SIGN OF THE DAY

コペンハーゲンの地を全世界に知らしめ、
新時代の扉を開いたアイスエイジとは何か?
最初の発見者のひとり、仲真史に訊く。前編
by SOICHIRO TANAKA December 23, 2015
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コペンハーゲンの地を全世界に知らしめ、<br />
新時代の扉を開いたアイスエイジとは何か?<br />
最初の発見者のひとり、仲真史に訊く。前編

新しい才能は然るべき媒介を通して発見される。アイスエイジを筆頭に、〈ポッシュ・アイソレーション〉周辺のデンマーク/コペンハーゲン・シーンをこの島国が発見した時にもそのメカニズムは機能した。

ここ日本におけるアイスエイジの発火点は、間違いなく仲真史と、彼の原宿にあるレコード店〈BIG LOVE〉にある。そこから生まれた小さな波動は、ここ数年のうちに首都圏近郊を中心に、リスナーだけでなく、多くの表現者に対しても確実に波及しつつある。大きなうねりとなる予感をひしひしと感じさせる。

もしかすると、ネットの発達によって、むしろ首都圏と地方との情報格差が著しくなった現在においては、そうした胎動は身近に感じられないかもしれない。だからこそ、この記事を用意した。言うまでもないが、「今、時代の気分はラウド&エクスペリメンタル!」と軽々しくぶち上げずにはいられなかった我々〈サインマグ〉のモードもまた、その発火点からの影響下にある。

彼ら〈BIG LOVE〉がいち早く、もっとも適切な形で、コペンハーゲン・シーンの現状――誰もが生々しいサウンドを持ち、エクスペリメンタルであることを除けば、誰もがまったくバラバラなように見えて、実のところ、透徹した美意識と価値観で繋がっているDIYかつアーティスティックなコミュニティを紹介したことも含め、そこから巻き起こったさまざまな出来事は、10年代前半の世界を俯瞰した際にも、日本のポップ・シーンを語る上でも、決して欠かせないムーヴメントであり、重要な歴史だと我々は考える。

そこで〈サインマグ〉では、〈BIG LOVE〉主宰である仲真史にアイスエイジとの出会いを出発点に話を訊くことで、ここ数年、彼らとコペンハーゲン・シーン全体が提示してきた新たな価値観と、それが現行の世の中に対して、どのような痛烈かつ魅力的な批評として機能しているのか? について探ることにした。

その結果は、アイスエイジというバンドが持つ底なしの魅力とポテンシャル、及び、前述の疑問の実相がきちんと浮き彫りになると同時に、90年代からずっとさまざまなムーヴメントの一部であり続けてきた仲真史という偉大な媒介者の価値観と美意識、そのパースペクティブを垣間見させるものにもなった。

新しい才能は然るべき媒介によって発見される。そして、それは今も更新され、さまざまな形で波及し続けている。




●まずは、仲さんがアイスエイジなり、〈ポッシュ・アイソレーション〉周辺の作家なり、デンマークのシーンを発見したきっかけと時期から教えてもらっていいですか?

「はい。(アイスエイジの)1stアルバム(『ニュー・ブリゲード』)が本国で発売される瞬間くらいだったと思います。多分、普通に海外ブログであのジャケットが出たぐらいですね。それか、1stシングルが出た時。『あっ、後で思うとこのバンドだったんだ』っていうくらいで。1stアルバムが出たのが2011年なので、2010年の年末くらいだったのを覚えてるんですよ。インターネットで音を聴いたんですけど、ハードコアなのか何なのか、最初はわからなくて。キリング・ジョークとか、そういうのも全然思い浮かばなくて。なんでかって言うと、やっぱりそれまでのものとは違ってたから。僕が当時――当時と言ってもリアルタイムではないですけど――(キリング・ジョークとかを)好きだったのに思い出せないくらいわからなかった」

●「わからなかった」という理由は、今ないものだから?

