SIGN OF THE DAY

ミステリー・ジェッツなめんなよ! 仰天の
新作『カーヴ・オブ・ジ・アース』に備え、
10年に渡るキャリアを総ざらいします:前編
by RYOTA TANAKA November 18, 2015
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新作『カーヴ・オブ・ジ・アース』に備え、<br />
10年に渡るキャリアを総ざらいします:前編

いきなりですが、あえて言わせてください。「ミステリー・ジェッツなめんなよ」と。テムズ・ビートやエレクトロの勢いとも合致した初期作に夢中になっていた往年のインディ・キッズは、新作の報を聞けば関心は示すが買うまでには至らない。10代のリスナーは、名前は聞いたことがあるけど、曲は知らない。正直なところ、今のミステリー・ジェッツは、そんなやや難しい立ち位置。じゃないですか?

しかし、そんなふうにスルーしてしまうのは勿体ない。なぜなら、彼らはこの10年間に出てきたインディ・バンドの中でも、理想的なキャリアを積んでいるバンドだから。特大のヒット・ソングがあるわけではないものの、アルバムはきわめて順調なペースで4作を発表。さらに、そのいずれもが、バンドのベーシックな魅力は変わらずに、それぞれ明確にカラーは異なるという、平たく見てもちゃんとトライを課した上での良作揃い。しかも、来年リリースの新作も、どうやらとんでもないことになっているという情報を小耳に挟んでいる。ずっと悪かったことのないバンドですが、今こそしっかりと見直されるべき時なんです。

そこで、2016年1月22日リリースのニュー・アルバム『カーヴ・オブ・ジ・アース』と〈ホステス・クラブ・ウィークエンダー〉での来日に備え、今一度彼らのキャリアを振り返ってみることで、「ミステリー・ジェッツはなぜ、どこがすごいのか?」を解きほぐしていくことにしましょう。遠巻きに眺める旧リスナーはその魅力を再発見、そして「ミステリー・ジェッツとはなんぞや?」というユースたちには新たなフェイヴァリット・バンドとして発見していただければ幸いです。


『Making Dens』(2006)

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ミステリー・ジェッツが誕生したのは、ロンドン南西部の街トゥイッケナムを縦断するテムズ河に浮かぶイール・パイ島。この人口100人ちょっとの小島で、12歳の少年ブレイン・ハリソンによって結成されました。メンバーは学友のウィリアム・リースと、ブレインの父親であるヘンリー・ハリソンら。つまり最初は家族バンドでした。当初はイール・パイ島の上を空路にしている飛行機からミザリー・ジェッツと名付けられましたが、ブレインがドラム・セットにバンド名を記そうとスペルミスをした結果、間違えたミステリー・ジェッツへとチェンジ。微笑ましいですね。ちなみに彼らのロゴの〈?〉、これミステリーを表してるんです。

結成後は、ヘンリーが島のヒッピー・コミューン跡地を購入して建てたボート・ハウスで練習。デビュー当時に顕著だった彼らのボヘミアンなムードはそんなバックグラウンドも関係しているのかもしれません。その後、同じくイール・パイ島で暮らしていたベーシストのカイ・フィッシュが参加、さらにインターネットのメンバー募集で興味を持ったドラマーのカピル・トレヴェディが加わり、5人編成へと固まります。なお、ネットに掲載された募集には、好きなバンドとしてシド・バレットやピンク・フロイドからホール&オーツまでが記載されていたそう。ミステリー・ジェッツの両輪にして主軸と言うべき、サイケなサウンドとポップネスの両立への志向は、この頃からあったようです。

彼らは成長するにつれて、同島で〈ホワイト・クロス・リヴァイバル〉というイリーガルなパーティを開催し注目を集めていきます。このヒッピー先人たちの流れを汲みつつ自分たちのコミューンを広げていく感じはちょっと京都のバンドに近いような。そして、2003年には自主制作CD『イール・パイ・アイランドEP』を発表。録音とミックスを手がけたのはアスワドやラー・バンドのエンジニアで知られるニック・サイクスでした。その人選からも狙いは明白。コラージュによるサイケデリアとジャム・バンド的なフリーキー・グルーヴが収められています。

Mystery Jets / Moonlight Satellite


2005年には、英国屈指の小規模フェスティヴァルと名高い〈ブリスフィールズ〉へと初出演。以下の映像はその模様です。激アヴァンギャルド! 本日休演みたいです。

Mystery Jets / Zoo Time (at Blissfields 2005)

