SIGN OF THE DAY

ミステリー・ジェッツなめんなよ! 仰天の
新作『カーヴ・オブ・ジ・アース』に備え、
10年に渡るキャリアを総ざらいします:後編
by RYOTA TANAKA November 18, 2015
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ミステリー・ジェッツなめんなよ! 仰天の<br />
新作『カーヴ・オブ・ジ・アース』に備え、<br />
10年に渡るキャリアを総ざらいします:後編

では、ここからがミステリー・ジェッツの眩き軌跡、後編。『トゥエンティー・ワン』後の彼らを振り返っていきましょう。おそらく、このあたりからちゃんと追えてない方が多いのでは。


『Serotonin』(2010)

ミステリー・ジェッツなめんなよ! 仰天の<br />
新作『カーヴ・オブ・ジ・アース』に備え、<br />
10年に渡るキャリアを総ざらいします:後編
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2009年にこれまでの〈679〉から〈ラフ・トレード〉へとレーベル移籍が決定。2010年には3rdアルバム『セロトニン』をリリースします。プロデューサーはクリス・トーマス。ジョージ・マーティンの弟子筋であり、ビートルズ晩期やロキシー・ミュージック諸作、セックス・ピストルズの1stに、90年代以降はパルプの作品などを手がけてきた名だたるベテランです。70年代のブリティッシュ・ロックのサウンドとしてわれわれが想像する、中域に寄ったのっぺりとした音像はこの人の特徴。リード・シングルである“フラッシュ・ア・ハングリー・スマイル”を聴けばわかるように、既存のロック・レコードからすれば歪とも言えるデコボコしていた前作の音設計とは180度異なり、バランスのとれたオールドファッションなプロダクションが敷かれています。

Mystery Jets / Flash A Hungry Smile

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実際このアルバム、メロディはよく練られてるし、ブリティッシュ・ロックの王道を行くレコードであることに間違いはない。その一方で、出自を含めその名の通り謎が魅力でもあったミステリー・ジェッツというバンドのアルバムとすれば、ちょっと小さくまとまりすぎたきらいがあります。特に以下のシングル曲のような前作の延長線上にあるダンサンブルな楽曲だとちょっとものたりなさもあったわけです。

Mystery Jets / Dreaming of Another World

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うーん、ビートがのっぺりしすぎてて、グルーヴがない! これじゃあダンスフロアでは門前払いでしょう。期を同じくしてリリースされた、彼らがフィーチャーされたカウント&シンデンのシングル“アフター・ダーク”がすさまじくグルーヴィ、非常に優れたダンス・ポップ・レコードだっただけに、『セロトニン』は良作ではあるものの、気分ど真ん中ではない、そういった印象は否定できませんでした。

The Count & Sinden featuring Mystery Jets / After Dark

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『Radlands』(2012)

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2010年以降、英国はインディ・バンド不遇の時代となったと言えるでしょう。ジーズ・ニュー・ピューリタンズ、フォールズ、ホラーズといったバンドが気を吐くものの、大きな潮流となるムーヴメントはいまだ起きていません。そうしたムードも関係してか、彼らミステリー・ジェッツもインスピレーションを本国以外に求めました。心惹かれたのはアメリカ。2011年の〈サウス・バイ・サウス・ウエスト〉でのライヴ後、テキサスのコロラド河沿いにホーム・スタジオを建築して、新しいアルバムへのレコーディングをスタートします。

2012年の4thアルバム『ラッドランズ』は、カントリーやウェスタンといったアメリカ西部の音楽を探求した作品でした。ソフィー・ローズを女性ヴォーカルに招いた“テイク・ミー・ホエア・ザ・ローゼス・グロウ”やペダル・スティールが味わい深い“ザ・バラッド・オブ・エマーソン・ローンスター”などに今作の方向性が顕著に表れています。

Mystery Jets / Take Me Where The Roses Grow

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また、シングル曲である愉快な“グレイテスト・ヒッツ”やパワフルな“シスター・エヴェレット”では、バンド持ち前のポップ・センスと、土臭くアーシーなサウンドをうまく融合させていました。

Mystery Jets / Greatest Hits

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中堅バンドの4作目として『ラッドランズ』は決して間違ったベクトルではなかったでしょう。実際ソングライティング面での充実度は前作『セロトニン』以上。けれども、やはりサウンドとして渋すぎた。お世辞にもシーンのなかで存在感を示せた作品とは言えませんでした。