「はい。でも、ちょっと違和感があって。それでもう一回、翌日に気になって彼らのホームページに行ったんです。多分、まだ1ページ目くらいだったと思うんですけど。そしたら、ライヴで血を流してたり、そういうのが見えて。『あ、これは』と思って。それでもう一回聴いたら、『これはすごいんじゃないか?』みたいな感じで。それが2010年くらい」

Iceage / New Brigade

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●当時、2011年前半辺りの時期、〈BIG LOVE〉では、どういうものを軸にレコメンドされていたんですか?

「〈キャプチャード・トラックス〉とか、ワイルド・ナッシングとか、あの辺の時期だったと思うんですよね。そういうのとか、チルウェイヴ後みたいな感じだったと思います。で、アイスエイジを発見した時に覚えているのは、うちの常連の若い子とか集めて、アイスエイジっていうのが今後クルことになりましたからって(笑)。そう宣言したのを覚えてますね(笑)。新しいのを好きな子たちで、しかもよく聴く子たちばっかりなんですけど、みんな、『まだちょっとわからない』みたいな反応でした。まあ、わかるって言ったら逆に嘘っぽいっていうのは向こうもわかってて。でも、一週間後くらいにはみんな夢中になってました」

●仲さん的な文脈からすると、当時、起こっていたこととのリンクも感じつつ、新しいものが出てきた、っていうニュアンスだったんですか? それとも――。

「いや、まったく新しい感じがしました。〈キャプチャード・トラックス〉が出てきた時もそうだったんです。ポップではあるけど、初期はもうちょっとわかりにくかったりしたんで、『これが僕らの中でのメインに行くのか?』っていう感じはありましたから。アイスエイジもそれと同じで、まったく別のものって感じでした」

●実感としては、確信をもって「これだ!」っていうよりは、クエスチョンは浮かんでるんだけど、とにかくドキドキして、気になって仕方がなかった?

「そうですね。いつもそうなんで。クエスチョンからドキドキになって、確信に変わる、みたいな。瞬間的にそうなっていくと思うんですけど。でも、もう(常連のお客さんたちに)聴かせてる時には、『誰が何と言おうと、これは必ずみんな夢中になるから』みたいな感じでした。僕よりみんなの方が夢中になるだろう、と思って」

●実際、1stのレコードをお店に入れた直後っていうのは、それまでのコアな常連さん以外からの反応は、どうだったんですか?

「コアなお客さんが数十人いるんで、それで店頭はバッとなくなるんですけど、ネットの反応は悪かったですね。やっぱり売れない。いつもそうなんですけど。でも結局、アルバムを出すっていう契約をして。最初は、『7インチを出させてくれ』みたいな話をしていたんです。アルバムはもう輸入盤で入れてるし。(アルバムを〈BIG LOVE〉として)日本盤で出すのは初めてだったんですけど、『やっぱりやろう』って。どうしてもアイスエイジだけはやりたいから。で、日本盤を出したんですけど、出す瞬間に〈XL〉とサインしたみたいで、CDは流通出来ないわ……まだ余ってますからね(笑)。でも、LPは自分のとこで、って言われて。それでも、やっぱり反応は……。2枚買ってくれる子とかいるくらいで、濃い人だけでした」

●ただ仲さんにしても、日本盤という形でヴァイナルを作るのは初めてだったわけですよね。それはクエスチョンが確信に変わった部分があったから?

「そうですね」

●でも、具体的に彼らのどういった部分に惹かれたんだと思いますか?

