考えてたんだと思う。世界と自分との関わりについてね」

Ash / Machinery

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●例えば、あの曲の「Born in the wrong place/Born without your grace/A past I can't erase/I want you, I want you」のようなリリックはどこから出てきたんでしょう?

「まあ、『間違った場所に生まれてきた』っていうのは、周りに溶け込めないっていう気持ちだよね。あと、うまく言えないけど……突然自分がやってきたことは間違ってたんじゃないか、みたいな不安に襲われたり、時には『もう遅すぎる』みたいな気持ちになったりすること(笑)。多分、ミュージシャンでいると、完全にノーマルな人間だとは感じられないんだろうな。特にロック・ミュージシャンだと、他の人たちが住んでるノーマルな現実には生きてないところがある。ほとんどの場合はそれってグレイトなことなんだけど、僕自身、自分を見て『俺はクソガキだ、もうどうしようもない』って思うこともあって(笑)。多分、そういうところから出てきた言葉なんだろうな」

●2010年代後半の5年間、これからのアッシュはどんな活動を、どんな音楽をやっていくバンドになっていくんでしょうか?

「今はすぐにでも次のアルバムを出したいから、とにかくたくさん曲を書こうとしてる。『今の時代にアッシュがバンドとしてどう存在すればいいのか?』をもう一度見つけなきゃいけなかったっていう意味においては、『カブラモ!』はかなり大変なアルバムだったからね。そう、コールドプレイがああいうことをやって、どうにか存在してるような時代にね。でも、勿論、僕は商業的な競争は楽しめるんだよ。以前は『UKのラジオで流れまくる曲を書いてやろう!』っていうのを楽しんでたし、競争の激しいシーン自体は好きなんだ。例えば、デーモン・アルバーンの曲なんか聞くと、彼がすごく競争心のある人だってことがわかるよね?(笑)。まあ、それが不健康なこともあるだろうけど、ほとんどの場合は競争は健康的だろうし」

Damon Albarn / Everyday Robots

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「デーモン・アルバーンを見てると、彼のマインドは確実にまだメインストリームの枠内にあって、でも、『コールドプレイみたいにならずにそれをどうやるか?』っていうのをきちんと考えてる。話を僕らに戻すと、今回、僕はただラジオでかかるためだけにとか、そういう目的のアルバムにはしたくなかったんだ。今、バンドであることがそういうことを意味するなら、僕はもうやりたくない」

●よくわかります。

「だからこそ、僕らは『カブラモ!』を作ったんだ。そうじゃないものとしてね。で、ツアーに出てライヴをやるにつれ、自分たちが今も多くの人々と繋がってることがわかった。だから、『カブラモ!』は僕らがこれからもやっていくための自信を持つためのアルバムだったんだと思う。で、次は、より不安や疑問がないアルバムになるんじゃないかな。今のところ、僕自身クリエイティヴ的にいい感触があるしね」

●わかりました。ところで、映画『アントマン』は観た? そもそも『アントマン』の脚本を書いて、最終的には監督から降ろされたエドガー・ライトは、以前、君が話してくれたことからすると、4人組のアッシュを崩壊させた張本人でもあるわけでしょ。

映画『アントマン』トレーラー

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●彼は当時のシャーロットのボーイフレンドで、彼女のアッシュ脱退をそそのかしたっていう。

「あ、クソ!しまった!その発言、撤回しなきゃ。僕、今は全然彼のせいだとは思ってない。あの時の原因はシャーロットだけマネージャーが違ってたり、もっと彼以外のところにあったと思う」

●了解です(笑)。じゃあ、シャーロットとの今の関係はどんな風なんですか? 何度かロンドンのショーでは共演してるみたいだけど。

Ash with Charlotte Hatherley / A Life Less Ordinary

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「うん、1月にもLAで会ったんだ。すごくいい友達だよ。彼女のことは大好きだし。僕らと一緒にプレイする時、シャーロットはすごく感情的になるんだけど、それがクールなんだよね(笑)。これからはもっと一緒に何か仕事ができるといいけど。ただ同時に、彼女の道はもう僕らとは分かれてしまった気もするんだ。仲はいいんだけどね。それにしても、自分がそんなこと言ってたなんて、気づいてなかったな(笑)。いや、エドガー・ライトはクールな人だよ。悪口撤回!(笑)」


通訳:萩原麻理


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