SIGN OF THE DAY

祝来日! この際だから確認です。
初級編:単なるサイケ趣味人じゃない、
あまりに深すぎるテンプルズのルーツ
by YUYA SHIMIZU May 13, 2014
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祝来日! この際だから確認です。<br />
初級編:単なるサイケ趣味人じゃない、<br />
あまりに深すぎるテンプルズのルーツ

もしかしたら、あなたはテンプルズのことを見くびっちゃいませんか?確かに彼らはバーズや初期ピンク・フロイドを愛する60年代サイケ信奉者。でも、それだけじゃないんです。彼らの世界は、もっともっと泥沼のように深い。バンドのFacebookページに淡々とポストされ続けているユーチューブ動画を見てもわかる通り、彼らはフラワー・ムーヴメントから生まれた一連のバンド群だけではなく、イタリアン・プログレ、クラウト・ロック、そして近年のモダン・サイケまで、古今東西のマニアックなサイケデリック・ミュージックを掘って掘って掘りまくっている、生粋の音楽オタク。最高にセンスがいい、愛すべき趣味人。だから、彼らのルーツを紐解いていくこととは、サイケデリック・ミュージックの大海に身を投じるということなんです。そして、そのどこまでも深く、果てしない幻惑の世界を旅してみれば、きっとテンプルズの魅力を思わぬ角度から見つけられる可能性だってあるはずなんですよ。

なので、彼らのルーツを探るべく、早速行ってみましょう。東京公演が即日完売になったジャパン・ツアー真っ只中に公開する第一弾は、初級編ということで、まずはマストで押さえておきたい6曲を清水祐也さんに紹介してもらっています。もし好評だったら、また折を見て、中級編、上級編と作っていくかもしれません。とは言っても、まあ、続編に関しては、本当に気長に見ておいてほしいんですけど。

さて、前置きが長くなり過ぎてしまう前に、そろそろ始めましょうか。これを読めばわかる、テンプルズの作り方。初級編スタートです。(小林祥晴)

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デビュー・アルバム『サン・ストラクチャーズ』が全英初登場7位を記録し、待望の再来日も果たしたイギリスはケタリング出身の4人組サイケデリック・ロック・バンド、テンプルズ。「バック・トゥ・ザ・フューチャー」ならぬ「フォワード・トゥ・ザ・パスト」な彼らの懐古趣味サウンドは、若者のみならず親父世代の心もくすぐっているようで、ノエル・ギャラガーやポール・ウェラーといったベテランたちも、早々に彼らの支持を表明している。というわけで今回は、そんなテンプルズのルーツになったと思われるバンドの曲を聴きながら、時計の針を60年代に戻してみることにしよう。

Temples / Shelter Song

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2012年にリリースされたテンプルズのデビュー・シングル、“シェルター・ソング”。イントロの12弦ギターからして強烈に60年代を喚起させるが、12弦ギターと言えば切っても切り離せないのが、60年代のアメリカを代表するフォーク・ロック・バンド、ザ・バーズのギタリストであるロジャー・マッギンだ。映画『ビートルズがやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!』でジョージ・ハリスンが弾いているのを見て同じモデルを買いに行ったという彼が奏でるリッケンバッカー社製12弦ギターの響きは、その四角いサングラスと共に、「サマー・オブ・ラヴ」のひとつの雛形として記憶されることになる。

The Byrds / Turn Turn Turn

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一方、60年代後半にロンドンのライヴ・ハウス、UFOクラブから現れ、バーズの“ホワイ”をレパートリーとしていたことでも知られるサイケデリック・バンドが、ヴォーカリストのキース・ウェスト率いるトゥモロウだ。彼らが残した唯一のアルバム『トゥモロウ』の冒頭を飾る“マイ・ホワイト・バイシクル”は英国サイケを語る上で避けて通れない名曲だが、ジャズ・ギタリストのガボール・ザボやシタール奏者のラヴィ・シャンカールに影響を受けたというスティーヴ・ハウが弾く中近東風のギター・フレーズは、“サン・ストラクチャーズ”におけるジェームス・バッグショーのプレイにも、多大なインスピレーションを与えたことだろう。そんなスティーヴ・ハウがのちにプログレッシヴ・バンドのイエスに加入し、次男のヴァージル・ハウは00年代ロンドンのガレージ・リヴァイヴァル・バンド、リトル・バーリーの3代目ドラマーに収まったのは有名な話。ちなみにジェームスがテンプルズ以前に在籍していたザ・ムーンズも、リトル・バーリー同様に元オレンジ・ジュースのエドウィン・コリンズとレコーディングしたアルバムを残している。

