ハイド・パークでのライヴを最後にストロークス解散?!――そんな見出しの記事が海外メディアから流れてきたのは6月初旬のこと。「うわっ、これはありえるかも」と思いました。正直なところ。ホワイト・ストライプスやLCDサウンドシステムに続き、遂に2000年代を象徴する最後の大物も倒れるのかと。
このニュース、熱心なストロークスのファンはSNSで大騒ぎ。でも、これが初耳だという人も少なくないでしょう。なので、ここで一旦、事の顛末をまとめておきたいと思います。
そもそも2015年は、ストロークス本格再始動の年になるはずでした。4月にはジュリアンがストロークスのレコーディング・スケジュールを調整中と発言し、5~6月にかけて大型フェスのヘッドライナー出演も決定。これはもう年内にもアルバムか? という勢いだったんです。
ところが、5月末に開催されたスペインのフェス〈プリマヴェーラ・サウンド〉でのライヴは不発気味だったという情報が伝わり、その数日後には、2014年で一旦活動に区切りをつけたかに思われたジュリアン・カサブランカス+ザ・ヴォイズが秋の北米ツアーを発表。「あれっ、これはどういうこと? ストロークス再始動じゃないの?」という疑問がファンの頭に浮かんだのも当然。そして、そんなタイミングで流れてきたのが、さっきの解散説だったんです。これはありえるかもな、と思ってしまいますよね?
たぶんすぐ消されると思いますが、その〈プリマヴェーラ・サウンド〉でのライヴを貼っておきましょう。ジュリアンのファッション、相変わらずキテます。最高。
で、先ほどの解散説の火種となったのは、〈BBC 6 ミュージック〉のインタヴューに応えたアルバート・ハモンド・ジュニアの発言でした。詳しくはその発言を引用した元記事を当たってください。確かにそれを読む限り、6月のハイド・パークでのライヴを最後に解散、と取られてもおかしくないことを言っています。
しかし、その記事のリンクを貼って悲しんでいるファンのツイートに対し、アルバートは「トップの引用だけじゃなくて全部をちゃんと読んで」と返信。その後もファンからの「ストロークス辞めないで!」というツイートに、「ハハハ、どこにも行くわけないでしょ」と返答をして、ひとまず騒ぎは沈静化したんですけどね。
ちなみに、「ラスト・ライヴか?」と言われていたライヴ――6月18日にハイド・パークで開催されたフェス〈ブリティッシュ・サマー・タイム〉でのヘッドライナー公演は、かなり盛り上がった模様(アレックス・ターナーやマイルス・ケインも来ていました)。映像はオーディエンス・ショットしかありませんが、比較的見やすいものを貼っておきましょう。めっちゃかっこいいです。
まあ、アルバートの一言でこれだけ騒ぎになるのも、いまだにストロークスが強い求心力を持っている証拠。もう同世代でこんなバンドは他にいないでしょう。それはやっぱりすごい。
で、先ほども少し書いたように、解散の噂に妙な信ぴょう性を与えていたのは、ストロークスの再始動と並行して、各メンバーのソロ活動も活発化していたこと。そう、2015年はストロークス界隈の動きが本当に激しいのです。なので、ここからは、各ソロ/サイド・プロジェクトの動きをまとめて紹介したいと思います。
まずはドラマーのファブリオ・モレッティ。意外にも彼は、スプーンのデジタルEP『インサイド・アウト・リミキシーズ』にリミキサーとして参加。原曲はドリーミーでヒプノティックなトラックでしたが、かなり大胆に音を差し替えてファンキーな仕上がりに。なかなか面白いです。
ベーシストのニコライ・フレイチュアは、ザ・ライクのテネシー・トーマス、オ・ルヴォワール・シモーヌのエリカ・スプリング、そしてギタリストのルイス・ラザーと一緒にサマー・ムーンというバンドを結成。オシャレなメンバーですね。
最初に発表したトラック“ハプニン”は、ダークでパーカッシヴなポストパンク。ジョイ・ディヴィジョンと3rd以降のストロークスを混ぜ合わせたような感じでしょうか。
そして、こちらもダンス・フィールを湛えたポストパンク調。この曲は、アレクサ・チャンと〈AGジーンズ〉のコラボ商品のコマーシャルに使われていました。やっぱりオシャレです。
先述した通り、ジュリアンは今秋にザ・ヴォイズとの北米ツアーを敢行。その発表に合わせて、昨年リリースした傑作『ティラニー』から“ヒューマン・サッドネス”のMVを公開しました。アトモスフェリックなサウンドの中をメタル・ギターが飛び交い、ジュリアンが咆哮する11分弱のエピック。映像も負けず劣らず強烈です。
そして、こちらの記事でも取り上げましたが、アルバート・ハモンド・ジュニアは7月29日に7年ぶりのソロ・アルバム『モメンタリー・マスターズ』をリリース。どこか人懐っこい雰囲気は相変わらずのアルバートらしさを感じさせつつも、ソングライティングはいつになく充実している印象。いわゆるインディっぽさが減退していて、オーセンティックなムードが漂っているのが今の気分ですね。10月には来日も決定しています。
と、ざっとこの7ヶ月を振り返っても、ストロークス関連の話題は尽きることがありません。というか、まだまだ今後の展開も気になるものばかり。サマー・ムーンはフル・アルバムも出すの? ファブはリトル・ジョイでまた動き出さないの? キャンセルになったジュリアンの再来日は? ニック・ヴァレンシはやっぱりソロはやらないんだね! などなど。ということで、2015年の後半も彼らの動向には要注目! です。
USインディの時代の終焉? 十数年ぶりの
変化の兆しが囁かれる中、アルバート・
ハモンド・ジュニアの新作がジャストな理由
総力特集:
ゼロ年代を変えたストロークス
その頭脳、ジュリアンの頭の中