SIGN OF THE DAY

2013年 年間ベスト・アルバム
31位~40位
by all the staff and contributing writers December 19, 2013
2013年 年間ベスト・アルバム<br />
31位~40位


40. To Be Revealed

2013年 年間ベスト・アルバム<br />
31位~40位


39. Kings of Leon / Mechanical Bull

2013年 年間ベスト・アルバム<br />
31位~40位
FIND IT AT :
Amazon MP3 & CD/iTunes Store

スタジアム・バンドとしてのスケール感を失わないまま、初期のファンも振り返らせるような音楽的エッジを取り戻すこと――そんな今のキングス・オブ・レオンが成し遂げるべき目標を、胸がすくくらい完璧にクリアしてみせた、文句なしの第二期キングス代表作。“ドント・マター”や“テンプルス”におけるラフでハードなサウンドは「口髭+ベルボトム」時代の面影をフラッシュバックさせるが、同時に余裕たっぷりの「王者の貫録」が漂ってくるのは、今の彼らならでは。バンドの好調を伝えるかのように、全編に渡ってエナジェティックで溌剌とした空気が満ちているのも本当に素晴らしい。ストロークス世代唯一のスタジアム・バンドは、ポップ・スター・シンドロームを乗り越え、遂に作るべきアルバムを作り上げたのだ。(小林祥晴)

38. Deerhunter / Monomania

2013年 年間ベスト・アルバム<br />
31位~40位
FIND IT AT :
Amazon MP3 & CD/iTunes Store

シューゲイザーやドローン、ファウストからポーリン・オリヴェロスまで参照するクラウト・ロック~アヴァンギャルドetcを包摂した『クリプトグラムス』をピークとする拡大路線の反動か。それとも、リーゼントを決め50’sの意匠を纏ったコックスのアトラス・サウンドに引き摺られたか。ともあれ、過剰なエフェクトや装飾的なレイヤーを取り払い、ジョン・リー・フッカーやボ・ディドリーなどブルースのクラシックや初期ロックンロールに着想を得られたという5作目。コックスは「the least(最小限)」とその感触を形容するが、しかし、いわゆる原点回帰的なミニマルな作風とは異なる。メロディは輪郭を露わに浮かべ、音像も整理された印象を与えるが、そのぶん、ヴォーカルに宿るコックスの感情表現は鮮烈に伝わり、とても生々しい。そして、タイトル・トラックを筆頭に歪んだフォルムのガレージ・ロックは、同郷のブラック・リップスとつるんだクランプス・マナーの覆面バンド、ザ・スポークスも連想させる。本作を「心に病を抱えた人達のためのロックンロール」と吐くコックスの抱えた業は、いまだ深い。(天井潤之介)

37. Palma Violets / 180

2013年 年間ベスト・アルバム<br />
31位~40位
FIND IT AT :
Amazon MP3 & CD/iTunes Store

今年初頭にはハイムと共に『NME』の新人特集号の表紙を飾り、英国ロックンロールの救世主と目されていたパーマ・ヴァイレッツのデビュー・アルバムは、最終的にはその期待に見合うだけの成功も評価も得られなかった。本作が昨年末には完成済で、今年2月には早急にリリースされたことを思えば、周囲の大人が結果を急ぎ過ぎたのかもしれない。しかし、そんな諸々を横に置いて、フラットに本作を聴き返してみると、粗削りで、だからこそ十代の灰色の日常がそのまま焼き付けられた楽曲群にはふいに胸を打たれる瞬間が何度もある。チリ・ジェッソンのパンキッシュな歌声に込められた焦燥、サミュエル・フライヤーのバリトン・ヴォイスから伝わる憂い。危ういバランスの上に成り立つ、今にも崩れ落ちそうなバンドのアンサンブル。脆くて、隙だらけで、完璧からは程遠いこのレコードは、高潔過ぎる理想とちっぽけな現実の間を揺れ動く青春時代のリアルそのものだ。(青山晃大)