「血を流しているのも、例えば今までもアメリカン・ハードコアとかミクスチャーとか、暴力的なものではあったじゃないですか? でも、それとは違う美しさがあったんで。それが結構びっくりしたんです。僕が好きだった80年代中頃とか、その前くらいのニューウェイヴ、ポストパンクと世界観が一緒だとは思っていなかったんで。それで僕はグッと来た感じですね」

●暴力性と、そこに内在するある種の繊細さ、っていう。

「そうですね。でも、その価値観っていうか、暴力とか死とか、SF的なものって、インダストリアルの時はあったけれど……その時はなんかマジだったじゃないですか? ゴスとかでもそうですけど、それにまったく染まるか、もうどっちかしかなかった。けど、それとは違うストリートな感じがして。それがジーザス&メリー・チェインの初期みたいな感じもして。一番好きなバンドではないですけど、あの瞬間にそれまでの価値観が変わったっていう。それまではヴァージン・プリューンズとか、ああいう化粧した、ロックとニューウェイヴが反逆精神みたいな感じだったんだけど、いきなりストリートというか、現実社会に戻ってきて同じようなことをやるというか。あれは結構びっくりした。それに近いものを感じたんですね。本人に言ったら、ジーザス&メリー・チェインも知らないし、スワンズとかも知らない、って言ってたんですけど。絶対、知ってるけど知らないっていうんですよ」

The Jesus And Mary Chain / Upside Down

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Virgin Prunes / Pagan Lovesong

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●うん、そこは大事ですよね。知ってても、「知らない」って言い張るっていう。

「あと、僕、ロックってルックスが重要だと思うんですけど、エリアス(・ベンダー・ロネンフェルト)は必ずリーダーになるな、と思ったんで。大体、それでベースが太ってたり、ドラムがハゲてたりすると、『これはアカンな』とか(笑)。コールドプレイとか、ああいう良いバンドにはなるけど、僕の好きなタイプのバンドにはならない」

●ハハハッ!

「ちょっとそれっぽい音でも。そういう意味ではアイスエイジは完璧だな、と思ったんで」

●佇まいだけでも「これだ!」って思わせるバンドの系譜の末尾に、今、アイスエイジがひとつあるとすると、仲さんからすると、それ以前の、代表的なバンドというと、どの辺りですか?

「やっぱりジーザス&メリー・チェインとか、あの時代のバンドは結構……〈クリエイション〉の80年代のバンドとか。プライマル・スクリームも特にそうですし。アー写からガツッと来るじゃないですか」

Primal Scream / Gentle Tuesday

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●90年代では? でも、90年代は難しいですよね。

「そうですね。なんかダサかったんで、90年代って。今見ると、ちょっとかっこいいんですけど。そういう美意識が全部なくなった時代だと思うんで」

●グランジもブリットポップも、ファッション的にもカジュアルで、ドレスダウンして、ダサいことを受け入れるようになった。そのドレスダウンすること自体は、あのタイミングではクールだったと思うんですけど。でも、ダサいですよね。カート・コバーンみたいな特別な人を除いては。

「あの頃、買い付けとかも行ってましたけど。モッズ・シーンとかもあって、その辺からブラーっぽいものとか、若いバンドとか出てきたりしてたけど。会ったりしてても、『こいつ、マジでダサい』とか思ってましたよ。やっぱり日本の方がオシャレでしたし、当時は。今見ると一緒みたいなもんに見えるんですけど、なぜか(笑)」

●ハハハッ(笑)。

「2000年代とかもそういう感じだったと……結局、僕、ずっと探してたと思うんですよね。両方ガツッと行ってくれる人を。それがやっぱりアイスエイジで。だから、ジーザス&メリー・チェインを聴いた15歳の時を思い出したというか。“アップサイド・ダウン”の最初のボワーッていうのと、それとボビー・ギレスピーがめっちゃかっこよくて。『あのドラムがバンドやるらしい』って聞いて、輸入盤屋に『ジーザス&メリー・チェインのドラムがやり始めたバンドありますか?』って訊いて、プライマル・スクリームが出てきたのを覚えてるんで。あれ以来の気はします」

●じゃあ、本当に久しぶりですね?

