SIGN OF THE DAY

2013年 年間ベスト・アルバム
11位~20位
by all the staff and contributing writers December 19, 2013
2013年 年間ベスト・アルバム<br />
11位~20位


20. Drake / Nothing Was The Same

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悪羅悪羅なピンプ(Pimp)気取りで、ギャルに声をかけまくるわりには、自分の元を離れていったギャルへの未練を引きずりまくる女々しい男(Sissy)。リリックから立ち上がるドレイクの人物像は、上の二語を合わせて“Simp”だと騒がれてきたが、通算3枚目となる本作に対しては、いちいちそこに突っ込みを入れるリスナーもいなくなり、一つのスタイルとして完全に確立された観がある。本作が発表される前から、先行シングル“ホールド・オン・ウィ・アー・ゴーイング・ホーム”を、ブラッド・オレンジ、アークティック・モンキーズ、ホーリー・ゴースト!が次々にカヴァーしていただけでなく、この曲と収録曲“フロム・タイム”の二曲のハウスやガラージ等のリミックスも相次いで発表された。特に後者のリミックスでは、皮肉なことに、ドレイクの声が軒並み排除されていて、本作の音が、いかに世のサウンド・クリエーターたちを興奮させたのか、如実に証明された。(小林雅明)

19. Blood Orange / Cupid Deluxe

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ニュー・レイヴの仇花となったテスト・アイシクルズ、ネブラスカ州オマハへ赴いてカントリー・ロックに興じたライトスピード・チャンピオン、そしてR&Bへ接近したブラッド・オレンジと、節操なくその名義と音楽性を変えてきたデヴ・ハインズだが、決して闇雲に目新しいトレンドに飛びついているというわけではない。ロンドンで移民の両親の元に生まれ、ゲイの友人たちに囲まれて育ったという彼は、言わば“あらかじめ失われた”アイデンティティを探していたのだ。ニューヨークに拠点を移し水を得た魚のように躍動する彼にとって、祖父の暮らすギアナの言葉を冠した“Chamakay”で幕を開ける本作は、試行錯誤がようやく実を結んだと言えるものだったが、そんな矢先に起きた自宅の火災ですべてを失ってしまったことは、悲痛と言うしかない。いや、ガールフレンドのサマンサ・アーバニを筆頭に、ダーティ・プロジェクターズやチェアリフト、カインドネスといった本作に参加する多くの友人たちが、彼に残された何よりの財産だろう。再起を願いたい。(清水祐也)

18. To Be Revealed

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17. DJ Rashad / Double Cup

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シカゴ・ゲットー・ハウスの進化形、ジューク/フットワークの扉を大きく押し広げ、本格的に世界へと開け放った決定打として名を刻まれるであろう重要作。配信オンリーで発表した昨年の『テックライフ・ヴォリューム1 ウェルカム・トゥ・シー』では、おそろしくスカスカで剥き出しの音像が強烈だったが、好調が続く〈ハイパーダブ〉と契約しての初フィジカル・アルバムである本作は、その音の隙間に様々なジャンルを投げ込むかのような果敢な冒険へと乗り出している。ここではアシッド・シンセがブリブリと唸りを上げ、ヒップホップやジャングルのビートと貪欲に接合を果たし、さらにはソウルフルなメロディがほぼ全体に敷き詰められた。従来よりも格段に耳馴染みがいいが、ジューク・マナーに則ったBPM160 / 80の刺激的なリズムは不変。乱れ打つキック、まるで早送りで聴いているかのようにチキチキチキチキッと刻まれるハイハットの強烈さは色褪せない。しかも、本作のピークが、“アイ・ドント・ギヴ・ア・ファック”で脈打つようなベースと発信音のような上モノだけになった瞬間――つまり、特徴的なリズムが消え失せてビートレスになった瞬間だというも、また凄まじい。(小林祥晴)

