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CULTURE II Migos (Universal) by AKIHIRO AOYAMA
SHIHO WATANABE
February 26, 2018
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CULTURE II

栄華を極めるトラップ大帝国に君臨する
皇帝ミーゴスの、したたかな勢力拡大戦略

アメリカのメインストリームを今なお席巻中のトラップ。そのパイオニアであるミーゴスが昨年初頭にリリースしたアルバム『カルチャー』は、言うなれば皇帝によるトラップ大帝国の樹立宣言のようなものだった。超ロング・ヒットを記録したシングル“バッド・アンド・ブージー”に続いて、同アルバムは当然のように全米チャート1位に。それ以降も彼らの快進撃は一向に止まる気配すらない。数々の話題曲への客演、各メンバーのソロ活動を含め、彼らの一挙手一投足がニュースとなり、後進ラッパーからポップ・シーン全体にまで、影響力は今も拡大し続けている。

そのミーゴスが前作からちょうど一年で完成させた最新アルバムは、『カルチャーII』というタイトルからも分かるように、前作の続編的な作品となっている。全24曲106分という、前作の倍近いボリュームからは、彼らが築いたトラップ大帝国の盤石ぶりが伝わってくるようでもある。ただ、本作は稼いだ巨万の富をはたいて、栄華を見せつけるような豪華絢爛なアルバムというわけではない。むしろ、今作の長大なボリュームは、ストリーミング時代に対応した、したたかな戦略と見た方がいいだろう。

アルバム全体ではなく、曲単位で聴取された回数が重要となるストリーミング・サーヴィスでは、トータルの作品性よりもヒット曲を何曲生み出せるかの方が重要となる。その意味で、本作はドレイクが「プレイリスト」と呼んだ『モア・ライフ』と同様に、アルバム全体を通して聴くことよりも、楽曲単位のアピールが重視されている。実際、900万人近いフォロワーを誇るSpotifyのラップ専門プレイリスト〈ラップキャビア〉には、本作の発表週の更新でミーゴスの楽曲が10曲以上も並んでいた。彼らの目論見は見事に成功したと言っていい。

音楽的にも、本作での彼らは現行のポップ・シーンで勢力を広げるための拡大戦略にかなり意識的だ。ムーディでメロウなトラック“ウォーク・イット・トーク・イット”にはドレイクをフィーチャー。リード・シングルの“モータースポート”には、ニッキー・ミナージュとカーディ・Bというヒップホップ界の新旧女王を招聘。ファレル・ウィリアムスがプロデュースを手掛けた“スティア・フライ”ではファレル節炸裂のシンセ・サウンドを乗りこなし、カニエ・ウェストが参加した“BBO(バッド・ビッチ・オンリー)”では彼の初期作を思わせるソウルフルなホーンのループを見事に我が物としている。

その他にも、“ナルコス”ではラテンやダンスホールに目配せし、“エモジ・ア・チェーン”では日本から世界に広がった絵文字をテーマにするなど、現行のポップ・シーンにおける流行が意識された楽曲が多数。そこには、「俺たちならこのトレンドをこう料理する」、あるいは「俺たち3人のマイク・リレーがあれば、どんなトレンドだってミーゴスのオリジナルに仕上げられる」とでも言いたげな自信が透けて見える。

本作のラストは、まさしくトラップ大帝国の「国歌」として用意された“カルチャー・ナショナル・アンセム”で締め括られる。そこで彼らはハゲタカのように文化を食い物にする奴ら=「カルチャー・ヴァルチャー」をあげつらい、「カルチャーのためにやれよ」と繰り返す。そう、どれだけ売れて巨万の富を得ようと、どれだけ有名人になろうと、ミーゴスはセルアウトという言葉とは無縁のままだ。悪ガキ時代から培われたクレバーな知恵と時代を読んだ戦略、自身が生み出したカルチャーに対する絶対的な自信を武器に、ミーゴス率いるトラップ大帝国は躍進を続けている。

文:青山晃大

現行の世界最強ラップ・トリオが守り続ける
クリエイティヴィティの行方は?