「そうですね。それくらいビックリしましたね。あ、あと、これを言うと本当に勘違いされるけど、フリッパーズ・ギター以来ですね」

●ああー、なるほど。

Flipper's Guitar / 恋とマシンガン (Young, Alive, In love)

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「すごい勘違いされる。でも、敢えて言うんですけど。僕くらいの歳で、ハードコア・パンクも好きで、こういう音楽聴いてるっていうお客さんもいるんですけど、その人も言いますね。『フリッパーズ・ギターの登場は衝撃だった』って。僕にとっても今のアイスエイジみたいなバンドに値したのは彼らくらいかなあ。フリッパーズ・ギターとかも、天才で不良みたいな」

●頭がよくて、センスがよくて、スタイルに固執する、っていう。

「そうですね。だから、フリッパーズ・ギター以来ですね。最初、ロリポップ・ソニックの時に、『うわっ、なんじゃこれ?』って。18歳くらいなんで、かっこつけて、もう洋楽しか聴かないみたいな感じでいたんですけど、『こんなバンドいるんだ?!』って思ったんで。で、その後、東京に出てきてすぐに仲良くなりましたけど、近くにいても本当に――多分、周りに30人くらい仲間がいましたけど、友達だけど神みたいな存在っていうか。何かやってくれる、みたいな」

●アイスエイジのメンバーに実際に会うようになったのは、それからどれくらい経ってからですか?

「来日の時です。2012年の1月ですね」

●じゃあ、彼らが音楽的にどの辺りのサウンドに刺激を受けていたのか?――その時期の仲さんとしては、どんな見立てでした?

「〈ポッシュ〉とかの流れがあるから、ハードコアとかあっちの流れかな、と思っていたんです。音的には、『1stはクリスチャン・デスの1stとかなんだな』とか。あと、キリング・ジョークと。まあ、絶対に本人は言わないですけど。多分、アイスエイジ始めた時って、彼ら全員14歳とか13歳だったわけじゃないですか? その時期を考えると、ちょうどイアン・カーティスの映画とブラック・メタルの本が出たんですよ」

Christian Death / Romeo's Distress

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Killing Joke / Wardance

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●ああー、そうかそうか。

「あれを見て、あれを読んだな、と思ったんですよね。で、方向性がガッて決まったんじゃないか? っていう。勝手な想像ですけどね。なので、〈ファクトリー〉とかああいうのは、すごく影響があったんじゃないかな。そこと、前からあったデンマークのハードコア・シーンがあって、それが混ざってああいう音になったんじゃないか、っていう」

●ちなみに、仲さんはコペンハーゲンに行ったりとかは?

「あ、まだ行ってないです。僕、こうやってアイスエイジのことをしゃべらせてもらっていてあれなんですけど、実はあんまりアーティストと会うのは嫌で」

●わかります、レコードが好きだと、よりそうですよね。

「そうなんですよ。『本当のお前より、僕が思っているお前の方が上だから』っていう(笑)」

●そうそう(笑)。その通り。

「だから、会いたくないんですよね。ガッカリしてマイナスになるだけなんで。そういった意味では、アイスエイジが初めてですね。自分が思っていたより、さらにすごいっていう。ガッカリさせないんですよ。ガッカリするのは、『あ、あの彼女と別れたんだ。あんなに仲良かったのに』っていうことくらいで(笑)」

●じゃあ、来日の時に実際に会ってみて、バンドに対するイメージが更新された部分はありましたか?

「彼らは10代で若かったんで、他のメンバーとかは目を見なかったりしたんですけど、エリアスはパッて近づいてきて、『リリースしてくれてありがとう』みたいな感じで言ってきて。最初、めっちゃ怖いんじゃないか、って思ってたんですよ(笑)。でも、エリアスはそういう仲間意識みたいなのは大事にしてくれるんだな、ってホッとしたんだけど。でも、それから、『そう言えば、〈サマソニ〉決まったんだよね?』っていう話になって。『グリーン・デイと〈ヤフー・トピックス〉に出てたよ、スターじゃん』みたいな話をしたら、すごい苦い顔をしたんです。それで、『あれ?』って」