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この年に〈679〉と契約し、“オン・マイ・フィート”、“ユー・キャント・フール・ミー・デニス”、“アラス・アグネス”のシングルをリリース。サウンド的にも随分ポップ・ソングとしてシェイプされてきました。当時のバンドのムードを伝えるふたつのMVを紹介しましょう。

Mystery Jets / You Can't Fool Me Dennis

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Mystery Jets / Alas Agnes

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前者の見どころは、唯一イール・パイ島出身でないカピル・トレヴェディのひとりレイヴ・オンなファッション。というか、彼の浮き方がバンドの英国ロマン主義への傾倒を浮き彫りにしています。それを裏打ちする形で後者“アラス・アグネス”のMVはリリックのテーマ通り、女装趣味を持つ男性の倒錯したパフォーマンスが中心。こちらでは19世紀のミュージックホールが舞台となっていました。この頃、彼らやラリキン・ラヴ、ホロウェイズを代表バンドとして盛り上がっていた〈テムズ・ビート〉のムーヴメントも、英国の伝統文化への回帰が主軸。スキッフルやトラッドを掘り下げ、それを基にインディ・ポップ的な若々しさや熱量でアップデートするという試みがモードでした。

Larrikin Love / Happy As Annie

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The Holloways / Two Left Feet

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ああ、ほんとに大好きだったなあ! と思い出迷子になりそうなのを抑えて、筆を進めましょう。2006年、ミステリー・ジェッツは1stアルバム『メイキング・デンス』をリリース。プロデューサーはジェームズ・フォード。シミアン・モバイル・ディスコの片割れであり、アークティック・モンキーズの諸作などで知られていますね。伝統回顧的な本質を持ちつつも、プロダクション面で同時代性を落とし込もうとするバンドのアティチュードはこの頃から顕在化します。


『Twenty One』(2008)

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2007年にアメリカ盤デビュー・アルバム『ズー・タイム』をリリースした後、ヘンリー・ハリソンがライヴ活動から脱退。事実上バンドは4人の若者による編成となります。

翌年リリースされた2ndアルバム『トゥエンティー・ワン』は、平均年齢をぐっと下げたヤング・バンドならではの若々しさや甘酸っぱさを、80年代サウンドを下敷きとした天井知らずのポップさでキラッキラにコーティングした作品でした。プロデューサーを務めたのは、この時期の英国で最強カリスマDJであったエロール・アルカン。ダンス・ミュージックと現代のロックを混合させるパーティ〈トラッシュ〉を主宰し、ジャスティスやフランツ・フェルディナンドなどのリミックスを手がけ、エレクトロ・ディスコ以降のインディ・モードを作り出した張本人が今作のサウンドメイクに貢献しました。エロールがアルバム全体のプロデュースをしたのは、確か今作のほか1、2枚しかないのでは。

2008年はカット・コピーの最高傑作『イン・ゴーストリー・カラーズ』に代表される〈モデュラー〉勢や、M83がエレクトロニカからドリーミーなポップへと跳躍した『サタデイズ=ユース』など、インディとエレクトロがもっとも蜜月だった時期。エロール・アルカンの全音域を立たせた、メリハリの効いたプロダクションは、この年の耳にもバッチシでした。まるでDJのイコライザーをいじっているかのようなフレーズごとに音域が出たり入ったりする今作の音設計は、今聴いても相当クレイジーだし刺激的。『メイキング・デンス』から『トゥエンティー・ワン』への鮮やかな衣替えは大成功、多くのリスナーを虜にしました。

今作からの2曲のシングル・カットも忘れることができません。ノア・アンド・ザ・ホエールやエミー・ザ・グレートらとともに英国フォークの発掘と再定義を促した〈アンタイ・フォーク〉を代表するシンガー・ソングライター、ローラ・マリングがヴォーカル参加したキュートなラヴ・ソング“ヤング・ラヴ”。なんとなくクリスタルなサックス・ソロにシンセ・ドラムの音色、MV含め完全に80年代サウンドへとオマージュを捧げた、トキメキ・メーター振り切る名曲“トゥー・ドアーズ・ダウン”。これら2曲は以降のライヴ・セットでも最大の歓声が上がる人気曲となっています。

Mystery Jets / Young Love feat. Laura Marling

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Mystery Jets / Two Doors Down

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ここで前編は終了。『セロトニン』以降は後編へと続きます。




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