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ハインズ、パロッツと続くマドリード産の
新世代ガレージ・サウンドの潮流を120%
楽しむための2016年必聴ガレージ10選
by YOSHIHARU KOBAYASHI September 30, 2016
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ハインズ、パロッツと続くマドリード産の<br />
新世代ガレージ・サウンドの潮流を120%<br />
楽しむための2016年必聴ガレージ10選

この2016年、再びガレージ・ロック/サイケデリック・ガレージの大波が来ている! と敢えてブチ上げてみたいと思います。いや、本当かよ? と訝しがるのも当然の話。もちろん、メインストリームにおけるR&Bやヒップホップの覇権を覆すような巨大ムーヴメントが巻き起こっている、と大ボラを吹きたいわけではありません。しかし、ここ数年、主に北米発のローファイなガレージ・ロックがインディでは一定の支持を集め続け、その結果、世界各地から再び新しいガレージ・サウンドが誕生しているのは事実です。

もしくは、こんな意見もあるかもしれません。今さらガレージとか騒いでも、そこに新鮮味はあるの? って。そもそもガレージ・ロック/サイケデリック・ガレージというのは、メタルやパンク同様、アンダーグラウンドではコアなファンに支えられ、脈々とシーンが続いているもの。それをこのタイミングで「来ている!」とか言うのもどうなの? という見方もあって然るべき。

では、これらの疑問を解きほぐすためにも、そもそもガレージ・ロック/サイケデリック・ガレージとは何なのか? どんな歴史を辿ってきたものなのか? そして、2016年におけるガレージとはどのようなものなのか?――ということを、順を追って見ていきたいと思います。

ガレージ・ロックとは、60年代にビートルズを筆頭としたブリティッシュ・ビートに感化された世界中の若者たちが、熱病にほだされたようにバンドを組み、衝動に任せて荒々しいロックンロールを掻き鳴らしたのが発端。それをレニー・ケイがアメリカ郊外のバンドを中心に体系化したのが、サイケデリック・ガレージの聖典とも言うべき名コンピ『ナゲッツ』(1972年)。かの高名な評論家レスター・バンクスも、ガレージ・ロックのルーツは60年代初頭のカリフォルニアとアメリカ太平洋岸の北西地域に遡ることが出来る、と位置付けています。

これを踏まえると、ガレージ・ロックもその生誕から早50年。当然のことながら、あらゆる音楽は誕生から時が経てば経つほど新鮮味は薄れていきます。それはガレージ・ロックとて同じ。しかし同時に、長い歴史を持つジャンルは、しかるべきタイミングで再発掘され、時代に沿った形でアップデートされ、周期的に時代の表層に舞い戻ってくるのです。

ジョン・サヴェージの名著『イングランズ・ドリーミング』にも記されている通り、60年代アメリカのローカル・バンドたちの熱狂が詰まった『ナゲッツ』は70年代UKパンクの形成に欠かせない要素のひとつでした。つまり、パンクはガレージ・ロックの発展形という側面も持っているということ。

80年代前半にはR.E.M.やグリーン・オン・レッドやスリー・オクロックなど、ペイズリー・アンダーグラウンドと呼ばれたロサンゼルスのバンドたちが60年代サイケデリック・ガレージを参照したのはよく知られた話ですし、プライマル・スクリームが1st『ソニック・フラワー・グルーヴ』(1987年)でプロデューサーに起用したのは13thフロア・エレヴェーターズと並ぶテキサスの秘宝、レッド・クレイオラのメイヨ・トンプソン。もちろん、XTCがサイケデリック・ガレージへの偏愛を惜しみなく表明した変名プロジェクト、デュークス・オブ・ストラトスフィアも忘れてはいけません。

90年代を振り返ると、マッドハニーを筆頭とした一部のグランジ勢はガレージ・ロックの変奏として捉えることも出来ますし、00年代にはハイヴスやホワイト・ストライプスなどによってガレージ・ロック・リヴァイヴァルが勃発したのはご存知の方も多いでしょう。

そして2010年代に入ると、〈キャプチャード・トラックス〉、〈ファット・ポッサム〉、〈バーガー・レコーズ〉といったアメリカの新興レーベルを起点として、ローファイで生々しいガレージ・ロックの現在形が生まれ続けています。今年前半でもっともバズがあった新人バンドの一組であるハインズや、彼らの兄貴分であるパロッツ、そして彼らの地元マドリードのガレージ・ロック・シーンがイギリスを中心に脚光を浴びているのも、上述のレーベル群の動きとシンクロしているのは間違いありません。

女性版リバティーンズ?マドリードの
4人組ハインズとの対話を題材にして
2016年初頭のポップ潮流についてご説明


このように挙げていけばキリがないのですが、それぞれの時期でガレージ・ロックは異なる特徴を持ち、形を変えながら時代をサヴァイヴしてきたのがわかります。

それでは、ハインズやパロッツのブレイクで再びガレージ・ロックが脚光を浴びつつある2016年に、まず聴いておくべきバンド、曲は何なのか? 本稿では、前編で「2016年の必聴ガレージ・トラック10選」を、後編では「知っていないと恥ずかしいガレージ・クラシックス10選」をお届けしたいと思います。では、まず前編からどうぞ!




