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  • I Might Need Security Chance the Rapper by AKIHIRO AOYAMA July 26, 2018 1
  • I Like It Cardi B, Bad Bunny & J Balvin by AKIHIRO AOYAMA July 26, 2018 2
  • 1998 TRUMAN Brockhampton by AKIHIRO AOYAMA July 26, 2018 3
  • Eastside Benny Blanco, Halsey & Khalid by AKIHIRO AOYAMA July 26, 2018 4
  • Accusations 070 Shake by AKIHIRO AOYAMA July 26, 2018 5
  • 〈サマーソニック〉での初来日が目前に迫ったチャンス・ザ・ラッパー。〈シカゴ・トリビューン〉のインタビューでリリース目前だと語っていたニュー・アルバムは結局発表されなかったものの、その代わりに4曲のシングルが彼から届けられた。フィアンセとの関係がメロウに綴られる“65th&イングルサイド”、“ジューク・ジャム”に続くジューク賛歌の“ワラ・キャム”、父親になったことによる私生活の変化をジャジーなトラックに乗せた“ワークアウト”。シカゴ愛、家族愛をテーマにした3曲も十分に良い出来だが、この“アイ・マイト・ニード・セキュリティ”はプロダクション、ラップの内容ともに飛び抜けて鮮烈な一曲だ。何と言ってもまず驚かされるのは、ジェイミー・フォックスのパフォーマンスをサンプリングした「ファック・ユー」のリフレイン。「俺は活動家じゃなく、主人公だ」というラインから始まるチャンスのラップは、かつてないほど直接的にシカゴの政治や社会について言及している。シカゴ市長ラーム・エマニュエルを名指しで糾弾し、レイシストを締め出すためにローカル・ニュース・サイト〈シカゴイスト〉を買い上げたと明かす彼の言葉から伝わるのは、静かに燃えたぎる怒りと、シカゴを自分が変えてみせるという強い決意だ。これらの楽曲がライヴで初披露される記念すべきステージは、シカゴ以上に腐りきった政治状況が続く、ここ日本になるかもしれない。

  • カーディ・Bは昨年リリースの“ボダック・イエロー”に続いて、この楽曲で全米1位を獲得。〈ビルボード〉の歴史上初めて、複数のNo.1シングル・ヒットを記録したフィメール・ラッパーとなった。プエルトリコ出身のバッド・バニーとコロンビア出身のJ・バルヴィンが共演したラテン・トラップは今もっとも旬なサウンドではあるが、この曲にはただのトレンドだけにとどまらない重要な意味がある。ここでサンプリングされているのは60年代半ばにニューヨークで流行したブーガルーの名曲“アイ・ライク・イット・ライク・ザット”。この曲を作ったのは、ラテン・アメリカ系の血を引き、ニューヨークはブロンクスで生まれ育ったピート・ロドリゲスで、その出自はカーディ・Bとも共通する。70年代のブロンクスで起こったヒップホップ・カルチャーの誕生には、アフリカ系と同等かそれ以上に、ラティーノが担った役割が大きかった。だとすれば、ラテン音楽の流行はヒップホップのルーツ回帰の一端とも言えるだろう。この“アイ・ライク・イット”は、その流れを象徴する2018年の最重要トラックだ。

  • 〈サイン・マガジン〉の2016年年間ベスト・アルバム46位にも選出されていたケヴィン・アブストラクト率いるカリフォルニアのグループ、ブロックハンプトン。昨年、彼らはわずか半年強の間で3枚のフル・アルバムを上梓し、今やラップ・ファンの間では知らない者のいない話題の集団となっている。自らを「ボーイ・グループ」と称している彼らだが、メンバーにはラップ/ヴォーカル担当以外にもプロデューサーやデザイナー、フォトグラファーがいて、実態としてはオッド・フューチャー等のクルー/コレクティヴに近い。ただ、個性豊かなキャラの立ち方、グループとしての絶妙なバランスを見ると、彼らがボーイ・グループを名乗る理由も分かる気がする。映画『トゥルーマン・ショー』を参照したこの新曲は、キャラ立ち集団ブロックハンプトンの魅力が炸裂した一曲。グライムを思わせるハイトーンでまくし立てるマーリン・ウッドに、エミネム譲りの節回しを見せるジョバ、ブリッジで良いところを持って行くケヴィン・アブストラクトetc……。全員はとても書き切れないが、この楽曲とヴィデオを見れば、彼ら一人ひとりの事をもっと知りたくなるはず。この突然変異ボーイ・グループが世界を制覇する日はそう遠くない。

  • 今のポップ・シーンに欠かすことの出来ないプロデューサーは誰か? もちろん答えは一つではないが、ベニー・ブランコという名前がその筆頭に挙がってくるのは間違いない。ジャスティン・ビーバー“ラヴ・ユアセルフ”、エド・シーラン“キャッスル・オン・ザ・ヒル”、メジャー・レイザー“コールド・ウォーター”等々、これまでプロダクション/ソングライティングに参加したヒット・ソングは数知れず。しかも、ただ売れ線の曲を書けるだけのヒットメイカーではなく、フランシス・アンド・ザ・ライツやカシミア・キャットら、レフトフィールドとメインストリームを横断するアーティストの作品にも深く関わる人物なのだ。直近では、一連のカニエ・ウェスト関連作に複数曲でたずさわったことが知られている。そのベニー・ブランコが、初めて自身の名義で発表したデビュー・シングルがこの曲。切ないギターの音色がリードするミドルテンポのダンス・トラックに、カリードとホールジーのデュエットを乗せた、現代ポップ・ミュージックのお手本のような仕上がりだ。特にメロディメイカーとして、ベニー・ブランコが近年のヒット・ソングにどれだけ多大な貢献をしてきたか、この曲を聴けばより良く分かるだろう。

  • 月末にドレイクのメガヒット・アルバム『スコーピオン』がリリースされるまで、6月はカニエ・ウェストによるリリース攻勢の話題で持ち切りだった。それらの作品に重用されたことで、ほぼ無名の状態から一躍時の人となったシンガー/ラッパーがいる。それがこのオーセヴンオー・シェイクだ。彼女は、『イェ』のハイライトを飾った“ゴースト・タウン”のアウトロと“ヴァイオレント・クライムス”のコーラスという超重要箇所に抜擢。その他、プッシャ・T『デイトナ』収録の“サンテリア”、ナズ『ナシア』収録の“ノット・フォー・レディオ”に起用された。ソロとしては地元ニュージャージー州ノースバーゲンのクルー〈070〉に所属。公開されたばかりのこの新曲は、少々変則的なダウナー系エモ・トラップ。音数が少ないだけに、彼女のヴォーカリゼーションが際立って聴こえてくる。ラップと歌唱とポエトリーリーディングのシームレスなトランジション。決して麗しい美声ではないが、狂おしいほどの切迫感を讃えた声色。新たに〈グッド・ミュージック〉と契約を交わした彼女の登場で、男ばかりが目立っていたエモ・ラップの流れも潮目が変わっていくはずだ。

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