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  • ブラックパンサー(2018) directed by Ryan Coogler by MARI HAGIHARA February 20, 2018 1
  • シェイプ・オブ・ウォーター(2017) directed by Guillermo Del Toro by MARI HAGIHARA February 20, 2018 2
  • しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス(2016) directed by Aisling Walsh by MARI HAGIHARA February 20, 2018 3
  • 聖なる鹿殺し(2017) directed by Yorgos Lanthimos by MARI HAGIHARA February 20, 2018 4
  • ダウンサイズ(2017) directed by Alexander Payne by MARI HAGIHARA February 20, 2018 5
  • 文化的な潮目を生むというより、その象徴となることが義務づけられたスーパーヒーロー映画『ブラックパンサー』。でもそんな重いタスクに見事応えるスーパーなブラック・エンタメとなりました。マーベル好きでなくても一作で楽しめる完結度が高いのもそのため。アフリカ大陸にある超ハイテク文明国家ワカンダ――という設定にまずワクワクしますが、ストーリーが自国vs.外界ではなく、外部が侵入したときの内部の齟齬なのにも歴史観がある。ライアン・クーグラー監督がルーツを掘り下げたのでしょう。ワカンダ国王となるブラックパンサー(チャドウィック・ボーズマン)とその座を狙うキルモンガー(マイケル・B・ジョーダン)というヒーローvs.ヴィランも、善悪や復讐というより「アフリカという資源をどう扱うか」の戦いになるところがすごい。ケンドリック・ラマーが参加した音楽、アフロフューチャーな美術に加え、強く賢い女性キャラも見どころ。007シリーズにおけるQ的役割が愉快なブラックパンサーの妹シュリ(レティーシャ・ライト)、最強の女戦士オコエ(ダナイ・グリラ)などみんなカッコいい! これが日本でコケるようなことになったら、また世界とのギャップが広がってしまいそうです。

  • オスカー授賞式前に「剽窃」なんていう無粋な評判も立っているようですが、もともとギレルモ・デル・トロは幾多のジャンル・ムーヴィから取り込みまくってはそれを更新する監督。オタクの正しい姿です。今回は古典的なモンスター映画や悲恋もの、冷戦スパイもの、ハリウッド・ミュージカルまで見渡しながら、半魚人と女性のファンタジックなロマンスを作り上げました。62年アメリカ。アマゾンから研究所に持ち込まれたクリーチャーと、口がきけない掃除婦は、グレン・ミラーなど戦前のショウ・チューンを通じて心を通わせます。クリーチャーが政治利用されそうになると活劇的展開に。サリー・ホーキンス演じる掃除婦が恋に落ちる過程に、彼女が怪物に感じる性欲がちゃんと描かれるのもいい。異形のセックス・アピールが出てくるのって『ヤング・フランケンシュタイン』(74)以来じゃない? と思いつつ、『シェイプ・オブ・ウォーター』のほうがずっと繊細でフェミニン。レトロなようでいて現代的なのです。ブルーグリーンの冷たい色、つねに濡れている感覚、時折挟まれるグロテスクな場面。この監督にしか作れない愛のおとぎ話に浸る2時間4分。

  • 『パディントン2』、『シェイプ・オブ・ウォーター』、そして本作と、サリー・ホーキンス主演作の日本公開が続く2018年。なかでも彼女の演技が支えるのがこの伝記映画。邦題も予告編もホンワカしていますが、むしろホンワカしがちな物語にサリー・ホーキンスがギリッとした苦さ、強さを与えています。重いリウマチを患い両親を亡くしたモードが漁師のエベレット(イーサン・ホーク)と結ばれ、素朴派の画家として名を成すまで。とはいえ結婚のきっかけは家を出たいモードと家政婦が欲しいエベレット、という利害の一致で、頑固な二人のやりとりも到底ロマンチックとは言えず、むしろDVスレスレ。モードの絵が売れだすと二人が商売っ気を出すところもそのまま描かれています。それでもノバスコシアの荒野に立つ電気もガスもない小屋、その小屋を動物や花の絵で埋め尽くすモードのアート、二人のつましい暮らしが綴られると、そこに立ち上がるのはタフな詩情と愛の物語。モードは不自由な体で窓から外を眺め、絵を描き、そこに「心の自由」を見出しているのです。ケルティックなサントラを担当するのはなんと、カウボーイズ・ジャンキーズのマイケル・ティミンズ。

  • 『籠の中の乙女』(2009)にせよ『ロブスター』(2015)にせよ、ヨルゴス・ランティモス監督の作品には密室で条件が設定される心理実験のような様相があります。それが不穏なユーモアとともに、家族やカップルといった単位のいびつさを暴いていく。今回実験台になるのは裕福な医師の一家。奇妙な少年が接触してくると、彼らに異常な事態が起きはじめます。硬直した会話、やや上から見下ろすようなカメラワーク、不条理なルール設定は相変わらずのヨルゴス流。父親役は『ロブスター』に続いて主演するコリン・ファース。彼には彼自身さえ望まない多分な力が与えられ、家族のパワー・バランスが崩れます。『ダンケルク』(2017)では不憫な少年役だったバリー・コーガンがぞっとするような存在を演じ、エリー・ゴールディングの“バーン”が歌われると緊張感はマックスに。ちなみにギリシャ出身のヨルゴスだけでなく、スウェーデンのリューベン・オストルンドやドイツのマーレン・アーデら、ヨーロッパの新世代監督の作品にはどれも極限まで強調された「いたたまれなさ」「居心地の悪さ」があったりする。その理由を考えてみたいところ。

  • めちゃくちゃに変な映画が観たい人、ミニチュア・サイズのマット・デーモンが観たい人にはこれを。『ファミリー・ツリー』(2011)などコミカルな人間ドラマを描いてきたアレクサンダー・ペイン監督が、環境SF映画という新境地に挑戦しました。それが成功しているかどうかはさておき、これでもかとアイデアが詰め込まれているのは確か。地球の資源を守るために縮小された人間、それでもはびこる消費主義、さらには絶滅に直面したとき、人類は「未来」と「現在」のどちらを選択するのか——と、なかなかビッグサイズな究極の問いがあるものの、そのせいもあってストーリーはとっちらかり気味。胡散臭いウド・キアー、ベトナム人活動家を演じるホン・チャウなど演技が光るだけに、もうちょっと話のトーンが統一されていれば、と残念な気持ちにも。とはいえ縮小前に体毛を全部剃ったり、妙に細かくて笑えるシーンは多々あり。

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