1. The Parrots
マドリードのガレージ・ロック・シーンの存在を世に広めたのがハインズならば、そのシーンのパイオニアと言われているのがパロッツです。フロントマンのディエゴ・ガルシアは、ハインズの1st『リーヴ・ミー・アローン』のプロデューサーとしてもお馴染み。実際、彼らのどこまでもゴキゲンで、太陽の香りがするガレージ・ロックは、ハインズの雛形になったのでは? と思わせるところも。

The Parrots / No me gustas, te quiero


デビュー・アルバムのタイトルは「恐れなき子供たち」。ディエゴ曰く、「スペインじゃガレージ・ロックなんて流行らないかもしれないけど、そんなの知るか、俺たちはやりたいことをやるだけ!」というスタンスを貫いてきたことを意味する言葉だそう。彼らの曲は2010年代ガレージらしく、どれもルーズでレイドバックした雰囲気を持っていますが、そのパンク・マインドは確かに音の行間から嗅ぎ取ることが出来ます。



2. Los Nastys
ハインズ、パロッツに続いてマドリードでチェックすべきバンドと言ったら、このロス・ナスティス。ハインズのカルロッタ曰く、シーンのお兄さん的な存在。誰もが一度はライヴに行ったことがあると言うほどなので、パロッツと並ぶパイオニアの一組と捉えていいのかもしれません。

初期EPのサウンドはマドリード勢の中でも一際パンキッシュでファストでしたが、2015年リリースの1st『Noches de fantasmas con Los Nastys』は、よりハインズやパロッツと親和性が高いチアフルなムードが前面に。仲間たちと肩を組み、声を枯らして歌い上げたくなるようなシングアロング系コーラスを持つ“ベイビー”は、アルバム随一の名曲。

Los Nastys / Baby




3. The Wytches
イギリスからも新世代ガレージの潮流にシンクロする存在を挙げるとすれば、多大な影響を受けたというアークティック・モンキーズの『ハムバグ』を経由し、60年代のサイケデリック・ガレージを消化したウィッチーズでしょう。「魔女」というバンド名が暗示するように、そのサウンドはどこかダークで妖しげ。深夜に人影のない森の中へと迷い込んでしまったかのような不気味な感覚があります。

2年ぶりの新作『オール・ユア・ハッピー・ライフ』からのリード・トラック“Cサイド”では、サイケデリック・ガレージの感触は残しながらも、よりハードでアグレッシヴに変化。

The Wytches / C-Side


喉をすりつぶすような歌い方といい、鬱屈とした感情を攻撃性や暴力性に転化した荒々しいサウンドといい、ニルヴァーナの遺伝子も彼らには息づいていることがより明確になった一曲です。



4. King Tuff
〈バーガー・レコーズ〉は2010年代ガレージの重要拠点のひとつですが、そのカタログには他レーベルからリリースされた作品のカセット版やカルト・クラシックスの再発も多いため、代表作を挙げるのは案外難しい。のですが、2011年の時点で〈バーガー〉史上最高の売り上げを記録していたキング・タフの1st『ワズ・デッド』は、その一枚に数えてもいいでしょう(とは言え同作も、元々はマイナー・レーベルからCD-Rでリリースされていたものを〈バーガー〉が再リリースしたのですが)。

アルバムのオープニング・トラックである“ダンシング・オン・ユー”は、愛くるしいガレージ・パワー・ポップ集といった趣の『ワズ・デッド』の中でも一際キャッチーなダンス・ナンバーです。

King Tuff / Dancing On You




5. Pond
ハインズのブレイクがマドリードのガレージ・ロック・シーンに脚光を浴びせたように、テーム・インパラのブレイクはオーストラリアのサイケデリック/ガレージ・ロック・シーンに人々の注目を集めました。勿論、豪州の顔はテーム・インパラですが、彼らがUSメインストリームで本格的にフックアップされ始めた今、地元シーンの面白さをよりリアルに伝えてくれるのは、テーム・インパラの元/現メンバーが複数在籍するポンドです。2015年の最新作『マン・イット・フィールズ・ライク・スペース・アゲイン』はキャリア屈指のポップ志向。それでも執拗に繰り返されるテンポ・チェンジや転調には、意識が撹拌されること請け合い。このアルバムのタイトル・トラックも、飛びすぎ注意の万華鏡サイケデリア。