36. Toro Y Moi / Anything In Return

2013年 年間ベスト・アルバム<br />
31位~40位
FIND IT AT :
Amazon MP3 & CD/iTunes Store

『NME』曰く“すべてがあった年”だという2013年は、ボーズ・オブ・カナダとダフト・パンクというチルウェイヴの祖先2組が、申し合わせたように“8年ぶりの4作目”を携えて帰ってきた年としても記憶されることだろう。一方、チルウェイヴ界のツー・トップであるウォッシュト・アウトとトロ・イ・モワも共に新作をリリースしているが、ボーズ・オブ・カナダの持つサイケデリアを陽性な方向に拡大してみせたのがウォッシュト・アウトだったとしたら、ダフト・パンク同様にフィジカルなファンクネスを追求したのが、トロ・イ・モワだったと言えるのかもしれない。黒さを追求するあまり髪型がアフロを通り越してドレッドになってしまっているのが心配だが、かと思えばサイズ・オブ・チャズ名義のソロ・プロジェクトではダフト・パンクのメンバーの父親がやっていたような匿名性の高いサイケ・ポップを展開しており、まったくもって先が読めない状態だ。(清水祐也)

35. ! ! ! / Thr!!!er

2013年 年間ベスト・アルバム<br />
31位~40位
FIND IT AT :
Amazon MP3 & CD/iTunes Store

凄まじいライヴの熱気を余すことなく封じ込めた最高傑作『ミス・テイクス』を経て、よりスタジオ・ワークに力を入れることにした前作『ストレンジ・ウェザー・イズント・イット?』で、やろうとしながらも、やりきれていなかったことを遂に成し遂げた、充実の五作目。スプーンのジム・イーノという、これ以上ないハマり役をプロデューサーに迎えた本作は、バンド史上最高にキャッチーなメロディ、スムースな演奏、そして音を詰め込み過ぎず空間を残したプロダクションによって、まったく新しいチック・チック・チック像を築き上げることに成功している。キング・オブ・ポップの金字塔からアルバム・タイトルを拝借したのは伊達ではない。最高に華やかでグルーヴィで洗練されたファンク・ポップによって幕を開けた、チック第二の全盛期。(小林祥晴)

34. 森は生きている / 森は生きている

2013年 年間ベスト・アルバム<br />
31位~40位
FIND IT AT :
Amazon MP3 & CD/iTunes Store

“森”繋がりとはいえ、リーダーの岡田拓郎がブルックリンのインディー・ロック・バンド、ウッズのファンだと聞いた時は驚いた。彼らのジム・オルークやウィルコへの偏愛は知っていたが、プロフェッショナルなミュージシャン集団であるウィルコと、アマチュアリズムの権化とも言えるウッズとは、水と油のような気がしたからだ。レコード屋でウィルコの“W”の欄を探している時に見つけたというウッズのジャケットのサイケデリックな手描きイラストに惹かれ、自主制作CD-Rでもそれを意識していたそうだが、1stアルバムとなる本作中、岡田本人が歌う“日傘の蔭”は、(今思えば)確かにウッズそっくりだ。そんな風にあらゆる方向へ枝葉を伸ばす彼らの音楽性のすべてがここに提示されているとは思えないが、“どこへでも行ける”という意味で、理想的な1stアルバムだと言えるだろう。“ゆでめん”に敬意を表して、“かんらん”と呼びたい。(清水祐也)

33. James Blake / Overgrown

2013年 年間ベスト・アルバム<br />
31位~40位
FIND IT AT :
Amazon MP3 & CD/iTunes Store

とあるインタビューで、彼が「ドレイクのフロウはエロール・ガーナーのピアノのタイム感を思わせる」と発言していたのが印象的だった。つまりジェイムス・ブレイクとは往年のジャズ・ピアニストと現代のR&Bを跨ぐ存在であり、また僕にとっては、死んだブルースマンのスキップ・ジェイムスが、ロンドンの24歳の青年の姿を借りて語りかけているようにも聴こえるのだ。そうした時代を超越した普遍性に魅力を感じていた者からすれば、デビュー作への過剰な熱狂に対するリアクションとも受け取れるアルバム・タイトルと歌詞、ブライアン・イーノやRZAの参加といった同時代的な付加要素(と、インスタグラムのようなジャケット写真)は、かえって作品の純度を下げてしまったような気がしてならない。それこそ“レトログレイド”の冒頭における、ブラインド・ウィリー・ジョンソンのような言葉にならない呻きが、もっとも真に迫って聴こえてくるのは何故だろう。(清水祐也)

