SIGN OF THE DAY

遂に時代が巡ってきた?ディスコ/ハウス
回帰の先駆者、ダック・ソースを見逃すな!
by YOSHIHARU KOBAYASHI October 31, 2013
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遂に時代が巡ってきた?ディスコ/ハウス<br />
回帰の先駆者、ダック・ソースを見逃すな!

先日公開されたダック・ソースの新曲“レディオ・ステレオ”は、もうチェックした?パンク/ニューウェイヴ期の名プロデューサー、マーティン・ラシェンが手掛けたメンバーズ“レディオ”をモロ使いした、パーティ・モード全開のビッグ・ハウス・チューン。ピーク・タイムのフロアを遠慮なしにブチ上げること間違いなしのえげつないサウンドは、さすがダック・ソースと唸らざるを得ない。いやあ、お見事!

と勝手に話を進めているけど、「ダック・ソースって誰?」という人もいると思うので、ここで紹介しておこう。何を隠そうダック・ソースとは、NYハウスの帝王にして一時はエレクトロに転身していたアーマンド・ヴァン・ヘルデンと、史上最年少の15歳でDMC優勝の栄冠を手にし、カニエ・ウェストのツアーDJを務めてからエレクトロの世界へと進出したA・トラックによるスーパー・デュオ。デビュー曲は2009年に発表した“エニウェイ(aNYway)”で、とにかくこれが素晴らしかった。79年に送り出されたディスコ/ファンク・クラシック、ファイナル・エディション“アイ・キャン・ドゥ・イット(エイウェイ・ユー・ウォント)”のサビをほぼそのまま拝借した、最高にゴキゲンなディスコ・ハウスなのだが、初めて聴いた時は本当に新鮮だったのを今も覚えている。

この映像を見ても明らかな通り、彼らがやろうとしているのは、ディスコ/ファンク・クラシックスをモダンなハウス・サウンドにアップデートすること。しかも、サンプリング一発で勝負という、オールドスクールなヒップホップ/ハウスの手法へのリスペクトも込められている(思い出そう、彼らはともにヒップホップにルーツを持ち、ハウスへと向かったアーティストだ)。それを「NY流のやり方」と題しているところにも痺れるのだけど、それに加え、これが2009年に出たことはやはり大きい。当時は、アーマンド・ヴァン・ヘルデンが曲提供したディジー・ラスカル“ボンカーズ”の大ヒットに象徴的なように、エレクトロ・ハウス/ポップ全盛の時代。そしてスクリレックスが登場するのが2010年なのだから、まさにこれからEDMがアメリカを席巻しようとしていた時期だった。そんな中、手法/サウンドともにクラブ・ミュージックの原点に立ち返ることを志向してみせたのは、彼らなりの時代の潮流に対する回答だったはず(アーマンドはエレクトロ・ハウス隆盛の片棒を担いではいたけど)。ここで彼らが見せたディスコ回帰は、当時、間違いなく独創的で新しかった。

その後は、「ウウウ、ウ~ウウ、ウウ~ウ~」という超キャッチーなハミングが頭から離れない“バーバラ・ストライサンド”(これもディスコ・サンプルもの。ちなみに、PVにはカニエ・ウェストからファレルやヴァンパイア・ウィークエンドのエズラまでが出演。豪華!)、おバカでお下品でしょーもないPVが最高でファンキーな“ビッグ・バッド・ウルフ”と独自路線を邁進していくが、総じて言えるのは、どれもファニーでユーモアたっぷりのビッグ・チューンだということ。やけにアグレッシヴだったりメランコリックだったりするクラブ・トラックが主流の中、ダンス・ミュージックの楽しさをセレブレートしているような彼らのスタンスは、とても魅力的に映った。音楽的には重なるわけではないものの、そのおバカな楽しさはファットボーイ・スリムさえも髣髴とさせるところがなくもない。

先述の一連のシングルをリリースした後は、しばらく身を潜めていたダック・ソースだが、今年になって見事復活。6月に発表した“イッツ・ユー”に続いて、11月13日に配信がスタートするのが、冒頭で触れた“レディオ・ステレオ”というわけだ。

それにしても、2013年の今ダック・ソースが舞い戻ってきたのは、まさに絶好のタイミングと言っていいのかもしれない。活動当初は孤軍奮闘していた彼らだけれど、ダフト・パンク『ランダム・アクセス・メモリーズ』以降と言っていいのか、ディスコ再評価の機運が高まっている今の空気は、確実にダック・ソースにとって追い風となっている。もちろん、近年のハウス再興の流れも大きな後押しとなっているのは間違いない。戻るべくして戻ってきた、そんな印象だ。

そして、やっと自分たちの時代が巡ってきた彼らは、“レディオ・ステレオ”から間髪空けず、今秋には遂に1stアルバムをリリース!……と報じられていたが、どうやら来年初頭に後ろ倒しになった模様。でも、焦ることはない。おそらく来年にはディスコ、ハウス再興の波は更に高まって、彼らにとって最高のお膳立てが出来ていることだろう。それまでは、つい先日放送された彼らの〈BBC〉エッセンシャル・ミックスでも聴いて、期待を高めていてほしい。前半一時間は自身のトラックで固め、後半一時間は「ダック・ソースっぽい」他のアーティストの曲で固めたミックスは、きっとアルバムのヒントにもなるはず。ちなみに、前半の一時間は『ダック・テープ』というタイトルでフリー・ダウンロードが出来るようになっているけど、後半は〈BBC〉でも視聴期間が終わっているみたいだから、適当に探して聴いてみて。

DUCK SAUCE (ダック・ソース) JPN OFFICIAL WEBSITE

A-トラックとアーマンド・ヴァン・ヘルデンからなるプロデューサーユニット DUCK SAUCE (ダック・ソース)

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