SIGN OF THE DAY

歴史は夜に作られる!伝説のフェス〈オール
トゥモローズ・パーティーズ〉の伝統を継ぐ
「大人の夜フェス」=〈HCAN〉に行こう!
by YOSHIHARU KOBAYASHI August 14, 2017
歴史は夜に作られる!伝説のフェス〈オール<br />
トゥモローズ・パーティーズ〉の伝統を継ぐ<br />
「大人の夜フェス」=〈HCAN〉に行こう!

今や世界の大型フェスティヴァルの中心はアメリカ。しかも現在のフェスには、〈ウッドストック〉に端を発し、〈グラストンベリー〉などに継承されたヒッピー・カルチャーの名残はほとんどありません。〈コーチェラ〉に代表されるように、現在のフェスはセレブリティたちの夏のレジャー。元AKB48のにゃんにゃんこと小嶋陽菜(田中宗一郎曰く、小嶋陽菜の略称はコジハルではなく、にゃんにゃんと書けとの指示。よくわかりません)が〈コーチェラ〉に足を運んだのは、ロックやインディ・ミュージックに対する理解があったからではなく、世界スケールのセレブリティとしての最低限の身だしなみのひとつ――ということに、日本のインディ・ファンたちは気づかなければなりません。良くも悪くもそれが2010年代後半の世界的フェス事情なのです。

こうした変化の影響もあって、フェスにおけるインディ・アーティストの需要は激減。一部の商業的成功を収めているアクト以外は、スロットからはじき出されるようになりました。1999年にベル・アンド・セバスチャンが開催した〈ボウリー・ウィークエンダー〉をモデルとし、ソニック・ユースやモグワイやトータスなど、同業のアーティストたちからも信頼の厚いアーティストがキュレーターを務めるというスタイルを打ち出したオルタナの桃源郷〈オール・トゥモローズ・パーティーズ〉の理想は遠くになりにけり。しかし、それもまた2010年代後半の世界的フェス事情なのです。

そんな2017年において、〈ホステス・クラブ・オールナイター〉は世界的にも稀に見るインディの祭典です。ポーティスヘッド/ビークのジェフ・バーロウが言うように、今の時代にアクチュアリティのあるエッジーなアクトだけで固められたラインナップは、まさに〈オール・トゥモローズ・パーティーズ〉を彷彿とさせるものでしょう。


ホステス・クラブ・オールナイター影の主役
ポーティスヘッド/ビークの頭脳=ジェフ・
バーロウがポップ音楽の今を一刀両断!前編


なので、東京限定の話になりますが、我々〈サイン・マガジン〉がお勧めする〈サマーソニック〉の楽しみ方は、〈サマーソニック〉東京一日目と〈ホステス・クラブ・オールナイター〉を満喫すること。カルヴィン・ハリスがヘッドライナーを務める〈サマーソニック〉東京一日目は、今のメインストリームの在り方を象徴したラインナップ。一方の〈ホステス・クラブ・オールナイター〉は、2017年に絶対に観ておきたいエッジーなアクトが揃っています。つまり、この一日だけで音楽シーンの「今」がわかる! ということです。

我々がお勧めする〈サマーソニック〉東京一日目の楽しみ方は以下の通りです。ご参考に。


2017年夏の〈サマーソニック〉の主役は
女性アーティスト? 今絶対に観ておきたい
最重要アクト10組を格付けランキング!


では、〈ホステス・クラブ・オールナイター〉の方はどうか? こちらは2つのパターンをお勧めしたいと思います。このアンケートで答えているように、ソニック・ステージとレインボウ・ステージの2ステージある中で、基本的にはソニック・ステージにずっといる、というのが編集部2人の個人的な過ごし方。これがひとつのサンプルとしてわかりやすいですが、楽しみ方としては①ソニック・ステージにずっといる、②レインボウ・ステージにずっといる、のどちらかでしょう。それくらい、今回の〈ホステス・クラブ・オールナイター〉はステージ分けとタイムテーブルが非常によく練られています。以下、具体的に見ていきましょう。




