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  • ラ・ラ・ランド(2016)
    directed by Damien Chazelle by MARI HAGIHARA February 10, 2017 1
  • エイミー、エイミー、エイミー! こじらせシングルライフの抜け出し方(2015) directed by Judd Apatow by MARI HAGIHARA February 10, 2017 2
  • スウィート17モンスター(2016) directed by Kelly Fremon Craig by MARI HAGIHARA February 10, 2017 3
  • ミッドナイト・スペシャル(2016)
    directed by Jeff Nichols by MARI HAGIHARA February 10, 2017 4
  • お嬢さん(2016) directed by Bak Chan-uk by MARI HAGIHARA February 10, 2017 5
  • 現代LAを舞台にテクニカラーのミュージカルを復活させる、というデイミアン・チャゼル監督(『セッション』)のアイデアには当初資金が集まらなかったそう。でも完成してみれば、恋物語もそれを演じる二人も、もちろん音楽もダンスもパーフェクト! な作品に。この完璧さが一見時代にそぐわないようでも、『ラ・ラ・ランド』が見せるのは「いまやっておかないといけないこと」って気がします。つまり、金はなくてもおしゃれして街に出ること。映画館やクラブに足を運ぶこと。恋することで傷つくこと。そして夢を見ること。売れないジャズ・ピアニストのライアン・ゴズリング、女優志願のエマ・ストーン、そんな若者たちが集まるロサンゼルスでは誰もがハイ(=ラ・ラ)で、すべてが手に入ると思っている。でも一人ひとりの夢は形が違っていて、他の夢とはうまく噛み合わなかったり。その悲しみが余計人生を輝かせるのです。それをワン・シークエンスで見せるラストは圧巻。ジャック・ドゥミや50年代ハリウッドにオマージュを捧げながら、エマとライアンはいまの映画スターとして歌い踊り、恋に落ちる。LAの夜空をバックにした二人の美しい姿はスクリーンで見てこそです。

  • アメリカのコメディアンはいま一番「リアルタイムで戦っている人たち」。彼らのテレビでの笑いはネットで追いかけられても、大きな成果となるコメディ映画の日本公開が遅れるのはやっぱり痛い。ジャド・アパトー監督の本作も2年埃をかぶっていました。スタンダップ・コメディアンのエイミー・シューマーが脚本・主演で描くのは、自身の体験も交えた30代女性のNY生活。雑誌ライターのエイミーがすごいのは、男性ウケどころか女性ウケも難しそうな主人公なのです。酒と男に奔放で、いい加減で、それを悪びれもしない。ところが取材相手のスポーツ医師と付き合うことになって、彼女は「奔放であることで他人と距離を置く」ライフスタイルの見直しを迫られます。孤独だから恋愛するんじゃなく、恋愛がきっかけで目を背けてきた孤独に直面するのが秀逸。別に「こじらせシングルライフ」を否定する話じゃないんだよな……と、副題に文句つけてしまいましたが、本編は仕事や家族もきちんと描きつつ、たくさん笑わせてくれます。周りの強烈なキャラをティルダ・スウィントンらが演じ、プロのアスリートが多数登場するのも豪華。

  • これもコピーは「こじらせ青春映画」。でも、17歳って男女ともみんなこんな感じじゃないでしょうか。自分と人を比べて、うじうじ悩んで、ひとり怒って。そんな当たり前のティーン・アングストを魅力的な映画にするには、どうしたって絶対的にチャーミングな主人公が必要。最近だと『Easy A』(2010)のエマ・ストーンまで遡るかもしれません。その伝統を今回更新するのはヘイリー・スタインフェルド。彼女が演じるネイディーンは不機嫌でぶすっとした顔と、頭はいいのに感情が暴走して毒舌が止まらなくなっちゃうところが最高です。彼女がウディ・ハレルソン演じる教師とやりあう場面はもう、いちいち素晴らしい。変なトップにミニスカ、黒タイツにハイカットのスニーカーというファッションにも「トライブにハマれない」人物造型の細やかさを感じます。これが初監督となるのはケリー・フレモン・クレイグ。彼女には、原題の『Edge of Seventeen』とスティーヴィー・ニックスの同名曲(作品内では使われてません)の関係性を訊いてみたいところ。ともかく、ヘイリーがティーンのうちにこれができて本当によかった、と思える一作です。

  • 『テイク・シェルター』(2011)、『MUD』(2012)で頭角を現したジェフ・ニコルス監督。新作『ラビング』はオスカー候補にもなりました。ただそれがオスカーに合わせ春公開されるあおりを受けたのか、一つ前の『ミッドナイト・スペシャル』(2016)が日本ではDVD/配信スルーに……残念です。もちろん、異人種間結婚禁止法を変えた夫婦の実話『ラビング』もていねいな秀作。でも、ニコルスの野心は『ミッドナイト・スペシャル』にあります。超能力を持つ少年と、彼をカルトや政府の追跡から守ろうとする父親のドラマ。ちょっと80年代風のテイストは『ストレンジャー・シングス』『The OA』『メッセージ』といった最近の傑作SFとも連動していて、次々起きる謎めいた出来事に驚かされます。俯瞰映像で頻繁に暗示される、地上の人間は常に「頭上から」――衛星から、神から、見えない存在から――見られている、というパラノイアも現代的。ニコルス作品のミューズであるマイケル・シャノンが今回は愛情深い父親を演じ、アダム・ドライバーがここでも脇役として存在感を放っています。

  • 原作はカムアウトしている女性作家、サラ・ウォーターズによる『荊の城』。ヴィクトリア朝を背景にした少女たちの官能的なミステリを、パク・チャヌク監督はなんと日本統治下の朝鮮半島に翻案しました。詐欺師の手先として富豪令嬢、秀子のメイドに送り込まれた孤児のスッキ。孤独な二人はそれぞれ秘密を抱えたまま愛し合うようになります。運命に翻弄されてきた秀子とスッキは周りの思惑に負けるのか、愛を貫くのか。パク・チャヌクは『オールド・ボーイ』(2003)ほか、毒々しい作風で知られる人。ハリウッドに進出した前作『イノセント・ガーデン』(2013)ではミア・ワシコウスカ演じる少女の残酷な表情を引き出しました。今回も原作が持つ濃厚かつピュアな雰囲気を期待していたのですが、ちょっとエロス寄りかな? とはいえ、二転三転するプロット、フェティッシュな倒錯も含む複雑なストーリーを華麗な映像でまとめ上げた手腕はお見事。こういうのって韓国映画ならではのエンタテイメントだと思います。

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