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  • シチズンフォー スノーデンの暴露 (2014) directed by Oliver Stone by MARI HAGIHARA November 15, 2016 1
  • ハート・オブ・ドッグ 〜犬が教えてくれた人生の練習〜 (2016) directed by Laurie Anderson by MARI HAGIHARA November 15, 2016 2
  • TOMORROWパーマネントライフを探して (2016) directed by Mélanie Laurent, Cyril Dion by MARI HAGIHARA November 15, 2016 3
  • Easy (2016) created by Joe Swanberg by MARI HAGIHARA November 15, 2016 4
  • Togetherness (2016) created by Mark Duplass, Jay Duplass and Steve Zissis by MARI HAGIHARA November 15, 2016 5
  • 今見るべき映画のトップに2014年作品を持ってきて申し訳ないのですが、オリヴァー・ストーン監督の伝記映画『スノーデン』を見て、改めて『シチズンフォー』は衝撃だったな、と。日本では今年やっと公開された本作、『スノーデン』公開に合わせ2017年早々にDVD化されるので、まだ見ていない人は必見です。もちろん、一番の衝撃は米政府が個人情報をモニターしているという内部告発がリアルタイムのドキュメンタリーとしてなされたこと。とはいえ「自分が誰かは重要じゃない」と主張する青年がイヤイヤながらその主人公となり、製作側も受け身というあり方も特異だった。政治的、社会的インパクトとともに、キャラクター商売がデフォルトとなった今の表現へのクールなカウンターでもあった気がします。そう考えると、『スノーデン』を撮ること自体には意味があっても、すべてをひとりの男性の物語としてベタに回収しようとするオリヴァー・ストーンには「もうちょっとどうにかならなかったのか」と言いたい気持ち。

  • ローリー・アンダーソンが愛犬の死をきっかけに撮った、ドキュメンタリーというよりは映像と朗読のエッセイ。喪失について彼女が淡々と語る場面には大泣きしました。ただ記憶を自由に行き来するこの作品には、実は『シチズンフォー』と同じテーマについての考察も含まれています。NYに住む彼女は9.11後、「不審者を見かけたら通報を」と呼びかける監視社会を身近に感じ、政府が大量の情報を保管する施設を建設していることを知り、「その情報から個人の物語を作るのは誰?」と疑う。自分でさえ自分の物語を絶えず書き換えているのに、都合のいい前提に合わせてメールやSNSからその人のプロファイルを作り上げる権利が誰にあって、間違いないという保証がどこにあるのか、と。サラ・ポーリーの『物語る私たち』もふと頭に浮かびます。「物語を語る」人たちにとって、スノーデン事件はかなり実存的な問題でもあるのかもしれません。ちなみに『ハート・オブ・ドッグ』はルー・リードに捧げられています。

  • 食や環境についてのドキュメンタリーにはやたら怖いものがあり、落ち込まないようスルーすることさえあります。でもこのフランス発ドキュメンタリーは、「環境を変えるためにできることはある」と観客に実感させる――という明確な意図のもと作られているので、非常にポジティヴ。俳優のメラニー・ロランが登場し、美しい映像と音楽で一瞬癒し系に見せつつ、「荒廃して新鮮な食品が流通しなくなったデトロイトの市街地を勝手に農園にする」などラジカルな実践例が出てくるのが痛快です。後半にはさらにラジカルなアイデアも。「農業」「エネルギー」「経済」「民主主義」「教育」の5章に分けてそれぞれを変える提案と具体例が示されるのですが、ここに「民主主義」があるのが今っぽい。債務帳消しキャンペーン=ジュビリー2000あたりから経済が地球を破壊しているという認識が広まり、ウォール街占拠を経て、今はどこの国でも政治、特に選挙という民主主義のプロセスが疑問視されてるんですよね。ブリグジットしかり、大統領選しかり。その上で本作が提案するオルタナティヴには「それはいい!」と膝を打ちました。でも実現は難しいかな……何かは実際に見てみてください。

  • ロマンティック・コメディや会話劇というジャンルが日本で公開されなくなってきましたが、ドラマでもそれは同様。マンブルコア以降云々という以上に、リレーションシップを描く若い世代の作家がドラマで新展開を見せているのに、残念です。とはいえレナ・ダナムの『ガールズ』は放映されているし、ジョー・スワンバーグがクリエイター/脚本/監督を担当したアンソロジー『Easy』もNetflixでリリースされました。全8話、さまざまな年齢や人種の男女が直面するちょっとした岐路。副題は「そろそろセックスについて語ろう」ですが、もっと幅広いライフ・チョイスとその葛藤が描かれます。パートナーが欲しいのか自由が大事なのか、安定か情熱か、夫婦の役割が逆転したとき頭では受け入れても体はついてくるのか。ダイアローグ以上に、『ガールズ』同様、このあたりの作家はセックス・シーンを含め表現が肉体的なのが特徴。歳を取ってても太っててもどーんと裸で出てくるので、リアルに痛くて面白いのです。オーランド・ブルーム出演回が箸休めかな? 人種、フェミニズム、LGBTなどの生活でのニュアンスを知るのにも勉強になるドラマ。

  • その意味でも、アンドリュー・ヘイの『Looking』とデュプラス兄弟の『Togetherness』は是非日本に入ってきてほしい。HBOは放映権が高いんでしょうか。しかも日本公開前に『Looking』も『Togetherness』も2シーズンでHBOにキャンセルされてしまいました。無念。完結版の映画が製作された『Looking』については木津さんがいつか書いてくれると思うので、『Togetherness』をかいつまむと、主人公の男女4人が迎えるのは超リアルな中年の危機です。頭打ちのキャリア、倦怠、いつまでたっても大人としての自分が受け入れられない……そんな心当たりのある鬱屈が絡み、ぶつかり、肉体的、感情的メルトダウンとなっていくのが生々しくてびっくりしました。コメディなんですけどね。それぞれ俳優、脚本、製作として映画でもテレビでも活躍するジェイとマークのデュプラス兄弟は本作のキャンセルを機に仕事上のパートナーを解消したので、少なくともしばらくは二人の共同作業はなさそう。それもあり、この感じは2017年になってまた潮流が変わる前に知っておきたいのです。

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