楽しみ方①:SONIC STAGE
まずソニック・ステージは、マシュー・ハーバートのオープニングDJで幕を開け、ホラーズ、セイント・ヴィンセント、マシュー・ハーバートの本番セット、ビークという流れ。まさにオールナイトで観るのにふさわしい夜のムードを湛えた、90年代、2000年代、2010年代を代表する尖鋭的なアクトが並んでいます。

1. St. Vincent
全てのアクトが見逃せない中で、ソニック・ステージのヘッドライナー、セイント・ヴィンセントへの期待が破格なのは言うまでもないでしょう。この日のライヴは、〈フィアー・ザ・フューチャー〉と題されたワールド・ツアーの初日。今のところ発表されている次の公演は10月17日のロンドンで、2ケ月も先。これは世界中のファンが地団駄を踏んで羨む、超プレミア・ライヴなのです。

先日発表された新曲“ニュー・ヨーク”は、「2010年代の新たなギター・ヒーロー」というパブリック・イメージを裏切るギターレスの荘厳なバラッド。それが象徴するように、ライヴでは彼女の最新モードが世界中の誰よりも早く体験できるに違いありません。

St. Vincent / New York

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もちろんライヴではこれまでの名曲もたくさんプレイするはず。なにしろ2年ぶりのライヴなのでセットリストはまったく読めないものの、その極めて多面的な魅力が濃縮されたステージになるはず。是非こちらで予習をどうぞ。


2017年夏の来日自体が奇跡? USインディの
歴史を培い、未来を司る覇者、セイント・
ヴィンセントを理解するための10曲:前編




2. Beak>
ソニック・ステージでセイント・ヴィンセントと並んで「見逃せない」アクトと言えば、ビークです。なにしろ中心人物のジェフ・バーロウは、ポーティスヘッド時代も含め、これがキャリア初来日。まさに私たちは歴史的な瞬間に立ち会うことになるのです。

Beak / Sex Music

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ビークがステージに立つのは3時20分から。クラウトロックやドローンからの反響が強く感じられるそのサウンドは、少しずつ疲労が溜まりながらも、まだ興奮が体に残る深夜から朝方にかけての時間帯に、会場を心地よい陶酔へと誘ってくれるはず。



3. The Horrors
ご存知の方も多い通り、ジェフ・バーロウはホラーズの最高傑作『プライマリー・カラーズ』(2009年)のプロデューサー。ホラーズとビークという、世代を超え、アンダーグラウンド音楽の地下水脈で繋がった2組が同じステージの並びで観られるのは贅沢極まりない。しかもホラーズは、9月22日にリリースする新作『V』で完全復活を遂げる予感に満ちています。


拡張するインダストリアル。また更新された
ポストパンク。ホラーズ新作『V』は世界が
英国シーンの今を発見する決定打となるか?


アルバムからのリード・トラック“マシーン”は、2010年代の新しいインダストリアル。そして、もうひとつの新曲“サムシング・トゥ・リメンバー・ミー・バイ”は、ホラーズ史上屈指の完成度を誇るポップ・ソング。果たして「新しいホラーズ」の全貌は如何に?――その答えにいち早く触れられるのが、この日のライヴなのです。

The Horrors / Machine

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The Horrors / Something To Remember Me By

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4. Matthew Herbert
そしてもちろん、マシュー・ハーバートも忘れてはなりません。ハーバートは、90年代後半にはクリック・ハウスやディープ・ミニマルを先駆けたサウンドを打ち出し、00年代初頭にはジャズのエッセンスを注入したディープ・ハウスを提示。ミレニアム前後のクラブ・ミュージックに、新たなひとつの文脈を持ち込んだ人物。すごい人なんです。

Matthew Herbert / Essential Mix 2015

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セイント・ヴィンセント終了後、ハーバート~ビークとタイムテーブルは進んでいきますが、深い時間にクラブ/ダンス・ミュージック寄りのアクトが続くこの流れこそ、ソニック・ステージの隠れたハイライトになることでしょう。



楽しみ方②:RAINBOW STAGE
もう一方のレインボウ・ステージは、モグワイやライドといった90年代にデビューしたレジェンドから、彼らの流れを受け継ぐスロウコア/シューゲイザーの最新型=シガレッツ・アフター・セックス、ブランク・マスまでを一夜で味わい尽くせるラインナップ。こちらも一本筋が通った、説得力のある流れになっています。