●(笑)想像つくなあ。

「普通の外人だったら、『やったね!』みたいなことになるじゃないですか? 冗談っぽく。だけど、『ちょっと怒らせたか、これ?』みたいな感じになって。それでその後、スタッフが彼らと話してたら、ギターかベースがもう一回大学に行くからバンド辞める、って言ってて。『えっ、せっかく〈XL〉とサインしたのに勿体ないじゃん』って言ったら、全員で『ノー!』って怒られたみたいで。『ええっ?』っていう。『それはまったく関係ない』みたいに言われて。めっちゃビビりましたよ(笑)。そんなアーティストは会ったことがなかったんで。ストイックというか、ストイックになろうとストイック過ぎる、みたいな。話してると、だんだん他のメンバーは違う面も見せるんですけど、エリアスはそうですね。大体、『メジャーはクソだ』みたいな話で。僕、いつもやっちゃうんですけど、『今度リリースするバンドが人気出てきてよかったんだよね』みたいな話をすると、『いや……』みたいな。『いや、そういう意味じゃない』みたいな(笑)」

●(笑)その辺りのストイックでハードコアなアティテュードっていうのは、エリアスなり、アイスエイジのメンバーに特徴的なものなのか、それとも、デンマークの周辺バンドやシーンに共通するものなのか、どっちですか?

「共通するものになっていると思います。もしかしたら、アイスエイジの影響もあるかもしれないですね。彼らの仲間と、〈ポッシュ・アイソレーション〉のスタイルの中でそれはあるんだと思います。コペンハーゲン・シーンにはアンダーグラウンドがあって、〈メイヘム〉っていう場所にみんな集まってて、ノイズからハードコアから、もうちょっとポップなバンドまで、結構いるんですよ。だから、そのコペンハーゲンの集団の中にいるガールシーカーっていうバンドのジョナス(・フレデリクセン)って奴に、『でも、どうやってそういう風になったの?』って訊いたら、一言、『アイスエイジ』って。それまでバラバラにエクスペリメンタルなものとかあったけど、彼らの登場により、みんなガッて固まった、って言ってて。それは彼らのスタイルというか、エリアスの考えとかスタイルがみんなを惹きつけたんだろうなって。だから、多分、みんな考え方は同じで、今はしっかり統一されてると思います」

●じゃあ、アイスエイジの後、他のバンドや〈ポッシュ・アイソレーション〉周辺というのは、どういう流れで発見していったのか、教えて下さい。

「まずはアイスエイジの1stアルバムを取り寄せてからですね。〈ポッシュ・アイソレーション〉から出してたりするんで、〈ポッシュ・アイソレーション〉に連絡取ったりして。元々〈ポッシュ・アイソレーション〉ってハードコアのレーベルなんで、新宿のハードコアのアンダーグラウンドのお店には置いてあったりしたんです。で、うちもノイズとかその辺のやつは、そんなに本格的に扱わなかったし。扱うのも失礼だと思ってたんで。なので、その中でうちに合いそうなやつっていうので、ガールシーカーとか。それは、結果、ラスト・フォー・ユースと合体するんですけど。ラスト・フォー・ユースのヴォーカルのハネスは、別のレーベルでスウェーデンだったんで、元々。で、デンマークの奴らと気が合うんで移り住んじゃった感じなんですけど」

