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  • スター・トレック BEYOND (2016) directed by Justin Lin by MARI HAGIHARA October 14, 2016 1
  • モンスターズ/地球外生命体 (2010) directed by Gareth Edwards by MARI HAGIHARA October 14, 2016 2
  • ダゲレオタイプの女 (2016) Directed by Kiyoshi Kurosawa by MARI HAGIHARA October 14, 2016 3
  • リバー (2015)
    created by Abi Morgan by MARI HAGIHARA October 14, 2016 4
  • ストレンジャー・シングス 未知の世界 (2016) created by The Duffer Brothers by MARI HAGIHARA October 14, 2016 5
  • 今回は最大最古のファンダムに挑戦してみます。トレッキー! 60、70年代のSFを愛読していた自分としてはこのSFシリーズが「ヒューマニティ」とその理想をテーマにしているのを尊敬しているので、2009年のリブート以降徐々に勉強しているところ。ただリブート三作目に当たる『BEYOND』ではヒットメイカー、JJ・エイブラムスが監督から降り、『ワイルド・スピード』シリーズのジャスティン・リンが手がけたこともあって興業的には低調です。個人的には一番好きなのになあ。好きな理由は①「同胞を救うこと」が他の種族の危機を呼ぶ、という現代的モチーフをシンプルに描いていること。②前二作ではやたらカークとスポックの関係がフォーカスされていたのに比べ、カーク、スポック、ボーンズの三角関係がきちんと前面に出ていること。この三人が代表するもののバランスこそが人間性の表現につながると思うのです。トレッキーの監督がオリジナルの精神をリスペクトしつつ、映像やデザインをモダナイズしていて好感度大。なので、海外のファンダムの反応が鈍目なのが疑問です。

  • JJが『スター・トレック』の次に復活させたのがSWシリーズ。年末公開されるスピンオフ『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』はJJではなくギャレス・エドワーズが監督ですが、それがファンダムの期待を煽っているのが好対照を成しています。ギャレス・エドワーズはBBCで特殊効果を担当後、長編第一作『モンスターズ』(2010)の成功で『ゴジラ』(2014)の監督に抜擢され、その次が『ローグ・ワン』とトントン拍子に出世しているイギリス人。日本では『シン・ゴジラ』(2016)人気に到底かないませんが、『ゴジラ』を見ても、いまこの映画を見ても、『ローグ・ワン』が楽しみになるのがわかる。機材費たった15,000ドルで撮った『モンスターズ』は、エイリアンが生息するメキシコからアメリカ人男女が脱出するプロットに国境の「壁」や異物へのスタンスなど社会的テーマが盛り込まれ、その上でごくミニマムに効果的にエイリアンが登場します。つまり品があって大人っぽい。この監督ならSWシリーズの一大テーマで、非常にアメリカ的でもあるファザコンというテーマにも新しい光を当ててくれるかもしれません。

  • 「すべてのラヴ・ストーリーはゴースト・ストーリーである」と言ったのは作家のデヴィッド・フォスター・ウォラスですが、黒沢清監督が撮ったフランス映画はまさにそんな話。世界最古の写真術を操る二人の男性が、いつか愛の対象ではなくその残像に魅せられてしまいます。写真や映像といったもののまやかしの魅力にも迫るテーマですが、『クリーピー 偽りの隣人』(2016)と同じくやたら周囲が工事中だったり、舞台となる古い館の温室が現像の際の水銀に汚染されていたり、美しい物語にギョッとするような生々しさ、恐ろしさが顔を出すのがこの監督らしい。ただやっぱり一番怖いのは「亡きもの」にしか向けられない人の愛のあり方でしょうか。『預言者』(2009)のタハール・ラヒムが黒沢作品らしい主人公を演じているのも面白く、思っていたよりずっとホラーなラヴ・ストーリー。ちなみに『クリーピー』で私が一番怖かったのは、香川照之が履いていた半パンでした。

  • 日常において死者と会話を続ける——というモチーフが『ダゲレオタイプの女』と共通する刑事ドラマ。〈Netflix〉では話題作よりついつい〈BBC〉の地味な犯罪ドラマをパトロールしてしまうのですが、アメリカが北欧ミステリの名作を次々リメイクするのに比べ、イギリスではその影響がオリジナルドラマに色濃く表れているのが興味深い。北欧ミステリという現象は小説でも映像でも、ざっくり言えば「社会的弱者」「死と喪失」という視点を持ち込んだのですが、このシリーズでも自責と葛藤するステラン・スカルスゲルド演じる主人公や結末が実に北欧的です。ただ目の前の死者を「幽霊」とも「幻覚」とも言わず、「マニフェスト=立ち現れるもの」と呼ぶ感覚はいまのイギリス的で、クリエイターのアビー・モーガンらしい抑えられた、でも感情的な演出も効いています。なかでもチージーなディスコ・ソング“アイ・ラヴ・トゥ・ラヴ”が繰り返されるたび、ユーモアと悲痛が更新される演出には感心しました。

  • とはいえ、〈Netflix〉で大ヒットしたこのSFシリーズは不可避。『E.T.』(1982)『グーニーズ』(1985)あたりをメインに、『未知との遭遇』(1977)『エイリアン』(1979)『エルム街の悪夢』(1984)など、いわゆる80年代ブロックバスター映画をいいとこ取り&マッシュアップすればヒットも当然かもしれません。印象的なスコアは『ツイン・ピークス』(1990~1991)からの『X-ファイル』(1993~2002)的流れ。ネットにはいかに各映画の名シーンが模倣されているか、比べる映像もアップされています。でももちろん、単なるマッシュアップではなく当時の映画が持っていたワクワク感までよみがえらせたのは双子のクリエイター、ダファー兄弟の手腕。あと「裏側の世界」から仲間を取り戻そうとするキッズのキャスティングが図抜けています。唯一の女の子=イレブンは『E.T.』でのE.T.とドリュー・バリモアを合わせたようなヒロインだし、男の子たちのキャラ立ちも『グーニーズ』級。9月は世界をPRツアーした彼らがメディアを沸かせました。ちなみに〈Netflix〉の次の当たりは『Marvelルーク・ケイジ』(2016)。視聴が集中しすぎたため一時接続がダウンしたらしく、マーベルのファンダムの動向もモニタリングしたいところ。

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