Pond / Man It Feels Like Space Again




6. Juan Wauters
フアン・ウォータースをガレージ・ロックと位置づけてしまうことの是非はさておき、今やマック・デマルコに次ぐ〈キャプチャード・トラックス〉の看板でもある彼は、現代的なローファイ・サウンドの旗手の一人。その最新作は、どこまでも親密でスウィート、かつ生々しいサウンドのアコースティック・フォーク集『フー・ミー?』。同作収録の“アイム・オール・ロング”は、アコースティック・ギターを掻き鳴らしながら、両手を放して自転車を乗っている様子を一発撮りしたPVも楽しい一曲です。

Juan Wauters / I'm All Wrong




7. Communions
〈ポッシュ・アイソレーション〉を根城とするコペンハーゲン・シーンは、ハードコア・パンクからインダストリアルやノーウェイヴまでが一緒くたになった雑多な音楽性ではなく、アンチ・ウェルメイド、アンチ・エスタブリッシュメントな姿勢にこそ新世代ガレージとの共通項が見えます。コミュニオンズはこのシーンが生んだ眩いばかりのロック・スター筆頭候補。これまでと同様――もしくはこれまで以上にオアシスやストーン・ローゼズへの屈託のない憧憬の眼差しが感じられる新曲“ドント・ホールド・エニシング・バック”は、年寄りリスナーを思わず動揺させるほど真っ直ぐで眩しいです。

Communions / Don't Hold Anything Back


この曲をA面に収録した7インチは、彼らにとって初の〈ファット・ポッサム〉からのリリースという点でも注目でしょう。



8. Black Lips
2000年代初頭から活動を続け、2007年のマスターピース『グッド・バッド・ノット・イーヴィル』でUSアンダーグラウンドにおけるガレージ・ロックの潮流を広く世に知らしめたブラック・リップスは、2010年代ローファイ・ガレージの先駆けと言っても過言ではありません。シャングリラスなどのガールズ・コーラス・グループに影響を受けたソングライティングや、リヴァーブの効いた荒々しいサウンドは、その後の最新型ガレージのディフォルトのひとつにもなりました。過去作の多くは〈バーガー〉からカセット・リリースされ、キング・カーン& BBQショーとのユニット=オールマイティ・ディフェンダーズの曲をパロッツがカヴァーするなど、現行のシーンからも多大なリスペクトを受けているのはご存知の通り。代表曲“バッド・キッズ”は、早くも永遠のクラシックに仲間入りしています。

Black Lips / Bad Kids




9. Hinds
2016年の上半期、世界的にもっともバズがあった新人バンド。と言って間違いないでしょう。その現代的なガレージ・ロック・サウンドが魅力的なのは言うに及ばず。4人の絶妙なバランスの佇まいも相まって、感度の高いティーンの女の子の間では、アリアナ・グランデやテイラー・スウィフトよりも等身大の親しみやすさを持った、オルタナティヴなポップ・アイコンとしても受容されていると言っていい。こんな理想的な立ち位置に収まっているバンドは、今、世界的に見てもかなり珍しいでしょう。全編アニメの最新PVも、いい感じに肩の力が抜けた彼女たちのチャーミングさが上手く表現されていて、かわいいです。

Hinds / Bamboo (Animated Video)




10. Homeshake
同郷の仲間マック・デマルコのバンドにサポート・ギタリストとして参加していた、ピーター・セイガーによるソロ・プロジェクト。そのサウンドは現代的なローファイの音響美学を通過したオルタナティヴR&B、といった趣。2015年に〈キャプチャード・トラックス〉傘下の〈シンダーリン〉から送り出された2nd『ミッドナイト・スナック』は、シンセやドラムマシーンの比率を増やし、さらにR&B志向を強めています。この“ギヴ・イット・トゥ・ミー”は、そんなアルバムを象徴するトラックのひとつ。

Homeshake / Give It To Me


これを聴いてみれば、ディアンジェロやJディラという名前も頭に思い浮かんでくるはず。とは言え、曲全体の手触りはファンキーというより飽くまで密室的なベッドルーム・ポップ。



ということで、前編はこれにて終了。それでは早速、後編へと行ってみましょう!



ハインズ、パロッツと続く新世代ガレージを
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