さらにリリース後には不動のメンバーであった、イール・パイ島時代からの盟友ベーシスト、カイ・フィッシュがバンドを脱退。ライヴ・メンバーとしてベースでピーター・コクラン、ペダル・スティールでマット・パークが新たに加入します。おそらくバンドにとっては岐路となる決断。その一方で、図らずもライヴ・バンドとしては充実期を迎えることとなります。

この年の11月にはバンド史上最大のキャパとなる8000人収容のロイヤル・アルバート・ホールでライヴが実現。その公演の模様はデータとアナログ盤でリリースされている『ライヴ・アト・ザ・ロイヤル・アルバート・ホール』で入手することができます。また、翌2013年のフェスティヴァル、〈ブリスフィールズ〉では遂にヘッドライナーに。以下の動画にてフル尺のパフォーマンスをご覧いただけます。

Mystery Jets / live at Blisfields Festival 2013


どうです? この見事に熟成されたアンサンブル。ブレインの歌もメンバーの演奏も芳醇。特にウィリアムはほんとにギターがうまい! ちなみにこの〈ブリスフィールズ〉は前編で2005年のライヴを貼ったものと同じフェスティヴァル。あの掘っ立て小屋みたいなステージに初登場したバンドが8年後は大トリとなったわけです。感慨深いですね~。

『Curve of the Earth』(2016)

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2013年のフェスティヴァル・シーズン以降は、ミステリー・ジェッツは僅かのイベント出演を除き活動を潜伏させます。そして、2年間の隠遁の最中に突如飛び込んできたのが〈ホステス・クラブ・ウィークエンダー〉での来日ライヴのアナウンス、続いて来年1月の5thアルバム『カーヴ・オブ・ジ・アース』リリースの報でした。

Mystery Jets Album / Curve of the Earth Trailer

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正直、上記トレイラーからはまったく予想ができない! ドラムの鳴りやシンセの広がりから察するに、これまでよりも大きなスケールでサイケへと向かった作品と想像出来るかもしれません。だって、もう宇宙まで行っちゃってるし。これまでテムズ河での思春期や古きアメリカへの憧憬を歌ってきたバンドを思えば、間違いなく一大変化作となっていることは間違いないでしょう。現在伝えられている概要は、スティーブ・ジョブズがスピーチで引いたことで知られる「ステイ・ハングリー、ステイ・フーリッシュ」の引用元『全地球カタログ』の監修者、スチュワート・ブランドの思想が作品の大きなインスピレーションとなっているということ。彼は環境を損なうことなく持続可能な社会を目指すサスティナブル・リビングの提唱者であり、ヒッピー文化とハッカー文化の接続点でもある科学者。新作におけるサイケ(トリッピー?)という見立てもあながち間違ってないかもしれません。

また、バンド自らが語るに、新作に課したハードルは「自分たちが過去に挑戦してきた音楽をものさし」として「これまでに作ったことのない」「本来の意味で大胆なレコード」にすることだったそう。『ラッドランズ』というアメリカ=外の世界に傾倒した作品を作ったことで、自分たち自身の世界の探求へと興味が向かっていったとのことです。また、新しいベーシストとして、ジャック・フラナガンがメンバーに加入したことで、10代前半で結成されすでに20年選手であるバンドに活き活きとしたエネルギーが復活。ウィリアムは「僕らは再び4人のギャングになったんだ」と現在のバンドのムードを表現しています。

そして、新作のテーマについて、彼はこのように話しています。「これまでに失ったものを嘆かない。僕らがまだ人気があるかどうかも関係ない。ただ本当にやりたいことに向き合っていくこと。今作の曲はそういった感情についての音楽なんだ」と。

前述した通り、ミステリー・ジェッツはこの2年間ほとんどライヴをしておらず、それゆえ今回の〈ホステス・クラブ・ウィークエンダー〉でのライヴは、世界的に見て貴重なパフォーマンスです。と言うと、「どうせ日本だからといってちゃんと仕上げてこないセットなんじゃないのー」と訝しがる方がいるかもですが、そこはご安心。彼らはきたる11月10日にロンドンで復活ライヴを開催。本拠地で万全な状態で臨むであろう公演を経ての来日となっています。しかも、上記の新作についての発言から察するに、おそらく完全にニュー・モードで来るはず。本稿で辿ってきた彼らの道筋、その先にある場所を地球最速レヴェルで目撃するチャンス。この10年の彼らの軌跡を知るものなら、これは絶対に見逃せないのではないでしょうか!




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