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  • 荒野にて(2017) directed by Andrew Haigh by MARI HAGIHARA March 22, 2019 1
  • マックイーン モードの反逆児(2018) directed by Ian Bonhote by MARI HAGIHARA March 22, 2019 2
  • キャプテン・マーベル(2019) directed by Anna Boden, Ryan Fleck by MARI HAGIHARA March 22, 2019 3
  • ハロウィン(2018) directed by David Gordon Green by MARI HAGIHARA March 22, 2019 4
  • アンブレラ・アカデミー(2019) developed by Steve Blackman, Jeremy Slater by MARI HAGIHARA March 22, 2019 5
  • 『ウィークエンド』(11)、『さざなみ』(15)のアンドリュー・ヘイ監督の新作。彼は誰かの人生のあるフェイズにおける感情、センチメントを丁寧に切り取りながら、それを世界にぽんと投げ込むことで、見る人すべてのものにする手腕の持ち主。今回はアメリカの少年の体験が、助けようとしたものを助けられなかった人、大事なものを失ったあとも生きている人すべてに共有されます。チャーリー・プラマー演じる15才の少年は、社会の周辺で父とつましく生きるなか、競走馬の世界を知ります。そこで世話をした馬のピートが処分されそうになると、天涯孤独になった少年と馬はアメリカの原野に入っていく。生きるよすがを探して歩きつづける二人の姿には絶望とロマンスが、美しくも厳しいアメリカがあります。周りに配される俳優はスティーヴ・ブシェミやクロエ・セヴィニーら、米独立系映画の顔となってきた人々。一つひとつのシーンに瑞々しい詩情があり、感傷とリアリズムの融合が素晴らしい。最後にチャーリーが見せる表情、そして流れだすボニー・プリンス・ビリーの歌声。原題は『Lean On Pete』、ピートに寄りかかる。もう泣くしかありません。

  • ここ数年、次々発表されてきたファッション・デザイナーの伝記ドキュメンタリー。そのなかでもアレクサンダー・マックイーンを描く本作は、どれよりもエモーショナルに、悲痛に迫ってくる。それは彼が他とは違う出自とストーリー、特異なカリスマを持ち、それをファッション産業が消費しつくしたから。彼が最大の代償を支払ったことを知ってはいても、その孤独と疲労を直視するのは初めてかもしれません。とはいえセント・マーティンズ入学前の修行話はどれも興味深く、話題性で業界を駆け上っていく際の記録映像は楽しさとスリルにあふれています。伝説に残る大掛かりなショーも鬼気迫るものがある。醜いもの、恐ろしいものを美に変えるその感性、どこまでもパーソナルなコレクションの数々。ただその裏で彼がすり減っていく過程も映画は緻密に追っていきます。創造性とビジネスの関係はどの分野でも危うく、特にファッション業界ではサイクルが早すぎるとも言われる。有名ブランドの創業デザイナーももう数えるほどとなり、その名のもとで雇われたデザイナーたちが入れ替わり立ち替わりするいま、次はどうなっていくのか。マックイーンやマルジェラ、失われた天才たちを思う今日この頃です。

  • 思えば、姫が下界にやってきて人間の男と恋に落ちる――というクラシックな構造の『ワンダーウーマン』には、ある意味乙女心がくすぐられたのかも。でもMCU初の単独女性スーパーヒーロー映画『キャプテン・マーベル』が呼び起こすのは、心のなかに棲むライオット・ガールです。超弩級に強いスーパーヒーローのオリジン・ストーリーは、「お前は~になれない」と指図する者へのファック・ユー。その舞台が90年代なので、それがグランジやらオルタナやら、当時のポップな反抗児のイメージと重なります。もちろん、本作を最初に観る少年少女も羨ましいけれど、これは90年代を生きた大人たちへのエンパワメントにもなるはず。当時のローテクを知らないと拾えないギャグも多数あり、全体的に90sアクション風味なのも面白い。当然、音楽ネタも90年代のベスト・ヒットです。ただ、親しみやすくへこたれず、何度でも立ち上がってアイデンティティを見つけだすブリー・ラーソン演じる女性像は完璧に2019年型。ストーリーに恋愛要素がないのもポイントです。これが世界で興収10億ドルを超えそうなのはシンプルに嬉しい。猫のグースのスピンオフも希望します。

  • ジョン・カーペンターによるホラーの名作、78年の『ハロウィン』第一作に直結する続編。あのときブギーマンに襲われ、闘った少女ローリーことジェイミー・リー・カーティスが再び主人公です。なんと40年が経ったのちに彼女が闘うのは、自分のなかに巣食う恐怖。さらには、過去に受けた暴力について語れば語るほど、年月を重ねれば重ねるほど、世間はその人を狂人扱いする――その「世間」という状況もローリーの敵であることが示される。トラウマと同様、ブギーマンは何度でもよみがえってくるのです。ただ今回精神病院から怪物が逃げだし、ハロウィンで賑わう町に放たれると、ローリーにとってはそれにとどめを刺すチャンスが訪れる。話はさらにローリーが抱える恐怖にさらされつづけた娘や孫娘にもつながっていきます。この三世代の女性による最後の死闘は見もの! このシリーズを知らずとも楽しめるはず。でもやっぱり、クレイジーかつ戦闘力抜群なカーティスがいちばんの魅力です。

  • 『キャプテン・マーベル』が90sテイストだとしたら、ドラマシリーズ『アンブレラ・アカデミー』は00sテイストのスーパーヒーローもの。しかもエモ。元マイ・ケミカル・ロマンスのジェラルド・ウェイがコミック原作者のひとりというだけあって、スーパーパワーを持つ家族の機能不全感がとにかくエモなのです。でもベタな音楽やゴスなデザインを含め、この感じ、嫌いじゃない。古い屋敷の各部屋でティファニーの“ふたりの世界”に合わせ、一人ひとりが踊る第一話のダンス・シーンなんて出色の出来です。主人公となるのはある不思議な出自のもと、奇人の富豪に養子にされた7人の男女。スーパーヒーローの訓練に幻滅し、いったん散り散りになるものの、彼らは養父の死により再び集まり、世界の滅亡をくいとめようとします。とはいえアポカリプスはむしろ背景で、プロットの大半はお互い素直になれない家族内のいざこざ。このアダルト・チルドレンの成長ぶりが見られるのはシーズン2になりそう……とはいえ、そうなったら面白さも半減してしまいそうですが。泣き虫顔のエレン・ペイジは、こういう話での威力が抜群です。

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