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SO LONG, SEE YOU TOMORROW Bombay Bicycle Club (Hostess) by AKIHIRO AOYAMA
YOSHIHARU KOBAYASHI
February 20, 2014
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SO LONG, SEE YOU TOMORROW

旅路の末に儚げな少年から凛々しい青年の顔に成長を遂げた
バンドを待っていたのは、全英1位というホームの手厚い祝福

人生に一度しか訪れない10代のひと時をなぞるように、わずか1年ほどで散ったアンダーエイジ・シーンの残り香を身にまとったインディ・ロック作『アイ・ハド・ザ・ブルーズ・バット・アイ・シュック・ゼム・ルース』で2009年にデビューし、翌2010年にはニュー・フォークに寄る辺を求めたかのようなアコースティック・アルバム『フローズ』を上梓。さらに2011年にはベン・アレンとジム・アビスを共同プロデューサーに迎えエレクトロニックなプロダクションとビートを強化した3rd『ア・ディファレント・カインド・オブ・フィックス』リリースと、ほぼ1年おきに性急な創作活動を続けてきたボンベイ・バイシクル・クラブというバンドには、これまでどこかフラジャイルで線の細いイメージがつきまとっていた。それはおそらく、いかにもロンドンの中産階級らしい上品なルックスや、フロントマン=ジャック・ステッドマンの特徴的なヴィブラート、そして確固たるルーツを持たず作品ごとに変遷する音楽性などに端を発した印象だっただろう。

そんな彼らにとって、3年のスパンを経て完成させた4thアルバム『ソー・ロング、シー・ユー・トゥモロー』は、以前の儚げなイメージを払拭する力強い筆致で、「ボンベイ・バイシクル・クラブのサウンド」を確立した記念碑とも言うべき1枚だ。ジャックの特徴的な歌声や上品で洗練された音楽センスなど、彼らの根本的な魅力はそのままに、前作で芽生えたビートへの意識はさらに拡張。爽やかな高揚感を描く“イッツ・オールライト・ナウ”やリード・シングルの“ルナ”といったダンス・トラックから、メトロノミーを連想させる“キャリー・ミー”、ヒップホップ/R&B風ブレイクビーツが鳴る“ホーム・バイ・ナウ”と、全編で豊かなリズムが脈打っている。

本作には、前作リリースからレコーディングを開始するまでの休養期間にトルコ、インド、オランダ、そして日本といった外国を回ったジャックの体験が反映されているという。実際にボリウッド音楽をサンプリングしてオリエンタルな風味に仕上げている“フィール”などの楽曲も収録されており、アートワーク、アルバム・タイトル、歌詞と、端々に「旅」のイメージが散りばめられている。そして同時に、本作にはそんな旅のイメージと対比するような形で、「ホーム」と言う単語が頻繁に登場する。おそらくそこには、他国の文化を知ることで改めて母国の文化や自らのアイデンティティを見つめ直したことも反映されているのだろう。

震えるように繊細なタッチでロンドン周辺のインディ・カルチャーと不可分な音楽を鳴らしていたかつての少年たちは、旅路の末に広い見聞と自信を身につけ、見違えるほどに精悍な青年の顔をしてホームへと戻ってきた。そんな彼らを母国の人々は手厚く歓迎し、結果として本作はバンド初となる全英チャート1位を獲得。2008年以降にデビューしたUKバンドのほとんどがセールス面で苦戦を強いられる中、作を追うごとに着実に順位を上げファン層を広げているボンベイ・バイシクル・クラブの愛され方にも、音楽的な成長と同じくらい興味深いモノがあると思う。

文:青山晃大

大物バンドへと王手をかけた「優等生」たちが、
着実な歩みの末、遂に打ち立てたひとつのランドマーク

日本では「アンダーエイジ・シーン」の一員としてそれなりに華々しくデビューしたのをピークに、以降は少しずつ影が薄くなってきているボンベイ・バイシクル・クラブだが、本国イギリスでは正反対の歩みを見せている。新しいアルバムをリリースするたびにチャート・アクションの自己最高記録を更新し、遂に本作では初登場1位を獲得。地元ロンドンではアリーナ級のライヴも成功させ、大物バンドへの仲間入りに王手をかけているのだ。

その音楽的な評価も安定している。ストロークス以降のギター・ロックと90年代USオルタナをヒップホップ的なビート/エディット感をベースに再構築した1st。インディ・フォークへと急展開した2nd。一部楽曲でベン・アレンをプロデューサーに迎え、時流のチルウェイヴへの目配せをしつつ、シンセ&サンプリング/ループも取り入れ始めた3rd。全て1年という短いインターヴァルながらも自らのサウンドを次々と更新し、伸び盛りのバンドの姿を刻んでいった作品群は、賛辞を浴びて当然といったところだろう。

同じアンダーエイジ出身でも、アルバム一枚であえなく解散したケイジャン・ダンス・パーティやレイト・オブ・ザ・ピア、あるいは奇妙な歩みを続けているホワイト・ライズと較べれば、非常に優等生的。もちろんいい意味で。ボンベイ・バイシクル・クラブは決して間違わないし、決してハズさない。それは見事な最新作『ソー・ロング・シー・ユー・トゥモロー』でも同じである。

本作で最も耳を引くのは、シンセ&サンプリング/ループの多用。手法としては3rdの延長線上だが、今回はそれが以前より遥かに前面へと押し出されている。“キャリー・ミー”はシンセ主体のブレイクビーツ・ポップで、“ホーム・バイ・ナウ”はカットアップしたピアノやギターの使い方がエレクトロニカ的と言えるメロウなバラード。50年代ボリウッド映画音楽をサンプリングした“フィール”はファニーでエキゾチックな新機軸だし、“イッツ・オールライト・ナウ”では幾何学的なヴォーカル・ハーモニーがマーチング風ドラムに乗って軽やかに弾ける。アレンジや演奏は、いつもながら緻密にして正確。甘酸っぱさと老成を同時に感じさせるメロディの魅力も相変わらずだ。手堅い成長、だがそれだけでは終わっていない。

初期二作は「4ピースのギター・バンド」という枠組みの中で独自性を打ち出そうと奮闘していた作品だが、3rdでそこからの脱却を図り始め、そして本作ではその新しいスタイルで自らのアイデンティティを打ち立てたと言えるほどに完成度を高めている。そういった意味では、新作は現在までのキャリアにおけるランドマーク。こういったアルバムで初の1位を獲得出来たのは、本当に喜ばしいことだ。

文:小林祥晴

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