32. Drenge / Drenge

2013年 年間ベスト・アルバム<br />
31位~40位
FIND IT AT :
Amazon MP3 & CD/iTunes Store

うわべだけの華やかでスタイリッシュな音楽には用はない。メランコリックな陶酔にまみれたサウンドも飽き飽きだ。俺はただ、もっとストレートに、胸倉につかみかかってくるように、なんなら本当に人を殺しそうなくらい殺気立った、制御不能な怒りや苛立ちをぶつけてくる音楽が聴きたい。そんな気分にぴったりとフィットする音楽があるとすれば、ドレンジだ。シェフィールドから車で一時間の村、キャッスルトン出身の兄弟デュオによる1stには、その退屈な暮らしから沸き起こるとめどないフラストレーションが、焼け付くようなブルーズ・ガレージ・パンクによって刻まれている。ネットが世界を狭くしたと言っても、郊外――よりも遥かに田舎町の「空虚」さが、若者の心を抑圧するという構図は今も根強く残っているようだ。美しい自然が広がる長閑な光景を背後に、彼らはスプラッター映画のような暴力衝動や流血への欲望を歌う。“アイ・ワナ・ブレイク・ユー・イン・ハーフ”では、たとえばこんなふうに。「お前を丘の上まで走らせて/ちびらせてやるよ/お前を真っ二つにしてやりたいんだ!」(小林祥晴)

31. Fuck Buttons / Soft Focus

2013年 年間ベスト・アルバム<br />
31位~40位
FIND IT AT :
Amazon MP3 & CD/iTunes Store

4年ぶりの3作目は、アンドリュー・ウェザオールと組み、〈コンパクト〉勢にも通じるバレアリックなダンス・ビートとミニマルな高揚感を得た前作と比べると、モグワイ周辺の人脈と制作された1stに感触は近い。セルフ・プロデュース作となるが、マスタリングには1st同様にシェラックのボブ・ウェストンが迎えられ、全体的にアグレッシヴな仕上がりが際立つ。ボアダムス・ライクのパーカッシヴなドラムを始め、ブレイクビーツやヒップホップからの影響、さらにはゲットー・ベースも連想させるファットでコンシャスなビート・プロダクションは今作の特徴だろう。ダークなトーンを増した十八番のシンセ・ノイズやドローンには、片割れのベンジャミン・ジョン・パワーによるブランク・マス名義の活動からのフィードバックも感じられる。たとえば「インダストリアル」がタームとして再浮上している現在、それこそイエロー・スワンズ/ピート・スワンソンやプルリエントの影響下に登場した文脈を認めることができる彼らが、本作で初期のサウンドに回帰を見せたことは、時宜にかなっていると言えなくない。本作を引っ提げたツアーで、デムダイク・ステアやレイムと並び昨今のインダストリアル・テクノ/ダーク・アンビエントを代表する気鋭、ハクサン・クロークを共演相手に指名していたことも象徴的だ。(天井潤之介)


「2013年 年間ベスト・アルバム 21位~30位」はこちら

「2013年 年間ベスト・アルバム 41位~50位」はこちら

TAGS

MoreSIGN OF THE DAY

  • RELATED

    〈サインマグ〉のライター陣が選ぶ、<br />
2018年のベスト・アルバム、ソング<br />
&映画/ドラマ5選 by 木津毅

    January 03, 2019〈サインマグ〉のライター陣が選ぶ、
    2018年のベスト・アルバム、ソング
    &映画/ドラマ5選 by 木津毅

  • LATEST

    2022年 年間ベスト・アルバム<br />
1位~5位

    December 31, 20222022年 年間ベスト・アルバム
    1位~5位

  • MOST VIEWED

    2013年 年間ベスト・アルバム<br />
11位~20位

    December 19, 20132013年 年間ベスト・アルバム
    11位~20位