2021年はコーヴィッド・19にはかからずに済んだものの、4月に刊行した単行本『令和元年のテロリズム』(新潮社)の作業が尾を引いてまるでブレインフォグのような状態が続いた。ビジネスホテルの狭い部屋に閉じこもって改元直後に起こった凶悪事件と背景としての時代の澱について書くのは思いのほかきつくて、「悪意は伝染していく」は帯にも引用した本文だが、感染は自分にも及んだのかもしれない。缶詰中、抗不安薬代わりに繰り返し再生していたのはキース・ジャレットの『ザ・メロディ・アット・ナイト、ウィズ・ユー』で、校了した後もその孤独で甘美な時間に浸ったまま、なかなか現実を反映したポップ・ミュージックを追う気になれなかった。それでもこうしてストリーミング・サービスに記録された情報を拾い集めて並べてみると、リズムやメロディや折衷主義の力を借りて何とか立ち上がろうとしていたことが分かる感じもする。……という、2月にもなって年間ベストを発表する言い訳でした。今年は頑張ります。
〈サイン・マガジン〉のライター陣が選ぶ、
2021年のベスト・アルバム、ソング
&映画/ドラマ5選 by 辰巳JUNK
「〈サイン・マガジン〉のライター陣が選ぶ、
2021年の年間ベスト・アルバム、
ソング、ムーヴィ/TVシリーズ5選」
扉ページ
2021年
年間ベスト・アルバム 50