こんなにもミーゴスが支持される理由とはなんだろうかとしばしば考えることがある。クエイヴォ、オフセット、テイクオフの3名はそれぞれ叔父・甥・従兄弟という関係であり、そこらの友達同士の絆よりも太く、濃い。一目見てそれと分かるきらびやかさ、三位一体という言葉がぴったりの、三人による息のあったアドリブ(掛け合い)。シンプルで覚えやすいフック、そしてギラギラした輝きを放つカリスマ性……エトセトラエトセトラ。“ヴェルサーチ”でブレイクした時には、ワンヒット・ワンダーで消えてしまうのではないかと危惧したリスナーも多いだろう。“ルック・アット・マイ・ダブ”が流行った時にも、来年には消えているのではないかと世界中のリスナーが思っていたのではないか。ただ、こうしたスマッシュ・ヒットを文字通り踏み台にして、ミーゴスは成長を続けてきた。ヒット曲の多さは、何物にも代えがたい彼らの魅力だ。

2017年初頭に発表した『カルチャー』の爆発的ヒットに押され、去年一年は彼らにとって大きな飛躍となった年であった。数々のツアーやフェス、アウォードへの参加のほか、夥しいほどの客演仕事、クエイヴォはトラヴィス・スコットとのコラボ・アルバム『半チョー・ジャック、ジャック・ハンチョー』のリリース、そして、オフセットは21サヴェージ&メトロ・ブーミンとのコラボ・アルバム『ウィズアウト・ウォーニング』をリリースし、ハードワーカーっぷりを見せつけた。そして、前作からちょうど一年。抜群のタイミングで『カルチャーII』が到着した。しかも、全24曲、通して聴くと計1時間45分という超大作のボリュームである。

前作『カルチャー』からは、リル・ウーズィー・ヴァートのヴァースも光る“バッド・アンド・ブージー”、アトランタの先輩グループ、D4Lのラインを拝借した“Tシャツ”、地元の御仁、グッチ・メインとの“スリッパリー”など、ミーゴスの魅力であるコテコテ感とアトランタ色、そしてサウンドの新しさを絶妙なバランスで掛け合わせたヒット・シングルが連発された。

『カルチャーII』でも、もちろん彼らの「攻めの姿勢」は健在だ。リード・シングル“モータースポート”では、オフセットのフィアンセであり、ビルボード・チャートからお茶の間、そしてソーシャル・メディア界までをも騒がせるNo.1フィメールMCのカーディ・B、そして、カーディとのビーフも噂され、今やポップ・フィールドとヒップホップ・シーンの架け橋としての役目も果たすニッキー・ミナージュという2名のラッパーをゲストに迎え、新たなミーゴス・アンセムとしてシーンに叩きつけた。“メイド・マン”はメロウなトラックに乗せて、サグたちのストラグルをメロディアスにラップするテイクオフのヴァースが印象的な佳曲。“ヴェルサーチ”のリミックス以来の共演が実現したドレイクとの“ウォーク・イット・テイク・イット”も、両者の個性が発揮されているし、カニエ・ウェストが製作に加わり、かつ21サヴェージの存在感が強烈な“BBO(バッド・ビッチ・オンリー)”もフロア映えしそうだ。加えて、冒頭の“ハイヤー・ウィ・ゴー”と最後の“カルチャー・ナショナル・アンセム”は、どちらも大仰なテーマと曲調だが、その分、ミーゴスの3名が背負っている責任や誇り、プライドを感じさせる(なんせ「we create our own sound」と宣言しているし)出来である。

ただ、ファレル・ウィリアムスとの“スティア・フライ”あたりは、わざわざミーゴスのアルバムに収録しなくても良かったのでは? というのが率直な感想。ビッグ・ショーンらトップ・ラッパーたるゲストの面々に関しても納得の布陣ではあるが、コテコテの独創性が功を奏した前作に比べると、ややヒット・チャートに寄せ過ぎた構成になっているように感じてしまう。“オープン・イット・アップ”は明らかに前作に収録された“デッズ”にそっくりだし、「絵文字のデザインをチェーンに仕立てよう」という“エモジ・ア・チェーン”も、いくら何でもそれは幼稚すぎるテーマでは、と感じてしまった。

これを定番のミーゴスらしさと受け取るのか、アイデアの枯渇と捉えるのか、いささか危険なバランスの上に成り立っている作品だとも感じた次第だ。もちろん私は、何といってもミーゴスは世界最強のラップ・グループだと信じているし、今後も彼らが世界をひっくり返すほどのパワフルなヒット曲を発表することも願っている。時代に寄せるのではなく、いつまでも時代の30歩くらい先を牽引するグループであってほしい。そして、本作は『カルチャーII』というタイトルの通り、前作からの続編、という位置付けの作品だ。彼らが「カルチャー」よりも大きな存在にとなり得た時、一体何をテーマとするかは今から楽しみである。

文:渡辺志保

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