ハイライトは、やはりヘッドライナーのモグワイ、そして21年ぶりの新作『ウェザー・ダイアリーズ』を送り出したライド。このレジェンド2組がレインボウ・ステージの軸であることは疑いようがありません。

1. Mogwai
9月1日に通算9作目の新作『エヴリ・カントリーズ・サン』をリリースするモグワイですが、彼らはいい意味で変わらず、高度安定したバンド。やはりハードコア・ウィル・ネヴァー・ダイなんです。前作『レイヴ・テープス』ではアナログ・シンセの導入でコズミックな感覚を強めていましたが、新作では盟友デイヴ・フリッドマンをプロデューサーに迎え、再びギター・サウンドに重心を戻したという話。今回のライヴでもエクスタティックなホワイト・ノイズの爆発を期待していいでしょう。

Mogwai / Coolverine

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2. Ride
ライドは新作『ウェザー・ダイアリーズ』の完成度の高さから、現在のバンドのコンディションを推して知るべし。初期作に立ち返ったような元祖シューゲイザー・サウンドを打ち出しながらも、プロデューサーであるエロル・アルカンの助力を得て、モダンなエレクトロニクスも適度に取り入れた新作のバランスは理想的。マーク・ガードナーとアンディ・ベルのハーモニーが瑞々しい美しさを失っていないのも、往年のファンにはたまらなかったでしょう。

Ride / Charm Assault

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もっとも、アイドルのようにかわいらしいヴィジュアルだったマークは、今やすっかり坊主頭の中年に。時の流れは残酷です。が、やはりその音楽の輝きは不変なのです。

Ride / live at Pitchfork Music Festival 2017 (Full Set)

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3. Cigarettes After Sex
そして今回、レジェンド2組の脇を固めるのが、シガレッツ・アフター・セックスとブランク・マス。シガレッツはコクトー・ツインズやマイ・ブラッディ・ヴァレンタインの退廃的なロマンティシズムを色濃く受け継ぐバンドで、いわばシューゲイザー/ドリーム・ポップの2017年最新型。深い霧の向こうから鳴り響いてくるような、強烈なエコーで彩られたサウンドは、どこまでも気怠く幻想的。しかも、ライド、モグワイという二大先達を見習うかのように頭頂の髪にも寂寥感を漂わせています。

Cigarettes After Sex / Apocalypse

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そして彼らは、2016年から2017年前半にかけて、世界的にもっともバズった新人ロック・バンドの一組でもあります。その現代性については、こちらの記事で詳しく書いたので併せてどうぞ。


ポスト・オバマ時代のポップ基調モードは
メロウ&ドープ? 絶頂の果て、気怠い憂鬱を
鳴らすシガレッツ・アフター・セックスの闇




4. Blanck Mass
初来日となるブランク・マスは、世界各国で脈々と受け継がれてきたエクスペリメンタルなノイズ・ミュージックの遺伝子を継ぐ存在=ファック・ボタンズのベンジャミン・ジョン・パワーによるソロ・プロジェクト。そのサウンドはファック・ボタンズを遥かに凌ぐほどエクストリームなもの。果てしなく甘美で、恐ろしいほど暴力的。例えるなら、ボアダムスとナイン・インチ・ネイルズとモグワイの出会い。

Blanck Mass / The Rat

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両ステージを通してラストを飾るのが彼ですが、最後の強烈な一発でベスト・アクトの座をかっさらう可能性も十分にあるでしょう。〈ホステス・クラブ・オールナイター〉は、最後の瞬間まで見逃せないのです。



このように見ていくと、〈ホステス・クラブ・オールナイター〉では、ステージごとに異なる文脈で、尖鋭的なインディ・ミュージックの歴史が俯瞰できるラインナップになっているのがわかります。これほどイベント全体でカラーに統一感があり、ヴィジョンがはっきりしているフェスは、近年の日本ではほとんど見られなかったのではないでしょうか。日本の〈オール・トゥモローズ・パーティーズ〉の名に偽りなし。インディの「今」、そして現在へと繋がる歴史の厚みを体感したければ、今年2017年は〈ホステス・クラブ・オールナイター〉一択なのです。


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