16. Queens of the Stone Age / ...Like Clockwork

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気づけばそこは、アメリカの辺境ではなく内側だった――。2000年代の頭に『R指定』で浮上し、(当時の潮流からは)古色蒼然としたハード・ロックでカルトな異物感を振り撒いたクイーンズだったが、いまやその堂々たる王道感、大文字感はどうだ。たとえば彼らがリニューアルさせたブルー・チアーや13thフロア・エレヴェーターズの記憶は、ドゥーム/ストーナーの再評価をアンダーグラウンドに促したとも言えるし、その延長線上には、リタジーやディーフヘヴンといったポスト・ブラック・メタルの台頭も予見させた。もっとも、前身にあたるカイアス時代やスクリーミング・ツリーズへの参加に遡るジョシュ・オムの経歴、さらにはデイヴ・グロールやトレント・レズナーらと結ばれた共演人脈を紐解けば、それこそグランジ以降の20年近く、彼らがアメリカン・ロックの中心近くに生息し続けてきた事実が浮かび上がる。そしてご存知の通り、アークティック・モンキーズのような若い世代のロックンロール・バンドからの信頼も厚い。本作には、そのアレックス・ターナーを始め、グロールやレズナーに加えて旧知のニック・オリヴィエやマーク・ラネガン、ジェームス・ラヴェル、果てはエルトン・ジョンまでもゲストで参加。もはやどこまでがアリでナシなのかわからないパースペクティヴの中、大蛇の胃袋でゆっくりと溶かされるような濃厚すぎるロック体験が渦巻いている。(天井潤之介)

15. Savages / Silent Yourself

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2000年代の後半から2010年代にかけてのアメリカのインディ・ロックの隆盛に、いわゆるガールズ・ロック・バンドが果たした役割はとても大きい。〈キャプチャード・トラックス〉や〈ウッジスト〉といったレーベルを起点としながら、その周辺では仲間内で新たなバンドを結成したり、リトル・プレスの7インチやカセットを制作したり、あるいは自らレーベルやギャラリーを運営したりと、様々な機会や手段のシェアを通じてミュージシャン同士の緩やかな連帯が築かれていたが、彼女たちはそのコミュニティで中心的な存在を担っていた。ヴィヴィアン・ガールズ、ダム・ダム・ガールズ、ミカ・ミコのクラヴィン姉妹、ブリリアント・ガールズ……その名前は枚挙にいとまなく、そこに見受けられる「シーン」は、とりあえず90年代のオリンピアやワシントンDCとは異なる光景であったということは特筆したい。そうして見たとき、舞台は異なるが、サヴェージズのあり方は対照的で異質に思える。たとえば本国イギリスにおいて、同世代によるギター・ロック・バンド勢の台頭が言われる中、その気運にコミットメントするどころか、一線が引かれたようなサヴェージズの態度はどうだろう(パーマ・ヴァイオレッツとは同士のようだが)。サウンドも、アメリカの彼女たちがドリー・ミクスチャーやショップ・アシスタンツの参照も窺わせるカラフルなガレージ・ポップやシューゲイザーを特徴としていたのに対し、ジョイ・ディヴィジョンやバースデイ・パーティも引き合いに出されるサヴェージズのポスト・パンク、その「モノクロームの美学」は象徴的だ。まあ、わざわざ対置する必要などないのかもしれないが、しかし、それこそUSアンダーグラウンドでは女性のソロ・アーティストが目覚ましい活躍を見せる一方、ガールズ・ロック・バンドの存在が焦点化されない現状に物足りなさを感じていた自分にとって、サヴェージズの存在は一際目を引くものがあった。また、キング・クルエルやウィリス・アール・ビールも手がけたロディ・マクドナルドが本作のプロデュースに関わっていることにも注目したい。(天井潤之介)