Tomorrow / My White Bicycle

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そのトゥモロウと並ぶUFOクラブの看板バンドだったのが、ご存知ピンク・フロイド。プログレッシヴ・ロックを代表するモンスター・バンドとして、のちに『狂気』というメガ・ヒット・アルバムを生み出すことになる彼らだが、1967年にリリースされた1stアルバム『夜明けの口笛吹き』はサイケデリック・ロック屈指の名盤で、当時の中心メンバーだった「クレージー・ダイアモンド」ことシド・バレットのブッ飛んだソングライティングとカーリー・ヘアは、数多くのフォロワーを生み出すことになる。そんな『夜明けの口笛吹き』収録曲のなかでも人気が高いのがメンバー全員の共作による“星空のドライヴ”だが、実はこの曲のギター・リフが、カリスマ的黒人ヴォーカリストのアーサー・リー率いるアメリカのサイケ・バンド、ラヴの“マイ・リトル・レッド・ブック”を下敷きにしているというエピソードは、意外に知られていない。

Pink Floyd / Interstellar Overdrive

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個人的に『サン・ストラクチャーズ』でもっとも気に入っているのがジェームス作の“ザ・ゲッサー”で、サイケデリック色濃厚なアルバムの中でも、一際ジャジーなムードを持った異色曲だ。それはちょうど60年代イギリスを代表するビート・バンドであるゾンビーズが、1stアルバムの『ビギン・ヒア』と、サイケデリック・ポップの名盤となった2ndアルバム『オデッセイ・アンド・オラクル』の間にリリースしていた一連のシングルにも通じるもので、この曲におけるジェームスの歌唱法も、「スモーキー・ヴォイス」と呼ばれたゾンビーズのヴォーカリスト、コリン・ブランストーンを意識しているのではないかと思われる。今回紹介する“ジャスト・アウト・オブ・リーチ”はもともと65年のホラー/サスペンス映画『バニー・レイクは行方不明』のサウンドトラックとして書き下ろされたもので、劇中ではゾンビーズが演奏するシーンも見られるので、機会があればチェックしてみてほしい。

The Zombies / Just Out of Reach

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「ゾンビ」に「ホラー」とくれば忘れてはならないのが、ダリオ・アルジェント監督の映画『ゾンビ』のサウンドトラックを手掛けたことでも知られるイタリアン・プログレッシヴ・バンドの雄、ゴブリンだ。タブラやブズーキ、ムーグ・シンセを使ってこれでもかとエキゾチシズムと聴き手の恐怖を煽るサウンドは若きテンプルズの面々にも衝撃を与えたようで、彼らは「決して、ひとりでは見ないでください」のキャッチコピーでもおなじみのヒット映画、『サスペリア』のテーマ曲をフェイヴァリットに挙げている。ちなみにゴブリンの鍵盤奏者だったクラウディオ・シモネッティは、のちにイタロ・ディスコのクリエイターとしても名声を得ることになるのだが、それはまた別の話。

Goblin / Suspiria

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といった具合に古今東西のサイケ/プログレ・バンドへの偏愛を見せるテンプルズだが、なんでも彼らの興味は音楽のみならず、東洋思想にまで及んでいるのだそうだ。そこで思い出されるのが、やはり同じく東洋思想にハマっていたことで知られるビートルズのジョージ・ハリスン。彼は1968年に公開されたジェーン・バーキン主演のカルト映画『ワンダーウォール』のサウンドトラックを手掛けているのだが、ここに収録されていた“スキーイング”という曲のギター・リフをのちにクーラ・シェイカーが拝借し、オアシスのノエル・ギャラガーはその名もズバリ“ワンダーウォール”という曲を書くことになる。そんなノエルがテンプルズを絶賛しているのが必然なら、ジョージ・ハリスンで始まった本稿が、ジョージ・ハリスンで幕を閉じるのもまた必然だろう。サイケデリックとは過去であり、未来であり、時間の概念を超越するのだ。それでは最後にその“スキーイング”と、テンプルズの“メスメライズ”(メンバーが“不思議の壁”と闘うビデオも必見!)を聴きながらお別れしよう。サイケデリックよ、永遠なれ!

George Harrison / Ski-ing

Temples / Mesmerize

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