Girlseeker / Snake Eyes

Lust For Youth / Illume

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「その時くらいから、アンダーグラウンドに固辞して活動するようなレーベルやバンドが増えましたね。それまでは、たとえば〈キャプチャード・トラックス〉も、〈クリエイション〉みたいになりたいって思ってたんだろうな、って僕は思うし。でも、その価値観が変わった。僕もそれはすごく影響されてるんですけど。前までは、エリアスに『〈サマソニ〉出るんだよね?』って言って怒られたのと一緒で、好きなことをやって有名になればそれが一番いい、と思ってたんです。けど、今はアンダーグラウンドのままでも世の中にアピールは出来る。〈ダイス〉とか〈セイクレッド・ボーンズ〉っていうレーベルがあるんですけど、やっぱり自分のスタイルは一切変えなかったり。『よし、メジャー行くぞ』みたいなのが昔はあったと思うんですけど、それがない。多少はあると思うんですけど。ゾラ・ジーザスが〈ミュート〉に行ったりとか。で、面白いのは、デンマークだとメインストリームとインディ・シーンが実は近くて、その人たちがレーベルやってたりするんですよ。アイスエイジの1stも、CD盤がデンマークで出たのって〈Tambourhinoceros〉っていうレーベルで。覚えてらっしゃらないかもしれないですけど、UKインディの時に結構人気があったオー・ノー・オノのメンバーがやってて。あそこは、国としてアーティストにお金出したりするじゃないですか? そういった考えが根付いているからか、みんな売れた人たちは下をサポートするのがあるみたいで、アイスエイジみたいなアンダーグラウンドなバンドもそういうのと繋がるんだなって。で、すごいびっくりしたんですけど、そのオー・ノー・オノのヴォーカルのマルテ(・フィッシャー)は、今、ラスト・フォー・ユースなんですよ」

●え?! そうなんですか? 今の今まで知らなかった。

Oh No Ono / Keeping Warm In Cold Country


「日本に来た時、勿論、僕は全然わからなくて。でも、実はそういうことで。オー・ノー・オノは人気だったんで、〈ポッシュ〉なんかからすると、おそらくディスられる対象だったと思うんですよ。けど、彼の方がサポートをして、スタジオとかもあるんで、だんだん仲間になっていて。すごい稀なタイプだとは思うんですけど。そこを受け入れる器があるんだ、〈ポッシュ〉の方に、っていう。逆にそこがすごいな、っていう。これも勝手なイメージで、でも多分、間違えてないと思うんですけど、マルテは、『〈ポッシュ〉すごいな!』と思って、年上だけど歩み寄って、毎日〈ポッシュ〉のレコード屋とかに入り浸って、ライヴハウスとか入り浸って、仲良くなっていくわけじゃないですか? それもすごいですよね。普通だったら、『お前ら若いな、挨拶しろ』みたいな感じなのに。だから、やっぱり、それだけアイスエイジとかのパワーがすごかったんだな、と思いますね」

●アメリカはメインストリームの音楽がアンダーグラウンドの刺激を吸収するじゃないですか。USインディの連中も、例えばダーティ・プロジェクターズにしても、メインストリームのR&Bとかヒップホップを聴いてるし、そこから刺激を受けた音楽をやる。だから、直接的な繋がりはなくても、音楽を媒介にして繋がっているんだけど、日本だとそこが完全に乖離している。でも、今のお話を聞くと、デンマークの場合は、国土が狭いところもあるんでしょうけど、アメリカよりもそこが密なんですね。

「アメリカ人に言わせると、ヨーロッパに憧れるみたいなところがあるみたいで。国とか文化のサポートがすごいし、場所は与えられるし。でも、アメリカはアメリカで、各々がサポートするじゃないですか。でも、日本は国として邪魔するだけだと思うし。それはもしかしたら、アメリカもそうかもしれないですけど。12時までしかやっちゃいけないとか。でも、(日本は)誰もサポートしないじゃないですか? そう思いますね、本当に。金にならなきゃ、っていうのが基本的にあるんで。若い子もわかってないじゃないですか? 親に言わせると、『それは金になるのか? まずは食えるようになってからやれ』とか言われると思うんですけど、『それじゃ駄目だよ、逆なんだよ』って外人に話すとよく言われるんです。彼らはその価値観が本当にわからない、みたいなことを言う。だから、『あ、俺、間違えてないな』って。食えなくてもやった方がいいんだな、と思いますけど(笑)」




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