14. Justin Timberlake / The 20/20 Experience

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惚れ惚れするほどにラグジュアリーな気品と眩いばかりのカリスマがあって、金と労力とアイデアをかけるべき所に惜しみなくかけていて、時代のほんの少しだけ先を見通す慧眼を嫌みなく身にまとっていて……。つまりは、2013年の今にこの上なくパーフェクトな形で産み落とされたポップスがここにある。ジャスティンが6年振りに音楽シーンへの帰還を果たした3月の時点では、ここに見られた煌びやかでゴージャスなディスコ・ソウルへの回帰が、まさかポップ・シーンの最先端に繋がっていくとは思ってもみなかった。しかし、正真正銘の選ばれしポップ・スターには、時代が後から寄り添ってくるもの。本作の2ヵ月後にはダフト・パンクが生音を基調とした大傑作を上梓し、ロビン・シックを筆頭にチャート上にもディスコ・サウンド復興を予感させるヒット・ソングが散見されるように。今や、ポップスの最たるトレンドはすっかりエレクトロではなく生音、EDMではなくソウルやディスコだ。その口火を切ったのは、この男の鮮やかすぎるカムバック劇で間違いないだろう。(青山晃大)

13. Janelle Monae / The Electric Lady

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「こんなの絶対ありえないと思ってた/未来の世界以外には/でも、今、僕は彼女に夢中/コンピューター制御の女のコかも」。愛しの彼女があまりに完璧すぎて、アンドロイドの域さえ超えている?と1985年の“エレクトリック・レディ”で自慢していたのはファンク・グループ、コン・ファンク・シャンだったが、当時、彼らが演っていたようなエレクトリック・ファンクにはソウルが宿っていないのでは?と一部のリスナーから突き上げがあった。例えば、本作収録の“ルック・イントゥ・マイ・アイズ”を聴いていると、今から25年以上も前の曲で歌われていた張本人こそ、ジャネール・モネイ=シンディ・メイウェザー(なるアンドロイドの視点で一貫して歌っている)ではないかと確信させられてしまう、しかも、それをジョン・バリー風の意匠で聴かせてしまうのだ。本作にはそんな意外な解答の導き方で、ソウルの在りかを教えてくれる曲がひしめきあっている。(小林雅明)

12. Laura Marling / Once I Was An Eagle

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23歳にして、本国イギリスでは既にフォーク・シンガーとしての確固たる評価を獲得している彼女ではあるが、これほどまでの凄味を持って響いてくるのは初めてだ。かつての恋人でもあるマムフォード&サンズのフロントマン、マーカス・マムフォードへの恨み節なのだろうか、ペンタングルにも通じる緊張感が漂う冒頭の“テイク・ザ・ナイト・オフ”から、ボブ・ディラン“悲しきベイブ”の引用も含む“マスター・ハンター”までの5曲は一発録りによる組曲形式になっており、息苦しさすら覚えるほどだが、そこから解き放たれるかのような開放感に溢れた“ホエア・キャン・アイ・ゴー?”がまた素晴らしい。敬愛するジョニ・ミッチェルの暮らすロサンゼルスへ移住したローラは、4作目にして、彼女にとっての『ブルー』を作り上げたのだ。ジャケットに写る一糸纏わぬ彼女の姿は、羽根を捥がれてもなお飛ぶことを止めようとしない、誇り高き鷲のようだ。(清水祐也)

11. Earl Sweatshirt / Doris

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同じく今年発表の『ウルフ』で、タイラー・ザ・クリエイターは、音楽的な間口を広げつつも、独自の物語世界は、ますますトマス・ピンチョン的迷宮の深みにはまっていった。一方、現在19歳のアール・スウェットシャートは、このデビュー作で、タイラーと同様に不在の父親を取り上げる等の自分語りはしても、これまでのリリックで作られた性差別主義・変態性欲・ヤク中等の、タイラーと一括りにされていた、自分に対するイメージを捨て去ることも厭わずにマイクを握り、ラッパーとしては時折り技巧派MF・ドゥームに肉薄するような高度な技量も見せた。同時に、“Centurion”でカンの“スープ”の極小フレーズをループさせたサウンドメイカー、クリスチャン・リッチ直伝のプロデュース術の成果も(7曲で)披露。タイラーやフランク・オーシャン等の参加もあるが、RZAやサムアイヤムのビートも利用し、オッド・フューチャーの外側に大きく踏み出した。(小林雅明)


「2013年 年間ベスト・アルバム 21位~30位」はこちら

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